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カマキリを入水自殺させるヒモの謎

寄生虫のハリガネムシは宿主のカマキリを操り、川や池に飛び込ませることが知られている。神戸大学などの国際研究グループは、水面の反射光に含まれる水平偏光がカマキリを引き寄せることを発見。この研究成果は、2021年6月21日(現地時間)に、米科学誌「Current Biology」に掲載された。寄生生物が、宿主の光を感じる仕組みを操作して行動を起こさせることを示したのは世界初という。

寄生生物の中には、宿主の形態や行動を変えてしまう種も多く、ハリガネムシはその代表例とされる。水中で孵化し、最初に寄生する水生昆虫が羽化して陸に移るとカマキリなどに食べられその体内で成長。成虫になると宿主を操って水に飛び込ませ、水中に戻り繁殖して一生を終える。100年あまり前から、ハリガネムシが宿主を水に飛び込ませることは知られていたが、その仕組みは謎だった。水面の反射光に引き寄せられるとも考えられてきたが、光を反射する他のものには飛び込まないことから、研究グループは明るさ以外の原因があると考えた。近年、昆虫などの節足動物が偏光の振動方向を識別できると証明されたことから、寄生されたカマキリも川や池の偏光に誘われているとの仮説を立て、国内に広く生息するハラビロカマキリで実験を行った。寄生されたカマキリは、そうでないカマキリに比べて、2000ルクス以上で偏光していない光や垂直偏光よりも水平偏光(振動方向が水平に偏った光波)を選ぶ傾向が強かった。また、底が深くて水平偏光の反射が強い池と、そうでない池を設け、その間に位置する木に16匹のカマキリを放ったところ、14匹が前者に飛び込んだ。これらの実験の結果から、ハリガネムシが巧みな戦略を獲得し、すぐに干上がってしまう水たまりなどを避けて繁殖を成功させていることがうかがえる。さらに、水に飛び込むのが正午ごろに集中していることを発見。寄生されたカマキリがよく歩く時間帯であることから、カマキリやハリガネムシの一日の生活リズムと関連する可能性も見えてきた。研究グループは引き続き、カマキリが水平偏光を見る仕組みや、ハリガネムシがそれを操作する仕組みの解明を目指す。神戸大学大学院理学研究科の佐藤拓哉准教授は、「多くの動物は、人間には分からない偏光を見る仕組みを進化させてきた。それをゲノム改変せずに上手に少しいじって、狙い通りの行動をさせる寄生虫がいることは、実に面白い」と述べている。

京都大学と北海道大学の研究グループは、ワラジムシやダイオウグソクムシなどが含まれる等脚類を宿主とするハリガネムシを世界で初めて発見した。これまで海生ハリガネムシの宿主は、ヤドカリやエビ、カニなどが含まれる十脚類というグループに限られると考えられていた。研究成果は、2021年6月22日に、国際学術誌Parasitology Researchのオンライン版に掲載された。

※ 見出し画像にはPixabayのフリー素材を利用しています。

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