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吐息。

吐息は白く寒かった。僕は白い平原を走りに走った。走り過ぎて途中、足がもつれてそれでも走った。そして前のめりに白い平原に倒れ込んだ。
体が熱い。こんな経験初めてだ。僕はこの体の熱さに急に恥ずかしくなった。こんなに体が火照っているのは、躰が誰かを物凄く欲しているのだと思ったからだ。しかし、それは誰かはわからない。目に見えないところで、彼は彼女は僕の事を見守ってくれている。僕はそれだけで安心した気持ちになれる。
熱くなった躰は、白く積もった雪を溶かし、からだを冷やしてくれた。
もしかしたら、これが恋なのか・・、僕はそんな風に考えた。相手も見えない、相手の声も聴こえない、相手の事などまったく分からない、それなのにこんなにこの体を愛おしく思える。それが本当に恋と呼べるのだろうか。
僕にはまだ未経験の人を愛する気持ち。
誰かを好きになるとは、どういう心境だろうか。人が人を好きになるのに、理由は無くても欲求はある。相手に尽くす喜び、相手を支配する喜び、人によってそれは様々かも知れない。僕の欲求は何だろう。好きな彼女と一緒にベッドに潜って、一日中抱き合って眠っていたい。そうだ、その為には会社に欠勤の電話をいれなければいけない。溜まっていた有給をこの際、使ってしまおう。
ぼくは今まで勤勉過ぎた。有給を取って一週間ぐらい、彼女と部屋に閉じ籠ろうか。
籠城の前には、ドラッグストアに行って、必要な物は全部、買い揃えておこう。
僕は彼女が僕のアパ―トに訪れるのを、待つだけだ。多分、僕が部屋に籠城するのを、彼女はまたかと思いながら、買い物も全部済まして僕の家にやってくるだろう。
パーティーを始めたいのは、僕よりも彼女の方かも知れない。
二人だけの秘密のパーティ。
二人だけの時間。僕の誕生日。

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