OWCモノローグ）おともだちの詩　by 花緒

ボクは生まれつき無責任で頭も悪いので
言葉にならないのです。
喉が渇きました。水道が止められています。
お金がありません。税金を滞納しています。
借金取りがドアをドンドンと叩いています。絶体絶命です。
 
朦朧とした意識の中で
ボクの頭の中で、カンチョー！、カンチョー！というおともだちの声が聞こえてきました。
 
そうです！
ついこの前まで、ボクは砂場で遊んでいたのです。
そこでおともだちと、カンチョー！カンチョー！とやり合っていました。
 
おともだちです。
そこに言葉なんて必要ありません。
だって、そうじゃないですか。
いい大人が砂場でカンチョー！カンチョー！ってやり合っているのですよ。
ボクたちがどういう人間なのか、話さなくても分かるじゃないですか。
 
ボクは生まれて初めておともだちをみつけたのです。
毎日砂場に行って、カンチョー！カンチョー！って。
 
でもある日、スーツを着た男の人がいたのです。
不審に思いました。
でも、この人も砂場にいるのなら、おともだちに違いない。
ボクたちとおともだちになりたいんだろう。
じゃあ、おともだちだ！カンチョー！って。
 
そうしたら、その人は、アーナルほど、なんて呟きながらこう言ったのです。
 
友達にカンチョーなどするものではありません。
あなたたちはマナーが悪すぎます。
本来ここは子供たちが遊ぶための場所です。
そこをあなたたちが占有して、おかしなことになっています、と。
 
ボクは反論しましたよ。
だってここには、もうボクたちしかいないし、
別にいいじゃないですか、ボクたちだけで楽しくやっているんですから。カンチョー！って。
 
そこから先はもう思い出したくないです。
そのスーツの人が公園管理局に電話して、市役所に電話して、警察に電話して。
ボクは思いましたよ。
いい歳こいて砂場で遊んでいるボクたちよりあなたの方がよっぽどヤバい人ですよって。
関係ないはずなのに、わざわざスーツ姿で砂場まで来て、ボクたちを支配しようとして。
頭がイカれています。一番ヤバい奴です。パブリックエネミーです。
 
ボクは言ったんです。あなたはボクたちと違ってちゃんとした社会生活を生きられているんでしょう？って。
それじゃあどうしてボクたちに優しくなれないんですか？って。
 
それが最後でした。
 
パトカーが来ました。
警察に捕まりました。
何もかも失いました。
 
 
ボクは生まれつき無責任で頭も悪いので
言葉にならないのです。
喉が渇きました。水道が止まっています。
お金がありません。税金を滞納しています。
借金取りがドアをドンドンと叩いています。絶体絶命です。
 
朦朧とした意識の中で、水道がボクに話しかけてきました。
お前は水を友達だと思っていなかった。
だから、おまえには水を飲ませてやらないんだって。
 
朦朧とした意識の中で、督促状がボクに話しかけてきました。
お前はこの国を友達だと思っていなかった。
だから、お前から税金をふんだくってやるんだって。
 
朦朧とした意識の中で、この世界がボクに話しかけてきました。
お前は世界を友達だと思っていなかった。
だから、お前は生きづらいんだって。
 
何の話なんだかよく分かりません！
みんなして訳の分からない話しやがって！

友達とか友達じゃないとか、そんなことどうでもいいだろうがよ！！！
ボクは最初からずっと一人で生きてきたんだよ！！！
 

ボクは生まれつき無責任で頭も悪いので
言葉にならないのです！
喉が渇きました！お金がありません！
借金取りがドアをドンドンと叩いています！絶体絶命です！
 
嗚呼！
借金取りがドアを破って入ってきました！
もう、こうなりゃ、やぶれかぶれです！
 
カンチョー！！！