Jackson Stars RR-J2SPの紹介とAlexi Laiho氏との関わりについて
出会い
【2023年10月2日現在所有中】
私の機材紹介シリーズ第一弾、Jackson Stars RR-J2SP(以下J2SP)を紹介します。
スペックですが以下の画像のとおりです。
なんかこの形見たことあるな…という人はメタルギター通2級です。
このギターはChildren of Bodomの故 Alexi laihoがJackson時代に使っていたギターとそっくりです。
Alexiとの関係は後ほど述べます。
出会いは高校2年生だった思います。ふと楽器店でこいつを見つけたのです。
当時COBにどっぷりハマっていた私はびっくりしました。
「なんでAlexiのギターあるの!?」
AlexiがESPと契約してることは当時でも知っていたため、二重にびっくりでした。
ですが当時インターネットもあまり身近でなかったため、このギターの詳細がわかりませんでした。
そしてシリアルからして2006年製でありました。
今思えば、製造から結構経ってたのでしょう。アウトレット価格で売られていました。
8万円で
悩みましたね。8万円なんて現代ギターオタクからしたら実質無料ですが、なにせ高校生ですので。
結局すごく悩んで悩んで買いました。
というわけで私は、このギターのファーストオーナーでもう14年くらい所有し続けています。
購入時の証明書もあったんですが、執筆にあたり捜索したところ、見つかりませんでした。貴重な資料をなくしてしまい申し訳ありません。
各種スペック
前述のスペック表にないところを述べていきます。
ヘッド
Jacksonのスタンダードなヘッドです。Jackson Starsは日本製を表すロゴ、と思ってたのですがなんかそうじゃないときもあるらしいです。Jacksonの権利関係はまじで複雑なので割愛します。大体あの楽器店のせいです。
とにかくこれは日本製です。時期からしても倒産した中信楽器製と見受けられるます。
ペグは意外にもGotoh製でなく韓国のJin-hoというメーカーでした。
日本で作ってるなら後藤さんに頼んだほうが勝手がいいような気もしますが、この時Jackson時代がワールドワイドでパーツを調達しており、その関係でJin-hoだったという説があります。
指板
カッチカチのエボニーです。びっくりするぐらい硬いのがまさにこのギターの肝といえるでしょう。
ネック
細く太いです。太さは特に、今のテクニカルギターでは見られない太さです。
電装系
男のワンハム。EMG-H3というEMGのくせにパッシブのPUですが、ほどよいウォームさがあります。
ゴチゴチのデスメタルにはきついですが、色々と幅広いサウンドメイクができます。オールラウンダータイプのPUです。
次にミニブースターのEMG-PA2です。
本ブースターは裏側のツマミでGainブースト量を調整できます。マックスにするとFuzzみたいな音になります。私は4割ぐらいにして運用してます。
未だにこいつを常時オンにしてやるのか、普段オフでソロの時にオンにするのかわかりません。でもオンにしてるほうがなんとなくいい気がするのでオンにしたままの時が多いです。
ちなみにこのミニスイッチのナットがとれてなくなったとき、4軒ぐらいホームセンターに行きましたが適合するものはありませんでした。
諦めかけてEMGの正規代理店である神田商会さんに尋ねたところ、
「なんでもいいのでミニスイッチを購入してそのナットを流用してください」
ほんまか・・・?と疑いながら、どうでもいいミニスイッチを500円ぐらいで買いました。適合しました。ありがとう神田商会。
電装系内部
びっくりするぐらいスカスカな電装系内部です。
しかしなんとも、丁寧なはんだ付けを見ると昔の職人の仕事の良さがわかります。
この時代のEMGははんだ付けでした。今でもはんだ付け時代のEMGにこだわる方もいらっしゃいますね。
電池ボックスも搭載しています。
正直電装系内部に余裕で入るので、専用ボックスいるのかという感じです。
フロイドローズ裏
フロイドローズ裏はDIYで、カバーをマジックテープで開閉できるようにしています。フロイドローズのバネの調整をするのに、パネルがネジ式だとかなり面倒でしたので。
このモデルではスプリングの共鳴を強力におさえる「綿テクノロジー」を搭載しています。Steve Vai氏が考案した「ティッシュテクノロジー」の更に上をいく革新的な技術です。
冗談はせておき、フロイドローズの共鳴問題はみなさんどうされていますか。
スプリングは真ん中を抜いた4本掛けです。弦のゲージは10-52で、一音下げの運用しています。
