【ネタバレ注意】君たちはどう生きるのかを見た
『君たちはどう生きるのか』を観た。内容に触れるためネタバレ注意。かつ、素人が1度見ただけで記憶を頼りに書いているので、あくまで一個人の感想として読んでいただければ幸いです。
■感想
・テーマについて
宮崎駿氏の映画はよく説教だと揶揄される。ありきたりな反戦や環境問題などへのメッセージが込められており、チープかもしれないが常に誰かが発している必要があるという役割を担っているように感じていた。しかし本作は、あんまり説教臭くない。今回もテーマはありきたりだが、これまでのジブリ作品のように世界へ目を向けたものではなく、ある血筋、特に親子(義母)との関係について描かれており、大筋は冒頭で予想できるものだった。製作体制が変わったからか、或いは大衆への警鐘を鳴らす役割は後進に譲ったという心情の変化か、この風呂敷の範囲が狭まっていることはこれまでのジブリ作品との差異だと思った。
・舞台設定について
結局、宮崎氏は戦時の描写が上手い。冒頭の雰囲気は風立ちぬのようで、細かいことはさておきある時代の日本が舞台だ!とはっきり提示される。これまで以上に説明が少ないように感じたが、現世については必要最低限の状況説明に抑えられているという印象で、テンポはさておき間延びする感覚は無かった。
一方、いつものことだが異世界についての状況説明は不足この上ない……というわけでもない。これは私の予備知識なのか、チャンネルが合ってしまったのかはわからないが、とにかく前世のような場所だということはわかった。わらわらが飛んで現世で人間になるという件は、飛んでいく様が二重螺旋つまりDNA状になっていったことで想起しやすかったし、それをペリカンが拒もうとする様子はどこかハウルっぽさを感じた。良し悪しはさておき、1つ1つの異界については分かり辛いわけではなかったと思う。
・演出について
相変わらず山や野生の怖さを描くのが上手い。アオサギは中盤からねずみ男のようになってしまうが、序盤の得体が知れない化け物という描写はとても不気味だった。終盤のちょっとコミカルなところもいかにもジブリらしく、こちらもまた1つ1つは明快なジブリ映画の雰囲気を持っていた。
そう、分解して個別で見ればあまり違和感はないのだ。なんとなくわかる。この塩梅は流石だ。しかし、連続してみるとどうだろうか?
・シナリオについて
率直に言うと前振りの無い、或いは荒いフラグの建設と回収が多かった。「過去に実母が神隠しに遭い、1年後に記憶喪失の状態で見つかった」云々なんて突然語られていたが、そんなのヒミが母親だってすぐわかるだろう。服装も一緒だし。現世の人間関係を引きずりたいのか、異界の住人と交友を深めたいのかが中途半端だったと思う(キリコ姐さんとかね)。この作品は死別した前妻の息子と義母の関係を進める物語だと最初に提示しているのに、余計なことを描き過ぎているのではないか?と終始感じていた。
死んだ妻の妹と再婚するというのは現代では驚きもするが、それはさておき「亡き母の想いを知って~」なのか、「新しい命の無垢さに感化されて~」とか、ありきたりなきっかけで主人公が心に一区切りつけて義母との関係を好転させるということをしているはずなのに、どちらも印象が薄い。それよりもキリコ姐さんとアオサギとの冒険、大叔父との押し問答の方が主人公に影響を与えている気がする。というか、ヒミが焼死について素敵だの火は好きだの言ってるの怖くない?どういう心境?流石に怖い。
・妄想
私は新海誠信者だからこのように感じたんだろうなという妄想を認めておく。
異界の描写、キリコとヒミの時間軸のずれ、お守りなどは「君の名は。」要素を、主人公が自身も清廉無垢ではないので他人の世界よりも自分の世界を選択するところは「天気の子」要素を感じた。どちらかというと新海作品がジブリ作品に影響を受けている側だと思っていたのだが、今作は関係が逆転しているのではないか?と軽率に考えてしまった。しかし、同じように感じた人もいるのではないかな?
■3行まとめ
Twitterにはびこっている格好良い雰囲気のアオサギは登場しない
オススメできる作品ではない
弓矢作って木刀振り回したくなる
気になる方はぜひ劇場に足を運んでみて欲しい。その際はポップコーンでも飲み物でも買ってくれると映画館好きの社畜は喜ぶぞ!