グランピングの攻め筋を考えよう:グランピングはキャンプの延長だと本当に思いますか?
キャンプブームと同時に、グランピングもメディアを賑わせていました。
今回はそのグランピングについて、事業を運営されてる方がどうするべきか、ということを考えていきたいと思います。
最初は割と辛口な内容です。
グランピングとは
グランピングとは、グラマラス(豪華)とキャンピング(キャンプ)を組み合わせた造語で、自然を満喫しながらも快適な宿泊が楽しめるアウトドアスタイルです。
起源はイギリスで、アジア・アフリカのテントリゾートから生まれた概念だと言われています。日本では1996年の伊勢志摩エバーグレイズ、2006年の初島アイランドリゾートが、先駆者となっていました。 ここまではあくまで、リゾートとしてのアウトドア施設の運営でした。
しかしながら、ここ数年、キャンプブームと共に流行ったグランピングは、リゾートという要素は薄れ、グレードの高いキャンプという認識で広まります。これは、アウトドア業界としては、エントリー層が入ってくる上では、とても嬉しい役割を果たしてくれていたものの、リピーターが取りづらい構造的な弱みが現れてきました。
グランピングの構造的な弱み
グランピングには構造的な弱みがあります。その理由を分析すると、大きく3つに分けられます。
お客様の期待とサービスのギャップ
リゾート要素とアウトドア要素の両立の難易度
アウトドアやキャンプは、一定程度放っておく部分も重要であり、想定外が起こり得ます。そして、キャンプを楽しまれるお客様も、そういう意味ではアウトドアだから仕方ないよね、と許容をしている方も多いです。
しかしながら、グランピングはその起源からリゾート的な側面が強く、お客様としてもホテルに近いサービスが期待されてくる人が多いことが想定されます。スタッフ教育とサービス提供の課題
これはスタッフ教育上も同様で、グランピングを行うスタッフの姿勢が、想定外を起こさないことをするホテルマンのそれとは異なることから、お客様の期待値とのギャップが生じることがあります。
つまり、お客様側の期待するサービスや環境とスタッフ側が提供するサービスや環境の認識が異なっている可能性が高い状況と整理できます。
グランピング施設の市場状況
施設数の増加と競争激化
ここ数年、流行によりグランピングという言葉が、ワーケーションなどと共に一人歩きし、施設が急速に増えました。
特に、コロナ禍での事業再構築補助金や自治体の指定管理事業やPark-PFI事業を中心に新設が加速、毎週のように全国にグランピング施設が乱立しているのが今の状況です。
競争が猛烈に激しくなっています。売れ行き不振のキャンプ場のグランピング化
売れ行きが悪いキャンプ場が、グランピングにアップグレードしても、景観や環境、アクセスは本質的に変わらないため、結果的には集客力が上がるとは言えません。元々売れ行きが悪いことには理由があります。
これは、サービス面でも同様で、キャンプ場を運営する感覚で、とりあえずチェックインで説明をして、食材を出してBBQを楽しんで貰えば良いか、という姿勢で運営をしていると、お客様の期待は、ホテルのサービスですから、高い費用を払ってグランピングに来る意味がありません。
リピーター獲得の難しさ
グランピングの後の行動について想像してみる
初めてグランピング=リッチなアウトドア体験をしたいと来たお客様は、次の選択肢として、
①ホテルや旅館に泊まる旅行に戻るか、
②もっと本格的なアウトドアに興味を持つ、
③またグランピングをする、
の3パターンだと考えられます。
①に関しては、「アウトドアはなんか違うな、グランピングもイメージが違った」、ということで、グランピングから離脱します。
②は、どちらかというと、「次はロッジに泊まろうか?それともキャンプをしようか?」、となるのでこれもまた同様に離脱します。グランピング施設の多様化によるリピーター化の困難さ
さて、③またグランピングをしよう、となった層はどうでしょうか?そもそも、ラグジュアリーな旅行がばんばんできる層は、あまり多くありません。
再びグランピングをするかもしれませんが、よほど突出した体験をしなければ、リピーター化せずどこか他のところに行く可能性が高いでしょう。なぜならば、既にたくさん競合が増えているからです。
これらの理由から、グランピングという事業は、構造的に難易度が非常に高い上、事業環境はますます厳しくなっています。
なんだかこう書いていると絶望的ですね、私も正直、昨年くらいまでは「グランピングは何があっても手を出してはいけないモデルだ」、と言っていました。
グランピングの勝ち筋
しかし、逆に最近は勝ち筋も見えてきていると思っています。それぞれの今の環境を見ながら、以下の3つの分野に注力しましょう。
使いやすさを追求する:
主に自治体系でグランピングを展開している人たち向けの施策です。
地域の人に対して割引を設けたり、デイプランを導入して単価を下げ使いやすくしながら、地元の観光資源や特産品を活用し、地域全体で連携して集客力を高めることに注力したり、ペットなどの導入をすることで、リピーターを作れる方向性を目指してください。
言うなれば、「使いやすさ」を徹底していく作戦です。
そういう意味では、テントリゾートのような意味でのグランピングは、求めることは難しくなっています。これは、ある程度地代などが安い、あるいは、指定管理料をもらいながら固定費を抑えて進められる人たち向けの戦略になります。尖りきったサービス展開をする:
これは、圧倒的に光る何か、景色や魅力がある施設や、ホテルが運営するグランピングに向けた施策です。
独自性のあるサービスや設備を提供し、特定のターゲット層に訴求することで、リピーター獲得を目指すことが中心で、いわゆる元々の意味のリゾートに近い方向性を目指します。
費用もかかりますが、その分、人のサービスレベルを上げ、アウトドア風のラグジュアリーホテルとしてのポジションを追求していくこと、です。 星のやさんのグランピングなどはこの一つの完成形だと考えます。インバウンドに特化していく:
上記に当てはまらない方々向けの施策です。
外国人観光客向けのサービスを強化していくことで、日本の自然の魅力をアピールする役割を果たしていく作戦です。
そもそも、日本で外国の方がいわゆるキャンプをするには、道具やルールなど、乗り越えるべきハードルが非常に高い状況です。
その上で、ある程度整った中で、アウトドアを体験する場所を提供する方向性は、アウトドア業界全体への良い波及効果になると考えています。
ただ、気をつけないといけないのは、単純に施設だけの魅力ではなく、周囲のアクテビティ事業者やガイドなども巻き込みながら、その拠点としての役割を担うことです。
まとめ
グランピング事業は近年競争が激化しており、構造的な弱みがあるものの、まだ勝ち筋がある分野も存在します。
その理由は、お客様の期待とサービスのギャップ、市場状況の変化、リピーター獲得の難しさに大きく分けられますが、 しかし、次の3つの戦略によって成功が見込めます。
使いやすさを追求する:
地元の観光資源や特産品を活用し、リピーター獲得を目指す。尖りきったサービス展開:
独自性のあるサービスや設備を提供し、特定のターゲット層に訴求することでリピーター獲得を目指す。インバウンドに特化する:
外国人観光客向けのサービスを強化し、日本の自然の魅力をアピールする役割を果たす。
これに加え、そもそもですが、「グランピング」という単語を使わない、というのも戦略としてはアリ、です。言葉に振り回されすぎているかもしれませんね。
これらの戦略をうまく活用すれば、厳しいグランピング市場でも成功が見込めると考えています。 ただし、どの方向性でも大変な道のりであることは間違いありません。
2025年には、今よりももっと、日本のアウトドア市場は盛り上がると考えています。
今年、来年と少しずつ準備を進めて、業界を盛り上げていきましょう!!
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