自分なんて…生きる価値、ない!

「なんでこんな人間になっちゃったんだろう……」
……暗い四畳半一間のぼろアパートで、ボクはうつむきながら、
そんなことを、ぼうっと考えていた。

いつもいつも
「男らしくしなきゃ!」「男らしい人間にならなきゃ!」

そんなことばっかり…心のどこかで意識してしていたような…
そんな高校生時代だった。

彼女と楽しくデートする時も、職場で仕事をする時も、いつもいつも意識的・無意識的に
「男らしい振る舞いをしなければ!」
って思っていたような気がする。

……社会人になってからも、そうだった。
いつも他人の目を気にしてて……
…当然のことながら、容姿には昔から自信がなかったし、
中学校では、学級日誌に「おまでダサい!」なんて、女子生徒にいたずら書きされたし…

そんな人間が、自己肯定感が高まるような成功体験など得られるわけがないから、
道端ですれ違いざまに、女子の集団がケラケラ笑っているだけで、
まるで自分の容姿を馬鹿にされているんだと、本気で感じたりもしてたし…。

だから、彼女ができても、希望の就職ができても、
心のどこかで「男らしさ」を意識してて……
きっと、男らしいって言われたかったんだと思う。
そう言われることで、自信が持てる、って思ってたんじゃないかな?

でも、ある日……
きっかけは、ほんの些細な出来事だった。

とても大切にしていた友人との、とっても重要な…だけどとても他愛ない小さな約束を果たすことができなかった……他人からみたら、「そんなことで?」って思うようんな、
本当に本当に、小さな小さな約束。

「自分は、なんでこんな小さな約束すら果たせないんだ???!!!」
「なんで、肝心なときに、“男らしく“勇気を出せないんだ!」

そうやって、自分自身を責める日々が始まった。

その当時は、収入も微々たるもので、食生活も貧相×貧相くらい、貧相だったから、
当然、精神状態もまともでなく、そんなマイナス思考に陥ることも茶飯事だったけど、
でもその時だけは、違っていた。

「自分なんて、生きる価値ない! 生きていても仕方がない」
「もう、生きるのはやめにしよう…」
そう思って、
「だったら、睡眠薬かな」
と考えたけど……、はたと、「睡眠薬、いくらだ?お金がないじゃん!」
「シねないじゃん!」

そう、この情けない自分自身と共に、今後も生きていくしかないのだ、と、
残酷なまでの現実を目の当たりにしてしまったんだ。

「どうしよう……どうやって生きていけばいいんだ…?」

あれこれと、絶望しながらも、与えられた環境と無限に存在する時間のなかで、クルクルと高速回転で打開策、突破口を探し続けた。
名案と呼べるようなアイデアも見つからず、ふと
「なんでこんな人間になっちゃったんだろう……」

くよくよしているうちに…
自分自身の幼少期のことを考え始めていた。

この時の、ボクの脳みそは、「なぜこんな人間に~?」
という「疑問」の言葉をインプットしてしまったことで、
自動的にその「理由・原因」を探し始めていた。

(…そう…人間の脳みそって、「言葉」が引き金となって、
その言葉の方向へ思考が飛んでいく……ほんとうにそうだった…)

数分なのか、数時間なのか…、それとも数日なのか?
どれだけの時間、その答えを探していたのかわからない。

でも、見つけた。その原因。
「あぁ、この時の、母親のこの言葉だったんだぁ~」

ボクが小4の時に母親に掛けられた、とっても短い言葉。
「あぁ、おまえもこんなに、男らしかったらねぇ~」

そう!
この時、子どもながらに大きく傷ついたんだ。
(男らしくないと、愛されないんだ!)

この言葉の通りに、言葉で表現したわけではないけれど、
子どもなりに、身体のどこかで強くそれを意識したことは確かだった。
言うなれば、
母親の「理想の息子」になろうと、努力をする人生
をスタートさせたんだ…きっと。

この大発見に気づくと、
なぜボクが、思春期にも、社会に出てからも、
「男らしく振舞わないといけない」
という規範に縛られていたのか?
も理解できるし、長い間感じていた「生きづらさ」みたいなものの原因も分かるし……
このあとは、なんだか…すべてがスッキリした、清々しい気持ちに満たされていった。

こうやって、
母親の一言「男らしかったら」が、その後のボクの人生を縛っていたことを発見したボクは、
いよいよ本来の自分自身を取り戻す旅を始めるのだけど……

この続きは、次回。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?