「カニの可能性から食の可能性を追求する」 お客様と共に成長するカジマ
茨城県大洗町で水産加工、食品卸、飲食・小売を展開する株式会社カジマ。カニを中心としたお惣菜やお弁当に、オリジナルのコロッケなどを展開しています。今回、小売部部長・惣菜店「かじま」店長の梶間千萩さんにカジマのこだわりなどについてお話を伺いました。
ー 千萩さんが今、一番関心あることを教えてください
2013年に家業に入って10年目を迎えるのですが、これまでにいろんな部署を経験させてもらって、現在は会社全体を見ることができています。その中で、カジマは「ずわいがにたっぷりコロッケ」といった看板商品があるのですが、次の目玉となる新商品を開発したいなと思っています。
全国各地に展開されているいろんな人気商品に目を向けて、今どんなものが人気なのかをよく調べています。そのきっかけとして、以前九州に行く機会があって、そこで初めて会ったにも関わらず、友達かと思うくらいのおもてなし精神に溢れた人たちに出会いました。その方々は商品や商売について、私が質問する以上の熱量で返答をしてくれ、お客様との日々のコミュニケーションから新商品の開発をしている手法などを伺いました。そのお話に大きな刺激を受けて、「カジマだったら何ができるだろうか」と夜も眠れなくなるほど考えています。
ー 商品開発に対する思いがどんどん強くなっているんですね
看板商品である「ずわいがにたっぷりコロッケ」は、商品化されて10年近く経つのですが、開発の背景として私たちはカニの加工をメインとしていることもあり、カニをより身近に感じてもらいたいという思いから食卓にあると嬉しいコロッケをつくろうとなったんです。そこからバリエーションを増やして、お客様から好評いただいているのを見てきたことで、もっとお客様に喜んでもらうためにはという思いが日に日に強くなっています。
茨城県はいろんな食材があるので、地元の食材を使った商品を開発できたらと思っています。私たちは商品を開発できる工場があり、作った商品をお客様に提供できるお店もあります。そのため、水産加工にこだわらず、可能性を見出して一つずつカタチにしていきたいと思っています。
ー 千萩さんのこれまでの仕事について、印象的だったことを教えてください
社長からまずは「現場を覚えなさい」ということで、白衣を着てカニの加工をやりました。加工はとてもハードな仕事で、筋肉痛でものが握れないくらいになることも日常茶飯事でした。そんな中で、私たちが販売する商品が工場でこんな感じで加工されていくんだということを学べたのは貴重な経験でした。
また、新事業の店舗の立ち上げにも関わることができ、会社がどんどん変化するフェーズを経験することができました。特に、お客様と直接関わることができるお店の仕事はとても楽しいなと感じています。思いを込めて作った商品を直接届けることができて、お客様から「おいしい」といった感謝の声を聞くことができるのは本当に幸せな仕事だと思います。
ー 千萩さんが仕事をする上で大事にしていることを教えてください
私自身が仕事を「楽しむこと」を大事にしています。私が楽しく仕事をしていると、それが周りにも伝わって職場の雰囲気が良くなって、どんなに忙しくても楽しもうと思ってもらえるのかなと思っています。さらに、職場の雰囲気はそのままお客様にも伝わるので、まずは自身が率先して楽しみながら仕事することを意識しています。
実際に私が何かをやってみた時に「いいね」とスタッフの方が気づいてくれて、それに対して「じゃあ今度、◯◯さんもやってみて」と伝えたら、自ら取り組んでいたんです。その取り組みが売上につながったりすると、そのスタッフも自信がついて、また違うことにもチャレンジしてみようとなるんです。そのような積み重ねもあって、私が惣菜店の店長になってからは商品数が増えましたし、季節の食材を使った商品を出したりと、日々変化を実感しています。
ー とても雰囲気の良い職場なんですね
世の中で今、何が流行っているとか、こういったものが売れているといったマーケットを知ることも大事にしているのですが、それ以上にカジマのメンバーは、とにかくおいしいものが好きな人が多いんです。商品開発をするにしても、マニュアルや決まりがあるわけではないのですが、みんなおいしいものが好きだから「これでいいだろう」と妥協する人は一切いないんです。食べてみて「ちょっと違うな」ということをちゃんと言えるし、「こうしてみたら」とアイデアも出すんです。
