母に似た人を見た
今日、電車で母に似た人を見た。
あっ、と思って、動揺した。もう会えない人だと覚悟を決めて、ゆっくりゆっくりその事実に半年かけて慣れて来ていたところだったから。
何が似ているんだろう、と失礼にならないように注意しながら横目で観察させてもらった。
背格好が似ていた。少しぽっちゃりした感じは、70代後半の頃の母に似ていた。
マスクをした目元の優しい感じとか、眉の濃い感じ、顔の輪郭も。
服のセンスも、いかにも母が来ていそうな長めの薄い上着と、中のブラウスとパンツ、そして歩きやすそうな靴。カバンもまさにそんな感じのもの。
少し観察しているうちに、髪の毛の質感が本当に似ていた。ウェーブのかかった髪を短くして、襟足から少し伸びた白髪混じりの髪が見えるところも。
ふと、彼女がスマホを取り出した。待ち受け画面いっぱいに男の子の笑顔。お孫さんなのだろう。母ももしスマホにしていたら、そんな風にひ孫の写真を待ち受けにしただろうかと思ったらちょっと泣けた。
私の降りる駅が来て、最後に彼女を回り込むようにじっくり眺めさせてもらって、電車からホームへ。
嬉しく淋しいひとときとなった。