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僕はおまえが、すきゾ!(12)

これから話す二人の事を、僕が聞いたのは、
一晩明けた夜になっての事だった。シーンは昨晩の鳥貴族の帰り道の事。
優作と古賀さんは、あの夜、僕を見送った後、二人で夜道を歩いていたそうだ。
優作と古賀さんは、黙って外灯の明るい夜道を歩いていた。通りのコンビニでは、会社帰りの、一日仕事をしてクタクタになったスーツの若い男が、雑誌のコーナーで週刊少年ジャンプを立ち読みしていた。二人はコンビニを見て、コンビニの煌々とした白熱灯の灯りを受けていた。
優作は、何か言わなくちゃいけないちょっとした間を埋める為に、言った。
「何か小腹空かない?」
彼女も言葉を探していたようで、二人は目を合わすと、一緒にドッと笑った。
優作も古賀さんも腹いっぱいだったのだ。
「行こうか」
その声に古賀さんも頷き、二人は並んで歩いた。
無言の二人。夜風は生温かく、優作の掌は汗で湿っていた。優作は、その湿った掌を古賀さんに分からないように、着ていた七分丈のモスグリーンのシャツで拭うと、優作は古賀さんと手を繋ぐ機会を狙っていた。
並んで歩く優作と古賀さんの手の甲が僅かに何度か触れた。
優作は何食わぬ顔で、古賀さんの掌を握ろうとした。
と、優作の掌をスルリと抜けて、古賀さんは掌で額の汗を拭った。気まずい顔をした優作の、手を繋ぎたいという気持ちを表情から受け取ったのか、古賀さんと優作の目が合った。
「ごめんなさい、私、汗」
古賀さんは急いで自分の掌をほおずき色の水玉のブラウスシャツで拭うと、優作に向かってそう言って手を差し出した。
優作はさっき拭った掌の汗をもう一度、急いで拭くと、二人は手を握った。
優作と古賀さんは、手を繋ぎ見つめ合いながらそのまま道を歩いた。
優作の若い純粋な気持ちが僕には、素直に頷き喜ぶ事が出来なかった。
それから二人は街の夜に消えて行った。
僕の病状は、その日から徐々に悪くなっていった。


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