そこにはより良いものをお客様に提供しようという意識が全員にある職場だからなんだと思います。また、カジマのスタッフは主婦の方が多いので、「お母さんの味」みたいなのものが基本にあって、そこに男性の方が食べて「もう少しパンチが欲しい」などといった意見をもらっているので、誰にでも愛されるおいしさにつながっているのだと思います。
ー 水産加工業をメインとしていた事業から、飲食・小売業にも至った経緯を教えてください
2011年の東日本大震災で、私たちの工場は大きな被害を受けたのですが、それでも工場にわざわざカニを買いに来てくれる人がたくさんいたんです。その状況で、はじめは冷凍食品を販売する店舗にしたらいいのでは？という意見が出たことが始まりでした。ただ、冷凍食品だけでは毎日お店に来てくれる機会にはならないと思い、手作りのフライやお惣菜を提供すれば、より頻度高くお店に来てもらえるのではというところからスタートしました。そこから地元の方々と接する機会が増え、その後「ガールズ＆パンツァー」というアニメで大洗町が聖地となり、通称「ガルパン」ファンの方々が来てくれるようになりました。
さらに、町内在住の人と町外から訪れる方々との交流を通じて、新しい商品を提供したり、楽しんでもらえるサービスを考えたりすることになりました。例えば、揚げ物にタルタルソースをかけたいという声に対してタルタル祭りをやってみたり、揚げ物とカレーを一緒に食べたいと声に対してカツカレーを曜日限定メニューにしてみたりと、震災復興と同時にお店も活気づいていきました。振り返ってみると、2011年以降のカジマはお客様に育ててもらったのではないかと思っています。
ー カジマさんといえば「カニ」ですが、カニに対する思いをぜひ聞かせてください
カジマは私が生まれた時からカニを扱っていて、私自身はカニが身近にある生活をしてきました。贅沢な話かもしれないですが、おやつにカニを食べていたこともあり、カニの贅沢感みたいなのがわからないほどなんです（笑）。ただ、社会人になっていろんな方と接する中で、「カニってすごく特別な食材なんだな」と気づきました。
特別な日にあると嬉しい食材で、カニは人を笑顔にしてくれる食材なんだと思いました。ただ、カニを特別な日にだけ食べる食材ではなく、カジマはカニをもっと身近に感じてもらいたいと思っています。カニの持つ魅力や可能性はまだまだ無限にあると思っているので、特別なものでもあり、身近なものでもある食材として広めていきたいと思っています。
ー カジマさんの今後について、例えば5年後についてどのように考えているかを教えてください
カジマに入社した後に、若手経営者の会に参加した時に同じ質問に答えられなかったんですが、今日はしっかり答えたいと思います。まず可能性としてあるのは「魚」に偏っていないことです。現在は魚がメインですが、たくさんのお客様と接してきたこと、そこで開発してきたフライや惣菜などの経験を活かして、地元の食材を使った新商品を提供したいと思っています。新しい商品が店頭に並ぶことで、お客様にもスタッフにもより楽しいお店だと思っていただきたいですし、それがどんどん挑戦できる会社にしていきたいと思っています。
ー 最後に、千萩さんから見て、大洗町はどんな魅力のあるまちですか
私は大洗で生まれて大洗で育ちました。なので、大洗の人も食も大好きです。学生の頃は東京に出たい気持ちが強くあったのですが、東日本大震災を機に大洗に帰ってきたら、いろんな人が声をかけてくれました。道路を歩いている時も声をかけてくれたり、車のクラクション鳴らしてくれたり、家族のようにアットホームな雰囲気で接してくれるんです。そのため、知り合いだけではなく、観光で訪れた人にもフラットに接する人たちが多いまちなんです。その人の温かさをぜひ現地で感じていただけたら嬉しいなと思います。
また、なんといっても大洗は食材が豊かなまちなので、いろんなお店で提供する新鮮な食材をぜひ味わっていただきたいです。私はそんなところで育ったきて、すごい幸せな人間だなって思うので、これからはその魅力をもっと町外の人たちにも伝えていきたいと思っています。
取材・編集：萬里小路 忠昭（大洗クエスト・地域おこし協力隊）