イプシロン指令破壊
2022年10月12日の午前9時50分43秒、鹿児島県肝付町の内之浦宇宙空間観測所。宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、小型固体燃料ロケット・イプシロン6号機を打ち上げたが、約6分半後の9時57分11秒に指令破壊信号を送出して機体を破壊した。ロケットには、宇宙ベンチャー・QPS研究所(福岡市)の小型レーダー衛星2基を含む計8基の人工衛星が搭載されていた。鳥取県の国立米子工業高等専門学校など、全国8つの高専が2年3か月の歳月をかけて共同開発した衛星「KOSEN-2」も搭載。打ち上げの様子を見守っていた学生や教職員らは、突然の出来事に呆然としていた。
イプシロン6号機は、2段目の燃焼終了まで計画どおりに飛行していたが、2段目と3段目を分離する前にロケットの姿勢が目標からずれたため、JAXAは地球を周回する軌道に衛星を投入できないと判断し、管制を行う種子島宇宙センターから指令破壊信号を送出。ロケット2段目の表面に装着されている火工品を破裂させ機体を破壊した。機体はフィリピン東方の海上に落下したと推定されるが、回収は困難とみられている。文部科学省は同日、対策本部を設置。JAXAは姿勢制御をつかさどる機器を調べて、詳細な原因究明を進める。JAXAのロケットでは、1999年11月15日のH2ロケット8号機、2003年11月29日のH2Aロケット6号機で指令破壊を実施している。イプシロン6号機では、JAXAが行ってきた打ち上げ前の整備作業のほとんどをIHIエアロスペース(東京都江東区)主体に変更し、民間移管に向けた段階的な準備を進めていた。
H2Aロケットなどの技術を活用して開発された、全長26メートル、重さ96トンのイプシロン。JAXAはさらなる性能向上を目指し、次世代型のイプシロンSを開発。2023年度の実証機の打ち上げを予定している。イプシロンSの技術や一部の部品は、現在開発中の次世代大型ロケットH3と共通化させる方針だが、H3はメインエンジンで見つかった不具合の対応で開発が遅れている。
※ 見出し画像にはPixabayのフリー素材を利用しています。
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