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身体の言い分

アマプラの恋愛リアリティ番組「ラブトランジット2」がおもしろい。

いつだって主人公でいたいんだよね、と叩かれる出演者を見て、その批判に同調しつつも心が痛くなる。自分だってそうだ。いつだって、主人公でいたい。

6月の終わりに下北の古本屋で、「火口のふたり」という本を買った。

たしか映画化されていたよな、恋愛ものを読みたい気分だな、なんていう軽い気持ちで手に取った。

傲慢と善良を読み終わって、次に読む本はこれにしようと思って持ち歩いていたけど、しばらくの間、鞄の底で眠っていた。

今日は日曜日だけど仕事があって、すきま時間で、夢中でページをめくっていたら、あと少しで読み終わる!っていうところで仕事が終わってしまった。

このまま帰るのはもったいないような気がして、最寄り駅周辺の気になっていた鶏料理屋にふらっと入ってみる。

チキンを食らいながら、無心で読み切った。

率直に、よかった。

夢みたいに楽しかった!
って言葉、すてきだよね。

私は今、好きな人と過ごす日々が、夢みたいに楽しい。
でも、先のことも過去のことも忘れてしまいたくて、溺れている気がしてならない。
「いまだけ」だからこそ大胆に、身体の言い分を聞いているような気がしてならない。
それが、夢みたいに楽しい。

夢はいずれ醒めるものだということ。
同時に叶えるものでもあるということ。
私が今見ているのは、一体どちらの夢なのか。両方なのか、どちらでもないのか。

一緒にいる時間が増えて、ぶつかることもたまにある。
仲直りの方法が、確立されるようになれば、ぶつかることも怖くなくなる。
私はいつだって自分に正直でいたいし、同じように相手にも我慢してほしくない。

会いたいけど、会わない日もあっていい。
会えるけど、会わない夜が、あっていいと思うのだ。
夢からずっとずっと、醒めないために。

鶏ランチを食べ終えて、いつもと違う道で、家に帰ることにする。
小雨がぱらついていたけど、あえて傘はささなかった。
濡れてもいいと思えるくらいに気分がよかった。

家について、エアコンをつけて、少し部屋が涼しくなってきたから、ギターの練習でもしようと思ったら、爪が伸びていて思うように弦を押さえられない。爪を切って、やすりで整えた。

少し前まで、ずっと、3年くらいずっと、ジェルネイルをしていた。元々コンプレックスだった短い爪を補強して、伸ばして、綺麗になった自分の爪がちょっと好きになっていた。

1カ月とちょっと前、ギターを買って、そして爪を短くした。

すぐに伸びるから、ジェルネイルもやめた。

短くなった爪を見ても、もう惨めにはならなかった。

「火口のふたり」を映画でも見ようと思ってNETFLIXを立ち上げる。
柄本佑が主人公なことは知っていたけど、直子があまりにもイメージと違った。

小説は当たり前に超えない。
自分の頭の中で作り上げた画は、もっとずっときれいだった。

久しぶりに、煙草を吸ってみる。

大きく息を吸い込むと、くらっとして、いい気分になる。
3分くらいかけて、一本を吸い終えると、口の中の混沌と、指先の臭いに耐えられなくなった。
洗面台下の収納から、香料の強いハンドソープを取り出して使ってみる。
匂いがきつくて、しまい込んだものだったけど、今はその煙草の鬱陶しい臭いを上書きしてくれる唯一のものとして、役立ってくれた。
歯磨きもしよう。
食後でもない、おかしな時間にする歯磨きは、楽しくて気持ちいい。

すっきりした。
煙草を吸う度に思う。
なんでわざわざ身体を汚してしまうんだろう。

雷の音がする。

家の中で聞く雷雨の響きは、とても心地が良い。

明日からまた一週間始まる。

9月が、区切りの月になりますように。

なりますように、じゃない。自分の手で、そうするんだ。

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