月面を走行する有人探査車
アメリカ航空宇宙局(NASA)は2022年10月24日、「アルテミス計画」の模擬実験に使われた、月面を走行する有人探査車(ローバ)の試作機を公開した。人間が月面で居住・作業できるローバは、2030年ごろの導入を目指して開発が進められていている。米国が試作した車両は、高さ約3メートル、長さ約5メートルで、時速10キロで走行し、小さな岩場も乗り越えられる。車内には、宇宙飛行士2人が生活できるようにトイレやベッドが設置されている。NASAと宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、アリゾナ州の砂漠地帯を月面に見立てた模擬実験を、10月中旬から11日間の日程で行った。実験には、JAXAから宇宙飛行士の星出彰彦さんと金井宣茂さん、それに2人のエンジニアが参加。エンジニアら2人が車両で3日間を過ごすなどのシミュレーションが行われた。日本も参加するこの国際プロジェクトは、宇宙飛行士が月面に滞在して継続的に探査することを目指している。JAXAはトヨタ自動車や日産自動車などと、宇宙服なしで運転できるローバの研究開発を進めている。JAXAの現場責任者・神吉誠志さんは、「実際に探査車をどう使うかや宇宙飛行士がどうすれば快適に過ごせるかなど、実験で得られたデータを今後の設計に反映させていきたい」と話す。
「アルテミス計画」は、1972年のアポロ17号以来、再び人類を月面に送り、長期滞在できる拠点を建設し、水などの資源を開発する計画。「アルテミス1号」の打ち上げは2022年11月を予定し(当初は2022年8月29日)、宇宙船の無人試験から本格的に始動。最短で2025年に、約半世紀ぶりの人類の月面着陸を目指す。アルテミスはギリシア神話に登場する月の女神で、アポロ計画の由来となった太陽神アポロンとは双子とされる。
※ 見出し画像にはPixabayのフリー素材を利用しています。