僕はおまえが、すきゾ!(34)
「武田さん、来てたんですか?」
朝子はベッドの上に座りながら、優作に言った。
「ああ、何だか知らないけど、帰ったよ」
と優作は言った。
「そう言えば、今日、武田さん、油科さんと
デートじゃなかったです?」
「そうだね、あんまり楽しそうじゃなかった顔だったけど」
「そう……」
朝子のその言葉に、優作は朝子がどんなに宏人の事を考えているかを思った。
「古賀さんは……俺の事、好き?」
「好きですよ、もちろん」
そんな事を無邪気に言う朝子に、優作は苛立ちを覚えた。
「俺の何処が好き?」
優作は自分の事を本当に好きなのかどうか、疑問だった。だから、確かめてみたかった。
「うーん……」
優作は、じれったかった。朝子の考えている事が分からないのが、優作を不安にさせた。
「俺達、付き合ってるんだよね?」
優作は弱弱し気な声で朝子に尋ねた。
「私達、付き合ってるって言うんですかね?」
「だって!俺達あの夜」
朝子はそれを聞くと、急に黙ってしまった。
黄砂の流れるような沈黙になった。
優作は何か言わなきゃ、だけど、何も次の言葉が浮かばなかった。
二人の間に沈黙が走った。
「私、帰りますね」
朝子はベッドを立ち上がった
その背中を優作が、抱きしめた。
「え?」
「好きだ!俺、古賀さんの事が好きだ!」
優作はおもむろに朝子の唇にキスをした。
その時、僕は油科さんの家に向かってひたすら自転車のペダルを漕いでいた。
会って何を言おうというのだ、そう僕は思っていた。
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