なお、Alexi本人のスプリングはかけ方は変わっていて、下の写真のようになっています。
私もこの形を試しましたが、どうしてもスプリングの張力が足りず、適切なフローディング状態にできませんでした。
4本掛けの今でも結構ギリギリです。
しかもAlexiは10-56の更に太いゲージを使っていたようなので、それならなお無理のような…私のセッティングミスかもしれませんが。
破損した外観
RRタイプの宿命ですが、角が傷んでいます。年式にしてはましなほうでしょうか。家から持ち出した記憶は指で数えるぐらいしかないですが、やっぱりこうなってしまいます。
不思議なもので、一度傷ついたらこれ以上深刻にならないような気もします。
スペックの紹介は以上です。
実はプレミア価格の本モデル
本モデルですが、2023年10月現在プレミア価格で動いています。
2023年10月のヤフオクでの取引で
25万円にて落札されています。
しかも現状渡し、ロックナットなし、PUはなにかわからないものに交換されてるのに。
25万円ですよ奥さん
私買ったの8万円ですよ
エレキギターにおいて、ビンテージの投資目的以外で、購入時より格段に値段があがるのはかなりレアケースです。
レア物でいうと有名所ではジョン・ペトルーシのピカソギターや
レブ・ビーチのギターが有名です。
有名ギタリストの過去のシグネイチャー、つまりもう生産されていないモデルは高騰する傾向にあります。高騰までいかなくとも、価値が下がらないことが多いですね。
それで、RR-J2SPですが
別にAlexiのシグネイチャーモデルではないんですよね
なのになぜ高騰してるんだということになりますが、これにはAlexiのJackson時代に話がさかのぼります。
愛機であるJacksonギターの盗難
Alexiは1997年のメジャーデビューアルバム「Something Wild」の頃からJacksonギターを使用していました。
色々調べたのですが、どうやら既製品ではなくカスタムショップ製の特注のものだったそうです。
主にそれは3本で、
・Stone
・Wildchild
・Green Pinstripes
というあだ名がそれぞれ付けられていました。
”https://equipboard.com/pros/alexi-laiho?gear=guitarsより引用”
外観こそ違うもののスペックは一緒だった模様です。
Custom Rhandy Rhoads
Pickups: Bridge: Jackson J-50BC in the bridge
Bridge: Original Floyd Rose
Wood: Alder Body; Alder Neck, Neck Thru, Maple, Oiled, Ebony Fingerboard, Frets/Inlay: 24Frets (21-22-23-24 Scalloped)/Mother of Pearl Shark Fin Position Inlays Electronics/Controls: JE1000 installed/Single Volume Paintjob: Black with white pinstripe’s
そしてこれらのギターを用いてあの3枚の赤青緑のアルバムが作成されました。
メタラーなら誰しも納得する不動のアルバムです。このアルバムを通して、COBのサウンドに憧れた方も多いのではないのでしょうか。
当時のAlexiのイカれっぷりがわかるビデオはこちら。
そんな絶頂期を過ごすAlexiですが、最悪の事態に遭遇します。
2002年9月、ライブ後にStoneとWildchildの2本が盗まれます。
Alexiは急いでJacksonに製作を依頼しましたが、同じクオリティのギターを作るには1年かかるとJacksonからの回答。
Jacksonは当時フェンダー社による買収の真っ只中であり、ギター製作をする手が回らなかったと言われています。
そこで白羽の矢が立ったのがESPです。ESPは契約を結ぶことを条件に、シグネイチャーモデルの即時製作を行いました。
その後は周知の通り、ESPとの契約を亡くなるまで続けました。
COBの初期2003年のプロショットライブで、かなり音質もよいライブを下に貼ります。
Drop Cの曲は先程のJackson Green Pinstripesを使用し、D standardではESPシグネイチャーモデルをモデルを使用しているライブです。
当時まだESPのギター供給が足りなかったため、Jacksonとの併用でステージをこなしています。
よく見るとJacksonのロゴに隠しがされています。この時すでにESPと専属契約していたため、応急措置で隠していたのでしょう
