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ヤマイシのししゃもが食べたい!」と思っていただくために原料からこだわる。

茨城県大洗町で水産加工業を営み、創業から70 年を超える老舗メーカー、株式会社ヤマイシ。4代目で現代表の関根志昌さんは毎年、カナダまで赴き、厳選したししゃもを買い付け、現地工場の品質管理などを行なっています。
今回、代表の関根さんに事業者の声として、原料の買い付けから製造、管理、販売までのこだわりについてお話を伺いました。

ヤマイシ

ー ヤマイシさんが展開するししゃもについて教えてください。

業界では珍しいのですが、弊社はカラフトシシャモ単品でカナダ現地での買い付けから、製造、管理、販売を行なっています。その中でもスーパーに特化した商品を製造・加工していて、ししゃもの原料へのこだわりやスーパーへの卸などのマーケティング力は特に力を入れています。スーパーに卸しているししゃもは、5尾や8尾のパック商品で主に展開されていて、他にも惣菜部や学校給食としても展開していただいています。

ふるさと納税については、贈答用としてのニーズも高いこともあって、20尾や40尾のボリュームで販売をしています。ありがたいことにスーパーに卸しているので、日常的に接する機会が増えたことで、今では「ヤマイシのししゃもが食べたい」と指名していただく機会も増えているんです。

ー 関根社長の原点について教えてください。

現在、私で4代目になるのですが、入社した20代前半の2,3年間は市場をとにかく回りました。そこでの商談は今の弊社のこだわりのきっかけにもなっています。弊社のししゃもは、カナダまで直接赴いて、厳選したものを買い付けていることもあり、他で展開されているししゃもより少し値が高いんです。そのため、市場でその価値をちゃんとプレゼンテーションして商談をしないと、低価格のししゃもがスーパーに採用されてしまうんです。

そのような価格競争に巻き込まれて、商談で何も伝えられない状態では、企業として続かないとその時に思いました。その後、何度も市場に足を運んでいたら、たまたま福島県にあるスーパーをご紹介していただいて、店舗で試食会をさせていただく機会をいただいたんです。そこで、これまでにない圧倒的な売上を叩き出すことができたんです。最終的に、2ヶ月以上先まで試食会の予約で土日が埋まるほどで、この現場での経験は私の原点として強く印象に残っています。

ー 現場を大事にするということですね。

弊社のししゃもをスーパーに特化した商品にするためには、まずはスーパーの現場を知ることは絶対条件だと思いました。試食会もそうですし、その他にもスーパーを運営する店長・マネジャーとのコミュニケーションにも多くの時間をかけました。現場を運営する方の水産に対する考え方や、どのように水産部門の売上を伸ばそうとしているのかを知ることで、私自身がそのために何をすべかを考えることができるんです。

また、売り場やバックヤードの作り方、人員配置の仕方、利益の取り方など、現場でいろんなことを教えていただきました。その結果、スーパーが一番欲しいものは何か、売り残りなどロスにならないやり方は何かといったスーパーの利益になる視点も取り入れた上で、消費者に喜んでもらえるししゃもを製造・販売しようとなったんです。1社1社の取引先を大事に付き合いをしていく中で、全国展開をする大手スーパーとの取引も増えました。

ー 今後はどのような展開を見据えているのでしょうか。

次の目標は、海外の売上を伸ばしていくことです。ただ、私一人だけでは難しいので、担い手となる人材を育てる必要を感じています。ただ、人材を育成するといってもそんなに簡単なことではないんです。特に、カナダ現地で捕獲したししゃもを仕分けする現場はとてつもなく辛いんです。仕分けをする際にししゃもが氷漬けになっているので、手の感覚はなくなり、長時間の立ち仕事で足腰も疲れるんです。

私はそんな環境でもう20年以上、自社で買い付けるものは全て自身でチェックしています。傷があるものや鮮度が落ちているもの、余計なゴミが入っているものを除いていると、17時間以上立ちっぱなしの時もあります。仕分ける技術はもちろん必要ですが、体力的にこの作業をやり続けられる人はそう多くいません。ただ、私は好きでこの仕事をやっているので続けられますし、より品質の良いししゃもを提供したいと思えるから、辛くても作業できるんです。

難しい問題ではありますが、技術やノウハウだけでなく、そのような仕事に対する姿勢や考え方も、人材を育てる点においては伝えていくことが大事だと考えています。

ー 4代目である関根社長が先代から受け継いでいることは何かありますか。

私の祖父と父の言葉は強く印象に残っています。祖父からは、『志昌、覚えとけよ。利益は元にあるんだから。原料が良いものでなかったら、利益っていうのは出ないからな。』とよく言われました。父には、『うちは魚や加工メーカーなんだから、うまいものを作らなかったら誰が買うんだよ。うちは絶対味はいいものを出さなきゃだめだぞ、プロなんだから。』と言われました。

その教えは土台になっていますし、その上私の代ではプラスアルファで何ができるかを考えて、私はこれまでの代以上に現場に出て勉強してきましたし、スーパーや消費者のためになることをしたいと思って経営をしています。

ー 最後にヤマイシの商品を手に取っていただく消費者の方に向けて、メッセージをお願いします。

シンプルな回答になりますが、普段食べるものの一つとして楽しんでほしいと思います。食べていただいて「美味しい!」と思っていただくだけで本当に嬉しいことです。世の中には他にたくさんの魚があって、それを加工・販売している事業者がたくさんいる中で、ヤマイシのししゃもを食べてくださるだけでありがたいことなんです。

私たちはその期待や思いに100%応えられるように、これからもこだわりをもって、ししゃもを提供し続けていきます。

取材・編集:萬里小路 忠昭(大洗クエスト・地域おこし協力隊)


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