僕はお前が、すきゾ!(2)
何なんだ、このシュチュエーションは。
僕達三人は、テーブルの前で膝を抱えて座り、映画『タイタニック』を観ていた。
「このシーン、何度観ても感動しちゃいますよねー」
ジャックがローズを、船の帆先に立ち、背中から抱きしめて、夕日を浴びている名シーンだ。
(宏人の心の声)僕達の厚い友情を邪魔するこの女は、一体何者なんだ。僕と優作の間に割って入って。まーいいけどね。この女に僕達の友情の厚さには敵わない事を教えてくれよう。そうだ、この女に僕達の友情を見せつけてやろ、
と、その瞬間、僕のズボンに熱い液体が降り掛かった。
「アチッ、アッチィッ!」
僕はその熱さに思わず立ち上がった。
ごめんなさい!と、この性悪女(宏人のイメージ)は、慌ててハンカチを手に取った。
どうしたんだよ、と優作は言った。
優作~、この女が今、煎れたての熱いコーヒーを僕のズボンにぶっかけやがったんだ。
そんな僕の惨状をよそに、優作はこのビッチを気遣うように、目の前の女に駆け寄った。
「何やってんだよ、宏人!この馬鹿」
バカはどっちだー、この女がこの女が!
いきり立つ僕を放って、優作はこのアバズレにハンドタオルを差し出した。
「おい!おい!僕のズボンが先だろ!」
僕は詰め寄るように、優作に言った。
「は?そんなの自分で拭いとけよ」
と言って、優作は古賀バカ子に大丈夫だった?、ごめんね、と僕には一切見せた事の無い眼差しを向けて、僕に背中を向けた。
「おい!」
僕は更に語気を荒く優作に言った。が、優作はこの性悪悪女に夢中だった。
「お前、もう帰れよ!大体、何で来たんだよ!」
この男はーー!優作は既にこの女の術中にはまっている。
「もういいよ!帰ればいいんだろ帰れば!」
僕はコーヒーの染みをズボンの股間に残し、優作に背中を向けて、部屋を出て行こうとした。
「帰るからな!ホントに帰るからな!」
そんな事を言う僕の事など、骨抜き優作はガン無視気取って、知らん顔だ。
「じゃあな!」
僕はそんな捨て台詞を吐き捨てて、優作の部屋を後にした。