この流れからわかることは、
JacksonはAlexiと契約をしていなかった
ということです。
たしかにAlexiはまだ当時若手といえど、超十分な実力がありました。それにも関わらずJacksonは契約を行いませんでした。
というのもやはり2000年代初頭。メタルブームが下火であった当時に、契約を結ぶような体力がJacksonには当時なかったのかもしれません。
現にJacksonはその時買収にあっています。
その反省を活かしてかはわかりませんが、今のJacksonは非常にシグネイチャー事業に積極的のような気もします。昔からこの程度であったらすみません。
かくして、人気絶頂だったAlexiのJacksonシグネイチャーモデルは出ることなく、終わってしまったのです。
彗星のごとく現れたRR-J2SP
そんな騒動がありAlexiがESPへ移行した後、当時のJackson Starsは元々製造してた「RR-J2」のスペシャル版として「RR-J2SP」を販売します。
(正確な発売日はわかりませんでしたが、私の所有機のシリアルナンバーからこの辺りの時期と推察してます)
スペシャル版として
・フロントPU削除
・トーンコントロール削除
・ブリッジPUをEMGのパッシブタイプへ変更
・プリアンプブースターの追加
・各種ゴールドパーツへ変更
・ストライプオプション対応
という仕様になっております。
・・・
これは…偶然ですね…(すっとぼけ)
ということでJackson StarsはAlexiのJackson時代をリメイクしたギターを製造したのでした。スペックでの違いはピックアップとブースターの種類ぐらいです。
どれくらい作られていたかは、製造元が倒産したので全くの不明ですが、多くはないでしょう。
海外で販売されていたかは定かではありませんが、海外の方の反応を見る限り海外でも相当出回っていないことから、当時の流通は日本国内のみとみられます。
当時は人気なかった(と思う)
先述した通り、私は本モデルの新品を処分価格で購入しました。
理由は大体察しがつきます
1.RRモデルは弾きづらい。
2.フロントピックアップがない。
3.トーンコントロールもない。
冷静に考えてください。上みたいなギター買おうと思います?
買わないですよね?
RRモデルなんてダサくて弾きにくいし
フロントピックアップないとソロで困るし、
トーンコントロールないと後々困りそうだし
普通に考えて売れる理由が一個もないんですよね。
しかもESPのシグネイチャーが2004年12月から発売されてます。
Alexiファンならこちらのシグ買うのが、筋ってものです。
死後評価されるとはこのこと
月日が経ち2020年12月29日、Alexiはヘルシンキの自宅で亡くなりました。
そのころからAlexi氏がJackson時代に使っていたある機材が高騰し始めました。
それがプリアンプ「Lee Jackson製 GP-1000」です
直近でヤフオクにて2023年4月に10万円で落札されています。
発売時である1987年の希望小売価格が600ドルなので、中古品の割りにかなり高くなっています。
この日本で値段が高騰している理由は、その出品の少なさにあります。
本当にめったに出品されません。実は、私はAlexiが亡くなる前の時に一度買い、売り、そしてまた買い戻しをして現在所持してます。
今から手に入れようとするのは相当大変です。
というように、Jackson時代機材の高騰があり、RR-J2SPもそれにもれず高騰し、レアアイテムとなっています。
この機材でしか出せない音がある
レアアイテムとなる理由がもうひとつあります。
それはこの機材達でしか、あのJackson時代のAlexiの音は出せないのです。
Alexiが亡くなって、COBの曲弾いてみようと思ったギタリストも多いのではないのでしょうか。それである問題に直面したはずです。
「この音どうやって作るの?」
これ本当に悩むんですよね。
ギタリストの方は試しに練習と思ってやってみてください。
このサウンドの異質さに気づくと思います。
現実的な方法だと、KemperでGP-1000もしくはXLS-1000のリグを見つけてやるしかないかもしれません。
ということで、サウンドメイクの点で個性的であることも高騰している理由の一つでしょう。
おわりに
以上紹介でした。思い出のある機材は手に持っておきたいですね。
ちなみに盗まれたWildchildは楽器店で見つかったらしいです。Alexiは見つかったことを本当に嬉しいことだと言っていました。ただESPとの契約上なのか、手に戻すことはなかったようです。ソースが見つかれば貼っておきます。