【CTO&VPoEに聞く】スループットを最大化させる開発組織とは ~開発組織に副業は必要か!?~ vol.1
こんにちは、overflow担当の浜田です。
開発スピードを最大化させることは、開発マネジメント担当者や事業責任者にとって大変重要なテーマの一つです。特に新規事業では、リリースの遅延によって事業成長を大きく妨げる原因にもなります。
その解決策の一つに開発人材の「採用」がありますが、開発人材の需要は年々高まっており採用難が続いています。採用難が続く中、企業はどのように人材を確保し開発スピードをあげればいいのでしょうか。
本noteは、従業員の7割が副業メンバーのoverflowが、具体的にどのように開発組織を創ってきたのか、実体験をもとにお伝えします。
📌本記事のハイライト
「副業人材」のメリットは、経験豊富な人材に早く出会えること
「副業人材」が自社にマッチしているかどうかは、入社後に判断すること
「副業転職」成功の秘訣は、受け入れ体制3原則がそろっているかどうか
以下のような方におすすめです。
スタートアップ経営者、採用を担当されている方
エンジニア採用を頑張っているが、なかなか採用できないと悩んでいる方
副業人材の受け入れを検討されている方
まずは自己紹介
大谷(CTO)CTOを約5年務めている大谷です。開発チームやコーポレートITなど、overflowの開発全般の管理を担っており、技術戦略の策定も行っています。
初期の頃から副業開発組織を体現し、副業の方のメンターも務めているので、実像をお伝えします。
佐藤(VPoE)2022年の1月からVPoEとしてoverflowにジョインしている佐藤です。前職まではWebエンジニアを経てエンジニアリングマネージャーや開発組織の人事などを務めていました。現職では採用選考プロセスの整備や評価制度策定のほか、開発組織の運営全般に携わっています。組織開発の観点からも副業人材についてお話します。
overflowの副業組織
大谷 overflowは現在、副業・フリーランス・正社員・アルバイト・役員を含めて約150名の組織です。ユニークな点は、全メンバーの72.3%が業務委託メンバーである点です。副業割合が多い背景には、エンジニアの採用難から脱却したかったという当社の思いがあります。
ITエンジニアの転職顕在層は約1.3万人しかいないといわれる一方、転職潜在層は約50万人いるといわれています。当社はこの転職潜在層に目をつけ、副業メンバーを積極的に取り入れるようになりました。また、この発想をもとにITエンジニア/デザイナーの副業・転職サービス「Offers」を開発しました。
overflowの開発における組織形態
大谷 開発組織においては、PdM・PjMに加えて、データサイエンティスト、データエンジニア、デザイナー、プロダクト開発に関わるエンジニアで構成されています。
それぞれの人数は、PdM・PjMが5名、データエンジニアが3名、デザイナーが8名、開発が22名になっています。エンジニアだけで見ると兼務を除き、フルタイムが9名、副業が14名、アドバイザーが2名で、正社員よりも副業が多いのが特徴です。
副業の方に私たちの組織を活用していただきながら、プロダクト開発や基盤回りの整備を進めています。また、副業メンバーが多いのはもちろんですが、そこから正社員として働いていただく方も多いのが特徴です。
副業から正社員へ「副業転職」とは
佐藤 我々は副業から正社員へ転換することを「副業転職」と名付けています。実際にoverflowでは、全正社員39名のうち22名に当たる56.41%が「副業転職」での入社者です。
Offersの利用企業様の中でも、副業採用から2、3割は副業転職に成功していたり、社員の75%が副業転職経由で構成されているスタートアップ企業などが出てきたりしています。
また、ユーザーでもOffersを副業転職目的で利用されるケースが増え、働き手側の考え方の変化が生まれているように思います。
「副業人材」を受け入れるメリットはあるのか
大谷 副業人材を受け入れるメリットは、沢山あります。まず一つ目は、スタートアップのような名が知られていない企業でも、経験豊富な幅広い人材にタッチできる点です。
副業だと転職よりも参画のハードルが低いため、一般的な採用サービスでは出会えないハイクラスのエンジニアに参画いただける可能性が高いです。
当社でも某大手アプリサービスの方や、web3のエンジニアの方などさまざまな技術要素を持った方に参画していただいており、私も初期の頃はこんな方に参画いただけるんだと驚きました。
そして二つ目は、副業から正社員として入社いただける可能性が生まれることです。
この「副業転職」だと就業経験を踏まえて入社を判断できることから、私たちの実情も早く見てもらえています。そのため、より早く、深く、知り合うことができ、その結果、入社後のパフォーマンスも高く、離職率が低いなどの傾向もあります。
逆に従来の転職方法ですと、数回の面接と技能試験だけでカルチャーマッチと能力を判断しなければならず、難易度が上がります。
佐藤 三つ目には、稼働までのタイミングが早いことです。
一般的な採用選考の場合、面談、面接、試験などを繰り返し、慎重に人材を見極める必要があります。一方、副業選考の場合は、実際に契約から稼働開始、オンボーディングなどを経て人材を見極めていくため、参画して欲しい方に出会えた後の展開は非常に早いです。
また、当社では副業メンバーのお陰で、採用も比較的計画通りに進んでいます。
「副業転職」が成功する企業体制3原則
大谷 実際に副業として受け入れても、副業メンバーのパフォーマンスをうまく引き出せなかったり、アプローチに失敗したりといったお声をよく聞きます。上手くいかない要因はいくつか考えられますが、当社では「副業転職」の成功にはまず、副業の方がモチベーション高く働ける仕組みを作ることが大切だと考えています。
具体的にこれまで100名以上の副業を受け入れてきた当社では、以下3点を重要視しています。
