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僕はおまえが、すきゾ!(31)

油科さんと次に会ったのは、緑地公園を散歩してあるいた時だった。僕は彼女よりも五歩先を歩き、彼女はその後ろを着いてきていた。
油科さんはこの前とは違って、口数少なく、僕の後を少し急ぎ足で歩いてきた。
「あの、武田さんは将来、どんな事をされようと思ってるんですか?」
彼女は僕の隣に追いついて、聞いた。
「あー、別に」
僕は他の事を考えていた。
古賀さんの事だった。優作にどんな手であの女が迫っていくのか、そればかりを考えていた。
油科さんは僕のそっけない態度にも、まるでめげるような様子も無く、着いてきて聞いた。
「武田さんと松下さんて、本当に仲がいいんですね?この前は喧嘩ばかりしてたけど」
僕は声を荒げて言った。
「仲いいよ!」
彼女はちょっとびっくりしていた。
「仲、いいよ」
僕はちょっと悪い事をしたなと思って、
同じ言葉を言い直した。
「武田さんは松下さんの事が好きなんですね」
油科さんは笑った。そして歩いた。
「武田さんは松下さんの事が好きなんだ」
彼女は嬉しそうだった。
僕も仕方なく歩き始めた。
「武田さん、今まで彼女とか出来た事なかったでしょ」
いとも簡単に油科さんは僕の秘密を暴いた。
グウの音も出なかった。
「な、何で分かるの?」
そう言うと、油科さんは笑って言った。
「だって、武田さん、ウブっぽいもん」
僕に、彼女はもう一度、笑って言った。
僕はトホホと笑って、僕と油科さんは今度は、並んで歩き始めた。
 
 
 
 

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