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僕はおまえが、すきゾ!(6)
僕と古賀朝子は、シネコンの広いフロアの背の高い丸テーブルの椅子に向かい合って座っていた。
「優作、どうして今日休んだんだろ」
彼女は僕の質問に、無言でテーブルに肘で頬杖を突いて、黙っていた。
「心配じゃないの?優作の事」と、僕は彼女を責め立てるように言った。
「松下さんには、松下さんの生活があるんだし、私には私の生活があるんです。それに私は松下さんの所有物でも何でも無いし」
僕はそれを聞いて、沸々と心の底からマグマのような熱いものが上がってくるのが分った。
こんな女に優作は渡せない。こんなの恋じゃない。自分のプライベートを削ってでも、一緒にいたいのが、恋愛っていうものじゃないのか?
「君、優作の事が好きなんじゃないの?」
彼女は、俯いて黙っていた。
「なあ!どうなんだよ!」
彼女は僕の顔を見て、こうきっぱりと言った。
「私は好きと束縛は違うものだって思います。はっきり言って武田さん、お節介です」
僕は頭に沸々と沸き上がる、何なのかも分からない感情を抑えきれず、席を立ち上がった。
「もう結構だ!」
僕はそのまま、彼女に背を向けて、歩いて行った。何なんだ、あの女は。優作が可哀そうじゃないか。
しかし、僕は彼女にどうしても何か言ってやりたくなって、早足で彼女の元へと、クルリと向きを変えて、向かって行った。
「君には優作を渡さない!」
彼女は驚いて、僕の顔を見ていた。
「君の優作への気持ちは、愛じゃない」
彼女は立ち上がって、僕をまるでカンカン照りの太陽の暑さのように怒鳴り付けるように言った。
「私、松下さんが好きだなんて一言も言ってないです」
僕の心のマグマは更に燃え上がった。
「じゃあ好きじゃないのかよ」
彼女は口をキュッと結んだ。
「そんな事、あなたに言う事じゃありません」
頭に血が上るとは、こういう事の事を言うのかと、しばらく熱が冷めるまで、僕は落ち着きを取り戻そうと黙っていた。
「君の今の言葉、優作に言いつけてやるからな」
僕は彼女に挑戦するように言った。
「どうしてあなたに松下さんと私の問題を、邪魔されなきゃいけないんですか?」
二人の言葉と気持ちは平行線を辿っていた。
僕は彼女を睨みつけると、踵を返してフロアを大股歩きで歩いて行った。
「あんな女、絶対に優作に合うような奴じゃないに決まってる」
僕は怒り心頭で、頭はショートして煙が出ていた。その僕の様子を見た通りがかりのお客が僕を避けて通っていくのも、僕には気にする余裕も無かった。