代々受け継がれた歴史と伝統を生かしながら、新しいことに挑戦する寿多庵
茨城県大洗町の冬の名物でもある「あんこう鍋」を提供する、大正15年創業の割烹料理店「寿多庵」。「大洗の奥座敷」として地元の方だけでなく、県内・県外から多くの方がそのこだわりの味を求めてお店を訪れています。
今回、料理長の塩崎寿雄さんに事業者の声として、寿多庵の歴史やあんこうのこだわりなどについてお話を伺いました。
ー 寿多庵の特徴や塩崎料理長について教えてください。
うちは100年近くの歴史と伝統のある老舗の割烹料理店で、手打ち蕎麦や旬な魚の刺身、天ぷら、あんこう鍋といった和食を堪能できるお店です。私自身は料理の世界に入ってから主にフレンチを学んできたのですが、和食も同時に学びながら修行をしてきました。
その後、茨城県内のホテルや割烹料亭を経て、今から約35年前に寿多庵に入り、その10年後に料理長となりました。先代の三代目と現在の四代目と共に、多くの方に愛されるお店づくりとこだわりの料理を提供してきました。私は料理長という立場ですので、味へのこだわりを日々追求していて、代表が経営やマーケティングなどを主に担っています。
ー 寿多庵のこだわりについて教えてください。
季節の旬の食材をお客様に楽しんでもらえるように、市場に行き食材を目利きしています。人気のあんこうについては、茨城県より北の寒い地域に生息する脂の乗った質の良いあん肝を要し、身が引き締まって食感が良いあんこうを提供しています。その上で、独自に調合した味噌をベースにした汁を使ったあんこう鍋を冬季限定で提供しています。
ここ数年は、代が入れ替わって味を改良するためにお店を一時期閉じたり、新型コロナの影響で来客数が減った時期もありましたが、ネット通販やふるさと納税にも力を入れ始め、おかげさまで寿多庵のあんこう鍋は県外の方にも買っていただく人気商品となっています。
ー 寿多庵の歴史ついて教えてください。
初代が大洗の街中で定食屋を始めたのがきっかけと聞いています。その飲食店を二代目が引き継ぎ、「大洗の奥座敷」と称して今の場所に移転し、お蕎麦と割烹料理を始めて一気に大洗町で名を馳せる料理屋になりました。その後、三代目で県内でも人気の誇る蕎麦屋になっていきました。
当時、よくテレビ出演をしていたこともあり、特に第一次ベビーブーム世代の方には「寿多庵ってあの有名なお蕎麦屋さんだよね」と言われます。現在の四代目は、経営コンサルティング出身でもあるので、ホームページやSNSでの発信など、主にマーケティングに力を入れ始めました。
ー 現在の四代目の堀越代表になって、さらに進化をしようとしているんですね。
そうですね、例えば、調理をする際の温度や塩分濃度を感覚的ではなくきちんとデータに基づいて決めたり、ここ数年で増えたガルパンファンに人気となった杏仁豆腐を開発したり、これまで使っていた厨房の機器を一新して、食材管理の仕方や料理の幅を広げたり、ネット通販やふるさと納税の梱包・配送を効率よくしたりと、これまでの歴史や伝統を生かしながらも、新しいことにどんどん挑戦していこうという経営者です。
ー 寿多庵の今後の展望について教えてください。
ここ数年伸びているネット通販やふるさと納税により力を入れて、全国各地の方々に寿多庵の味を届けていきたいと思っています。その一方で、私たちの最大の強みは何といってもお店です。旬な食材を使ったこだわりの料理をお店で食べてもらいたいと思っています。
代表がよく言っていることで、お客様が毎回食べる食材の食感や味が違うなど、「寿多庵で食べる料理は楽しい」という感動体験を提供するお店にしたいと考えています。食材の組み合わせや噛む度に違う味がするといった繊細な表現ができるのは日本料理の良いところであります。その目標に向けて試行錯誤を繰り返す毎日ですが、料理長としてそれを体現できるお店づくりをしていきます。
取材・編集:萬里小路 忠昭(大洗クエスト・地域おこし協力隊)
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