原則1 ) 雇用形態によって情報格差を作らない
大谷 一つ目は、雇用形態によって情報格差を作らないことです。
雇用形態は関係なく、情報をオープンにすることが重要です。「〇〇を作って欲しい」という要件だけではなく、なぜこれが必要なのか、whatとwhy(背景)を伝える必要があります。副業メンバーも情報が足りないと、良し悪しの判断ができず結果的に自走できません。また、モチベーションも湧かずその会社に入りたいとも思ってもらえません。
実際に弊社の場合は、全社に関わる情報は経営数字以外全て開示しています。月1での全社会でもガバナンス的に制限しなければならない部分があり、ある程度閲覧を制限していていますが、申請制で見たい方は見れる環境を用意しています。
また、開発に関する情報については、秘匿情報、例えばクレデンシャル情報や本番環境へのデータのアクセスなどは制限していますが、それ以外の情報は全て見られる状態です。
原則2) 非同期コミュニケーションを前提とした仕組みづくり
二つ目は、非同期コミュニケーションを前提にした仕組み作りを行うことです。同期的なコミュニケーションとは、副業の方が自ら情報を探しにいかないと、情報をキャッチアップできない状態です。基本的に副業の方はタイムラインがずれるため、同期的なコミュニケーションを前提とした仕組みではうまく回りません。
そのため、チャットやドキュメントベースで情報をやり取りするようにし、ドキュメントルールなども合わせて明確化しています。また、やり取りしてもすぐにコミュニケーションが始まらない前提で、ミーティングなどの設定を考えていく必要があります。定例ミーティングよりも、副業の方それぞれと1on1を繰り返すような工夫も必要です。
原則3) モチベーション管理をしない
三つ目は、副業の方のモチベーション管理をしないことです。正社員の場合は、マネジメントを通して各々のモチベーション管理が求められますが、副業の方は副業でプロとして参画いただいているので管理していません。
モチベーション管理はせず、業務におけるブロッカーとなる要因を外すためのアクションを行なっています。例えば、業務やタスクを適切に割り振れているかなどの管理です。この考えに合わせて評価も実施していません。
副業採用選考は、2回の面談のみ
佐藤 次に、開発メンバーの採用選考フローについてです。
正社員の場合はカジュアル面談で会社理解を深めたのち、面接を3回ほど行います。特にエンジニアの場合は、技術面やこれまでの経験、行ってきた意思決定の内容などを伺います。
そして最終面接では、これまでの面接内容を包括的に伺い、最終的にオファーを出すという流れです。実際のコンタクト回数としては、面談面接合わせて4回、内定のオファー面談を含めると5回になります。期間としては、選考フロー全体で1カ月以上はかかります。
一方、副業の場合は実際に業務の業務を通じて、相互理解をすることを前提としています。そのため、一度カジュアル面談をして、2回目にインタビューという形で最低限技術が適合しているか、業務を任せられる自走力があるかを確かめる機会を設けています。
内定オファーもメッセージでやり取りし、参画していただいた後にコミュニケーションを取っていく形なので、選考フローをかなり圧縮しています。実際、約1週間で決まることが多いです。
カジュアル面談では、会社理解を優先する
佐藤 次に、具体的なカジュアル面談や面接の内容についてご紹介します。
まず、カジュアル面談では、候補者の方がoverflowに興味を持ってくれたという前提で、事業、組織、チーム、プロダクトなどについて伝える場としています。
候補者の方によって聞きたい点が異なるため、アレンジを加えながらリクエストに応えるようにしています。もちろん候補者の方について軽く伺うこともありますが、基本的には弊社について知りたい情報をお伝えする時間です。
逆に、カジュアル面談に適していない話題もあります。例えば、実質面接と思われるような経歴の深掘りや、明示的な合否判定など、選考のような内容です。当社では、カジュアル面談では話さない内容を取り決めることで、面談と面接の線引きをしっかり行っています。
面接では、スキルとコンピテンシーを確認
佐藤 カジュアル面談の後は面接です。正社員、副業どちらもスキルとコンピテンシー(安定して成績を上げられる行動特性)の二軸を見ています。どちらの軸もGoogleなどが採用している構造化面接の手法を一部取り入れているのが特徴です。
当社では、独自の評価基準を設けています。スキルでは大きく「専門知識」と「経験」「課題解決力」「技術構造化力」があり、コンピテンシーでは大きく「自走力」「ものづくり愛」「技術への情熱」といった項目があります。またそれぞれの評価基準に適合するかを引き出すための質問集があり、固定化された質問をもとに誰でも評価できる形です。
正社員の場合は3回の面接で、副業の場合はインタビューという形で、1回の面接に圧縮しています。
大谷 スキル、コンピテンシーを1次、2次面接で聞いた後に、私の最終面接でシステムデザインインタビューを行っています。
例えば、
Airbnbのようなプロダクトを作る場合を想定して、私たちのプロダクトで置き換える場合はどうするか?
このようなリクエストが機能提案としてきた場合はどうするか?どんな情報があれば進められるか?
ユーザー数が10倍になったらどこにボトルネックが発生するか? など
正解はなく、未知の問題に対して自分なりに情報を解釈して構造化し、どのような結論が出せるかを見るための面談になっています。
以上が、弊社における開発組織の体制と、採用体制についてのお話でした!
次回では、開発組織におけるメンバー入社後からオンボーデンングまでの流れについて詳しくお伝えしていきます!お楽しみに!
経験豊富な開発人材との出会いは、Offersにご相談ください ✨✨
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