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tótem(夏の終わりに願うこと)を観て

一番最初に映されたのは「Bitter End」の文字。
「この映画を観てもスッキリしないよ」って言われるのは初めてで、それは文化の違いなのか監督の工夫か分からないが面白いなと思った。

大地を照らす"太陽"という意味を持つ名の少女ソルと、手にはタトゥー、鼻にはピアスという見るからにな母。二人はドライブ中橋を通る時に目を瞑ってお互いお願いごとをしようということになり、母は「秘密」といいソルは「パパが死なないように」と願う。

この日は父の誕生日でパーティのため、ガンで療養している叔母たちが暮らす家に向かう。到着し真っ先に父と会おうとするも「今は休んでいるから」と会わせてもらえない。

叔母たちにとっては、可愛い弟だ。
一人は昨年亡くした母とは違い治療を続けようと提案する。しかし、もう一人の叔母は医師である父(ソラの祖父)の資産がつきそうだからもう難しいし、延命して苦しませずモルヒネで痛みを和らげようと言う。ただ彼女は単に冷たいとかではなく、いかにもインチキくさい魔術師を呼んでお祓いをしてもらっていた。

結局は、ソルの父本人の意思を聞こうという話になった。自分が彼と同じ立場なら何を思うだろうか。身体はみるみるやせ細り数歩歩くのも精一杯で、家族も気を病んでいく。自分は家族にとって負担でしかなく、かといって返せるものもない。自分であったら-

パーティが始まると、親戚に加え友人も集まり、20人規模の割と大きな会になった。子供の誕生日会ならまだしも、大の大人の誕生日にどうしてこんなに集まるのか。

ソルはパーティを抜け出し、寝室の父の元へ向かう。重い身体を起こし、父はソルとハグをし、彼女にプレゼントがあると言う。それは沢山の動物が描いてある絵だった。「絵の中で会えるように」と言った彼は、病気で苦しみながら、どんな想いでこの絵を描いてきたのだろうか。

パーティが終盤に差し掛かり、叔母はゴッホの糸杉を描いたケーキをソルの父に贈る。ロウソクの火を消す前に願いを聞かれた父は、「願いはない」と答える。
隣に座るソルは、これまでの愛らしさが嘘のように、冷たい、怒りや憎しみのような表情でじっーとこちらを見つめてきて映画は終わる。
ソルは、己の生を望まない父に失望したのだろうか。霊媒師の言う悪霊に取り憑かれたのだろうか。それとも世界の終わりを望んだのだろうか。

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