僕はおまえが、すきゾ!(5)
月曜日、優作は映画館のアルバイトで、僕は予備校が終わってから、優作のアルバイト先に出向いた。
映画館はシネコンと呼ばれる複合映画館で、
広いロビーの中央には、映画作品のグッズが置かれていた。
何か一言、奴に言ってやろうと思い、映画館に着くと、優作はどの売り場にもいなかった。代わりに古賀朝子が売店でポップコーンを売っていた。
僕はクルリと踵を返し、来た道を戻ろうとしたが、古賀朝子が僕を見つけるのが早かった。彼女はすぐさま僕の名前を馬鹿でかい声で呼びつけた。
「武田さーん!」
こんな場所で、そんな大声で僕の名前を呼ぶんじゃない!、そう思って、僕は古賀朝子のところにダッシュした。
「な、何ですか……?!。……(息絶え絶え)」
僕が肩で息をして、彼女の前でゼーハーゼーハーしているのにも関わらず、この女は、カラスの黒目のような目で、僕を不思議そうに見つめていた。
「どうしたんですか?松下さんですか?」
彼女は膝に両手をやって、屈みこんで立っている僕にそう言った。僕は呼吸をするのにせい一杯で、コクリと頷くだけだった。
「松下さん、今日はお休み取ってるみたいですよ」
「そ、そうなの?!」
僕は顔を上げ、そう答えた。何かあったのだろうか、何も奴からは聞いていないぞ?
彼女は尚も黒目がちになったつぶらな瞳で僕を見つめていた。
「君、優作と付き合ってんの?」
僕がそう言うと、古賀朝子は僕の屈んだ背中をバシバシと叩くと、大声+満面の笑みで
「そんな事無いですよ~!只の友達ですよ~」
屈託の無いその笑顔に、僕はイラつきを隠せなかった。その表情を読み取ったのか、彼女は僕に言った。
「武田さんは松下さんの事が好きなんですね」
彼女は優作の事が好きなんだなと、その時、僕は思った。