イメージの考察 建築と色と言葉
イメージは一瞬で感じ取られるものであり、体験は時間の経過で感じ取られるものである。ここでは住宅における什器と立面のイメージを視覚的に考察する。イメージとはモノの形、色、質感によって発想されるものである。美しい・寂しい・豪華な・閑静な ―空間というように形容詞・形容代名詞で表現される。一方で体験とは何らかの動作によって生じる感情の移ろいである。楽しい・悲しい・意外な・リッチな ―体験というように形容詞・形容代名詞で表現され、また 興奮した・失望した というように動詞でも表現される。そこに時間の経過が存在する。
モノの持つイメージとはなんだろう。建築においてモノは什器と住宅に大別される。そして住宅は平面・立面・断面に大別される。什器と住宅の立面は外側から物体を眺める点と一瞬でイメージが伝わる点において類似性がみられる。それらは形態、色、質感から構成され、さらに細分化された多くの要素が統合されてイメージを醸し出す。初めに什器について考察する。ある主室における配置を考えてみよう。まずは什器の在否によってイメージが変わる。存在すれば見る人に与えるイメージは形、色、質感によって様々である。存在しなければ、綺麗な・小ざっぱりとした・閑散としたといったイメージを与えるだろう。什器には机、椅子、間仕切りなどの名詞で表現できるものがある。これらは機能と具体的な形がセットになった概念である。これらは、机はかわいい、椅子はかっこいいとは表現されないことから、モノの形、色、質感によって発想されるイメージではないことが分かる。次に形を考察する。什器の形は様々であるが家具の形で一般的な直方体を取り上げると、角の丸みによって印象が変化する。丸みのあるものは柔らかい ―イメージを与え、直角であれば几帳面な・端正な ―イメージを与えるだろう。次に色を考察する。色は色相・彩度・明度の組合せであるが、色相は暖色・寒色のように 温かい・冷たい―イメージを与える。彩度はぼんやりした・ギラギラした ―イメージなどを与える。明度は明るい・暗い ―イメージなどを与える。質感は透明度、反射率(摩擦係数)によって生まれる。透明度は、かすんだ・綺麗な ―イメージなどを与える。反射率(摩擦係数)は、ざらざらした、ピカピカした ―イメージなどを与える。これらが統合されることでモノのイメージがつくられる。
立面は什器におけるイメージとほとんど同じように考えることができる。木材やコンクリートなどのマテリアルは一定のイメージを担保することができる。そのことによりファッション化されたモノを水無瀬の町家では壁の色、反射率を変えることにより批判した。それはイメージに頼らない建築であろうか。(イメージの点で考察するならば煌びやかな明るい建築)これはお施主には考えもしない答えだろう。イメージに固執し続けるのであればお施主には災難である。(銀塗りの壁を好きになってしまえば、話は別であるが。)住まうことでイメージから解放され、お施主がより精神的に高度な次元に到達するのであれば、それは面白いのかもしれない。
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