「温暖化で沈む国」の不都合な真実?
ツバルはオーストラリアとハワイの中間に位置し、9つの環礁島からなる。総面積は約26平方キロと東京の品川区(約23平方キロ)よりもひとまわり大きく、隣国ナウルに次いで世界で4番目に小さい国家だ。国の中心は、約3平方キロのフナフティ環礁島で、サンゴでできた島がリング状につながっている。その中で最も大きいフォンガファレ島に首都フナフティがあり、国際空港(第二次世界大戦中にアメリカが建設した軍用飛行場が起源)、政府庁舎、警察署などが集中。ツバルの全人口1万1792人(2020年、世界銀行)のうちの6割が住んでいる。日本からの直行便はなく、フィジーのスバを経由する。フィジーエアウェイズがスバとフナフティ間で週3便を運航している(所要時間は約2時間30分)。
ツバルは、キングタイド(1月から3月の大潮)やサイクロンの接近などによる大きな被害に見舞われるたびに、温暖化による海面上昇が被害を拡大していると主張。温暖化対策の名目で世界中からさまざまな援助を受けるようになった。日本の援助は、2019年度までの累計で無償資金協力が約110億円、技術協力は約31億円。オーストラリアやニュージーランドからも巨額の援助を受けている。また、国土面積は小さいものの、約76万平方キロの排他的経済水域(EEZ)を有することから、入漁料が大きな収入源になっている。公式通貨ツバル・ドルは、オーストラリア・ドルと同じレートに固定され、豪ドルと一緒に使用されている。硬貨はオーストラリアで設計、製造、販売されているが、スタートレックやジョン・ウェインなどをモチーフとした硬貨のほとんどは、海外のコレクター向けに販売され、ツバルは年間約20万ドルのロイヤリティを受け取っている。また、イギリス王室やアメリカ合衆国大統領の記念切手も販売されている。ツバルは、10年間に渡る「.tv」ドメインの使用権を合計5000万ドルでアメリカのベンチャー企業dotTVに売却し(2022年時点では、GoDaddyが使用権を保有)、この資金を元に2000年9月5日に国連加盟を果たした。ツバルにおける1人当たりのGDPは、2000年に1463ドル、2010年に3024ドル、2020年には4143ドルへと推移している(世界銀行)。
NPO法人ツバル・オーバービューの河尻京子さんは、ツバルで300人ほどの島民に温暖化や海面上昇についてインタビューしたことがあり、ほとんどの人はニュースで聞いた話として認識していたという。海面は、気圧、温度、塩分濃度、潮汐などの影響を受けて常に変動している。海面上昇を0.1ミリ単位で見極めるにはかなりの困難を伴い、将来予測も含めてさまざまな数字が発表され混乱が生じている。ニュージーランドにあるオークランド大学の研究チームは2018年2月9日、イギリスの科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに「ツバルの国土面積は拡大していた」とする研究論文を発表した。航空写真や衛星写真を駆使して、ツバルの9つの環礁と101の岩礁について、1971年から2014年までの地形の変化を分析。8つの環礁と約4分の3の岩礁で面積が広がり、ツバルの総面積は2.9%拡大していたことが判明。波や嵐で打ち上げられた堆積物などによって、海面上昇による浸食が相殺された可能性があるという。サンゴが成長するにしたがって環礁が高くなり、そこに砂が堆積して島が拡大していくためと考える研究者もいる。
※ 見出し画像にはPixabayのフリー素材を利用しています。
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