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「奈良のシカ」の糞

奈良公園およびその周辺に生息する野生のシカは、武甕槌命(たけみかづちのみこと)が、茨城県の鹿島神宮から奈良に移る時に白鹿の背に乗ってきたという伝承から、古来より春日大社の「神鹿(しんろく)」とされ手厚く保護されている。1957年9月18日に、旧奈良市一円を生息地とするものが、国の天然記念物「奈良のシカ」に指定された。奈良公園には、約1200頭もの野生のシカが生息する。これだけ多くのシカがいるのに、園内に散らばる糞はそれほど多くはない。1頭が1日に出す糞の量は700グラム~1キログラム。1200頭だと1日で840キログラム~1.2トン、1年間では300トンを超える計算になる。しかし、奈良公園事務所では、シカの糞の掃除はしていないという。では、園内の環境はどうやって保たれているのか?シカの糞を割ると、その中で小さな虫がうごめく。糞をエサにするコガネムシの一種、自然界の掃除屋さん「糞虫(ふんちゅう)」だ。日本には約150種の糞虫が生息しているが、そのうちの約50種が奈良公園で確認されている。美しい藍緑色に輝くルリセンチコガネや、5本の角を持つゴホンダイコクコガネなどがいる。体の小さいものは、シカの糞の中に潜り込み、黒豆ほどの大きさの糞を1日で分解。ハエが産み付けた卵も一緒に食べる。分解された糞は園内に広がる芝の肥料になる。また、シカが食べてくれるため、芝刈り作業は不要だという。

※ 見出し画像にはPixabayのフリー素材を利用しています。

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