たくさんの失敗を積み重ねて今のおいしさに辿り着いた
茨城県大洗町で干し芋を販売する幸重(こうじゅう)。生産する「紅はるか」は無添加の自然食品で、熟成によって糖度を高めた甘さが特徴で、大洗ブランド認証品にも指定されています。
今回、代表の小野瀬三雄さん(4代目)と、宏幸さん(5代目)の2名に事業者の声として、原料の生産から加工、販売までをするこだわりの干し芋についてお話を伺いました。
ほしいも屋 幸重
ー 幸重さんが展開する紅はるかを使用した干し芋のこだわりについて教えてください
(三雄さん)うちは「お客様に喜んでもらえる商品」を心がけて作っています。原料となる紅はるかは蜜芋と呼ばれるほど上品な甘さがあるのですが、その甘みがしっかり出るように、ある程度の期間、寒さにあてて糖化をさせているんです。そこから一つひとつ丁寧に手作業で加工しているので、おいしさにこだわっています。
(宏幸さん)代表が品質にこだわって生産と加工をしているので、私は直売場や農協さん、ネット販売など、作った干し芋をどのようにお客様に届けるかに力を入れています。うちは生産・加工・販売の3つ全てに取り組みながら、さらなる価値を生み出す6次産業化に取り組んでいます。また、インスタグラムを活用して若い層への認知度を高める活動にも注力しています。
ー 三雄さんは生産・加工、宏幸さんは販売・情報発と役割が明確にあるんですね
(三雄さん)私の代から干し芋の生産・加工を始めたこともあり、私はとにかくお客様が喜んでもらえるおいしさを大事にしてずっとやってきました。一方で、作れば売れる時代ではなくなっていて、今の時代に合った売り方も必要ですので、そこは宏幸に任せている感じです。
(宏幸さん)自然とお互いの役割が分かれた感じなので対立も全然ないですし、私も代表と同じで、お客様が喜んでくれるのが一番なので、そこに向けて私なりの視点でチャレンジしているという感じです。
ー おいしさへの追求について、そこに至る過程を教えてください
(三雄さん)うちはたくさんの失敗をしてきて、今のおいしさがあるんです。というのも、原料の芋は自然の生ものですので、天候に左右されてしまうこともありますし、生産ができても加工する設備や技術が足りなかったり、これくらいでいいだろうと妥協してしまって失敗したこともあります。そのような失敗の積み重ねを経験して辿り着いた干し芋が今の幸重なんです。
(宏幸さん)自然のものを相手にするとはこういうことなのか、代表の苦労を私は強く印象に残っています。気温が暑い時はどうするのか、寒い時はどうするのか、どの位置に置いて保存するのか、設備がない中でどのように原料を腐らせないようにするのか、など試行錯誤の連続だったと思います。
ー たくさんの失敗を経験し、さらに10年ほど前に紅はるかという新しい品種が出てきて、今の幸重があるんですね
(三雄さん)同じことの繰り返しになってしまいますが、その失敗があるので同じ失敗はしないと、真心込めてつくっています。そのおかげもあってか、今では高級品として贈答用としても購入をいただく機会が増えていますし、このコロナ禍で巣ごもり需要もあって、干し芋を日常的に食べていただく機会も増えています。
(宏幸さん)私はそのおいしさをいろんな年代の方々に届けるために、箱やパッケージのデザインにこだわっています。例えば、今の若い年代に流行っているスイーツはどうなっていて、そのパッケージはどのようにデザインされているのか。大洗町でいうと、観光地で車での移動がメインだとすると、その際に食べる容器はカップの方が食べやすいだろうとか、見せ方や食べ方の工夫一つで本当に変わることを実感しています。
ー 最後に、お二人からみた大洗町の魅力を教えてください。
(三雄さん)大洗はとにかく自然が豊かなまちです。海、川、沼があって、どこから見ても景気はきれいで、海水浴やキャンプなどのレジャーもあって、観光もできて、最高の場所だと思うんです。そんな自然環境の良い土地で芋づくりをして、直接お客様に商品を提供できるのは幸せなことだと思っています。その魅力をいろんな方に感じていただきたいです。
(宏幸さん)私は一度東京に出て戻ってきた身で、少し厳しい見方かもしれないですが、町の人口がどんどん減っていって、閉まっているお店も増えているのをみて、寂しさを感じるんです。一方で今、新しい人が移住してきたり、新しい施設もできている状況で、これまでと違う雰囲気も感じるんです。私も含めて特に若い年代が次のまちをつくるフェーズにあるんだと思うので、そういった視点でもまちに関わってくれる人が増えたらいいなと思っています。
取材・編集:萬里小路 忠昭(大洗クエスト・地域おこし協力隊)
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