鬼が来る。
サイレンが鳴った。
毎夜の事ながら、僕はそのつんざくようなそのけたたましい音に、ビクビクし恐怖した。
鬼が来る。
鬼は、夜には目が見えない。
だが、昼間には太陽の日の光を浴びる事が出来ない。
鬼は毎夜、僕の町を徘徊した。
鋭く敏感な鬼の嗅覚は、僕らを探し、追い駆けて来る。
僕らは真夜中の街を徘徊した。
僕らは真夜中の街中をひたすら走った。
鬼が追って来る。
逃げなくては殺される。
皆、喰い殺される。
もうすぐ衙門様のお屋敷に着く。
そこまで行ければ、もう鬼は僕らに近づけない。
そこまで一気に走るのだ。
あと、10メートル・・・・あと50メートル。
僕らは門構えに向かって走った。
あれ?一人足りない。
僕らは5人いた筈だ。
いや、初めから四人だったのか?
僕は彼らの顔を一人一人、見回した。
鬼だ。鬼が僕らの中にいた。
クンクンと鼻を鳴らし、鬼は僕らの中に紛れて立っていた。
鬼は僕らを食い尽くした。
そして鬼は門をこじ開け、屋敷の中へ入っていった。