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なんだか電車のトラブルが多い理由の件

▼新しいかたちの鉄道事故が起きた。「無人運転の逆走」である。2019年6月2日配信の朝日新聞デジタルから。

〈シーサイドライン25m逆走し衝突、14人重軽傷 横浜〉

〈1日午後8時15分ごろ、横浜市南部を走る無人運転の新交通システム「シーサイドライン」新杉田駅(同市磯子区)で、列車が進行方向とは逆に走り出して、車止めに衝突した。神奈川県警によると、14人がけがをし、そのうち6人が骨折などの重傷。命に別条はないという。

 運営会社の横浜シーサイドラインによると、列車は新杉田発並木中央行きで、5両編成。乗客は50人以上いたとみられ、始発駅の新杉田駅でドアが閉まった後に逆走した。県警によると、本来の停車位置から約25メートル逆走したという。〉

▼原因は、自動運転を制御する回路が断線したそうだ。

▼もう一つ、横浜の地下鉄が脱線した。

〈横浜市営地下鉄、脱線し40メートル走行 けが人なし〉
毎日新聞2019年6月6日

〈6日午前5時20分ごろ、横浜市営地下鉄ブルーライン湘南台駅発あざみ野駅行きの始発列車(6両編成)が、同市泉区の下飯田駅を発車して約150メートルの地点で脱線し、さらに約40メートル走行して停止した。神奈川県警泉署によると、乗客約130人にけがはなかった。〉

▼原因は物の置忘れだったそうだ。

〈脱線原因は装置乗り上げ、横浜 市営地下鉄事故/共同通信2019年6月6日〉

〈横浜市営地下鉄の脱線事故で、現場を調査した運輸安全委員会の村田和三・鉄道事故調査官は6日、線路上から撤去し忘れた装置に乗り上げたことが原因と明らかにした。市も同様の見方を示していた。装置は線路保守の作業車を本線に移動させるための「横取り装置」で、同日未明の点検で作業員が残したままにしていた。

 関東運輸局は同日、横浜市交通局の土屋雄二安全統括管理者に原因究明と再発防止を求める文書を手渡し、厳重注意。土屋氏は報道陣に「職員全員がこの事故を重く受け止め、再発防止に取り組んでいく」と話した。〉

▼電車のトラブルについて、そういえば、と思い出した記事を紹介しておこう。2017年11月16日付の日本経済新聞。

〈鉄道トラブル 多発困った/停電や架線障害、電気系で増加/現場の人材難、遠因か〉(石塚史人、原欣宏)

〈鉄道トラブルに異変が起きている。運転見合わせや遅延の原因は「人身事故」「大雨・強風」と相場が決まっていたが、最近は「停電」や「架線障害」など電気系のトラブルが増えている。

15日も東急田園都市線で架線トラブルによる停電が起き、渋谷ーー二子玉川間で約4時間半、上下線の運行が止まった。鉄道現場に何が起きているのか。〉

▼トラブルの責任は電鉄会社にあるわけだが、この記事は「遠因」を挙げている。それは「現場の人材難」だ。

〈電鉄会社は就職先として人気があるが、点検や工事を実際に担う電気設備会社は重労働とのイメージが強く、若い人材が集まらない〉そうなのだ。

▼もう一つ、〈現場の作業を仕切っていた年長者が定年退職で大量に引退している。人員構成に崖(がけ)ができて技術伝承が滞(とどこお)り、初歩的なミスが多発する構図だ。〉

人員構成に「崖」ができる、と表現するんですね。知らなかった。

▼さらに、〈若者の意欲不足〉もあるという。

〈北関東にある専業会社の総務担当者は「従来なら資格試験に合格して管理職を目指すのが当たり前だったが、今は試験を受けようとすらしない人が増えている」とこぼす。

 変電所の点検業務を主管するのに必要な国家資格に「1級電気工事施工管理技士」があるが、合格者数は低迷中だ。試験を実施している建設業振興基金によると、合格者数が最も多かったのは1998年度の1万3008人。その後は減少傾向が続き、2016年度は7336人。ピークから4割減だ。〉

▼「現場の人材難」「ベテランの引退」「若者の意欲不足」。この三つは、多くの業界で悩みの種になっている、すでに見慣れた言葉だ。

この記事のラストは、〈あらゆるモノがネットにつながる「IOT」や人工知能(AI)など、人材に頼らない方法もフル活用する時期にきている〉とまとめている。

無人運転が逆走する、という信じられない事故を防ぐのにも、人材に頼る方法と、人材に頼らない方法と、両方あると思う。苦しい試行錯誤が続くのだろう。

公共のインフラにありがちな過剰なアナウンスをはじめ、諸々の過剰サービスをやめるのも、働き手のストレスを減らすためには有効だと思う。

電車は、動いてくれるだけでありがたいものだ。

(2019年6月21日)

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