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海上保安庁の無人航空機

海上保安庁は海洋監視体制を強化するために、およそ40億円の予算をかけて米ジェネラル・アトミクス社製の「シーガーディアン」1機を導入。2022年10月19日から、海上自衛隊八戸航空基地(青森県八戸市)を拠点に運用を開始した。地上にある施設から、パイロットが人工衛星を通じて操縦し、搭載された複数のカメラで海難事故の捜索や不審船の監視などにあたる。最新の技術に対応するためパイロットは外部に委託し、管理・監督を行う海上保安官を配置している。海保は早期の3機体制を目指し2023年度に87億円の予算を要求。南西地域にも配備することを考えている。シーガーディアンは、全長11.7メートル、全幅24メートルで、軍用の機体をベースに、海上の監視に特化する形に改良したもの。24時間以上の航続が可能で、一回の飛行で日本の排他的経済水域(EEZ)の外周を1周以上できるとされる。夜間用赤外線カメラやセンサーを搭載し、高度3000メートル以上から不審船などを確認でき、地上からの遠隔操作で警告を出すこともできる。また、船形の特徴からAIで船を特定する機能もあり、データの蓄積を進めるとしている。シーガーディアンは、米国の沿岸警備隊などに配備されている。

海保と海上自衛隊は、警戒監視用の無人航空機を共同運用する方向で調整している。日本周辺海域で中国やロシア軍艦艇の活動が活発化しているため、海保が運用を開始した無人機の情報を海自と共有し、警戒監視の効率化を図る。現状は無人機で得られた画像を加工した上で海自に提供しているが、2023年度からはリアルタイムで共有する方向で調整。運用状況を検証し、海保が利用しない時間帯に海自が試験的に活用するなどの共同運用に切り替える。自衛隊は固定目標を監視する無人機「グローバルホーク」を導入したものの運用には至らず、海上を広域で監視する無人機を保有していないため、共同運用の実績を重ねた後に海自がシーガーディアンを導入する案を検討している。東シナ海では、中国軍が無人航空機を頻繁に飛来させている。運用コストの低い無人機に対し、航空自衛隊は戦闘機の緊急発進(スクランブル)で対応していることから、費用対効果が悪すぎると指摘されている。このため、領海侵入や領空侵犯のおそれがない場合には、海自の無人機での警戒にとどめるなどの運用も模索する。また、太平洋側の監視態勢強化のため、海自硫黄島航空基地(東京都小笠原村)などに配備する案もある。海保と海自の連携強化は、政府が検討する防衛力の抜本強化でも重要な論点になっている。

※ 見出し画像にはPixabayのフリー素材を利用しています。

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