連続殺人犯はどんな人生を歩み、産まれる?~川崎殺傷事件+70人の連続殺人犯から学ぶ壮絶な真実~
連続殺人犯は生まれながらにして連続殺人犯でしょうか?
この問いは発達心理学においては一部正しく、一部間違いと考えられています。
連続殺人犯は一体どんな人生を歩み、どんな経験をもって連続殺人犯となるのでしょうか。
この記事では、直近で起きた残虐な事件を振り返り、連続殺人犯の生涯と過去の行動を学びます。発達心理学を用いて分析し、
『どのように連続殺人犯が生まれるのか』
『連続殺人の犠牲者にならないよう、私たちがとるべき行動』
について考えます。
今回の記事は、
・教育者
・お子さんを持つ親御さん
・子供と深くかかわる人
には"必見"の内容です。連続殺人犯の人格形成には幼少期の体験が非常に強くかかわっているからです。私たちが連続殺人犯を産みだす事が絶対にないよう、『誰かが知っておくべき』内容です。是非ご覧ください。
川崎殺傷事件を振り返る。『容疑者は幼少期から奇人・変人だったのか?』
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190531/k10011935561000.html
2019年5月28日、川崎市多摩区の路上でスクールバスを待っていた小学生や大人、合わせて19人が次々と包丁で刺されるなどして、いずれも都内に住む小学6年生の栗林華子さん(11)と、外務省職員の小山智史さん(39)が死亡し、17人が重軽傷を負いました。
本事件は本人が自殺した為、正確な動機はわかりません。
https://www.sankei.com/affairs/news/190530/afr1905300063-n1.html
こちらにもある通り、岩崎容疑者はスマートフォンやPCなどの電子通信機器を所持しておらず、世間と断絶した生活を長時間続けていたと考えられています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190530/k10011934551000.html?utm_int=detail_contents_news-related_001
↑に小学~中学の岩崎容疑者の様子が報道されています。
4年生の時に『しっぱいをした人のことをわらったりしました』
5年生の時に『同級生に石をぶつけて、5年になって最初に怒られた』
6年生の時に『とおりかかった人にわるぐちをいってにげたりしました。』
と、反省を綴っています。
幼少期から暴力行動の多い人だったと端的にまとめること"も"できます。
しかし、”彼はただただ孤独だったのではないか?”
そして、"自分の力を誇示する方法を殺人という手段しか持たなかったのではないか?”
そう私は考えています。
コミュニケーションの取り方が分からない一方で、人との関わりを求め、人を傷つけてしまう。これってよくあることじゃないですか?
おそらく私たちの多くが思春期~青年期に経験して、卒業していくこと。でも、その機会がなかったとしたら・・・?
殺人は絶対にやってはいけない事件です。今回の岩崎容疑者の行動は決して許されるものではありません。ですが、それは私たちとは全く無関係ですか?私たちが同じ行動をしてしまう可能性は0%ですか?それは間違いだと思います。
孤独を抱えているという点においては、部分的には共感できる部分もあります。私たちや大切な家族が犯罪者にならぬよう、私たちは知る必要があります。社会的にそういった人をフォローしていくことで、今回の事件のような痛ましい事件が1件でも減り、被害者が一人でも少なくなれば・・・
以降の章では最新の心理学研究から、犯罪者の人格を作り上げる要因について調べていきます。
川崎殺傷事件を考察するために、最新の心理学研究を参照する。
私がいくら思いを綴ったところで、連続殺人犯の本当の心境はわかりません。
また、連続殺人犯の心境は、通常の法廷・報道でもわかりません。法廷という場では自分の未来が左右される為、自分のメリットとなる発言をする可能性が高く、真実を語る可能性は残念ながら低いでしょう。また、報道では記者や製作者の意図により情報が歪んでしまう可能性が高く、それだけを事実と考えるのには無理があるからです。
では、何を道しるべにするべきでしょう。
私は科学や統計こそ客観的に事実を解明する一番の方法と信じているので、この手段を用いて検証します。
世界中の研究を探索したところ、
『70人の連続殺人犯が歩んできた人生のうち、普通の人と異なる点はどこなのか?』
について調べたトロント大学の研究を見つけることが出来ました。2019年に公表された最新の研究です。(Reid, Sasha, et al.(2019))
この研究は、私が見たことのある心理学研究の中でも非常に特異なものでした。
研究チームは健康な成人と、連続殺人犯の違いを明らかにするために、70人の連続殺人により投獄された人たちに向き合い、幼少期、小児期、青年期、早期成人期、中年期に連続殺人犯が経験する顕著な人生経験を徹底的に調べました。日記、インタビュー、尋問情報、日記、自伝などあらゆる方法でデータベースを作成し、まとめるのに1年かけてある結論を導き出しました。
連続殺人犯は精神的に問題を抱えていることがほとんどであり、話を聴いていくのは本当に骨が折れる仕事でしょう。そもそも、連続殺人犯を70人集めること自体、非常に困難な仕事です。
したがってこの研究は、個人の考察とは一線を画す『真実に迫る研究』の一つとなりうると考えました。
以降の章では、各ライフステージにおいて連続殺人犯が経験したイベントを記していきます。
以下、ところどころ『○○氏によると』という表現を用いていきます。これは、連続殺人犯たちへ徹底的なインタビューを行った結果得た、本人のその時の素直な気持ちについて、なるべく簡単な言葉で訳したものです。
生々しく、痛烈なコメントばかりですが、逆にリアルな言葉だと私は感じています。したがって、できるだけそのまま載せていきますのでご覧ください。
A.産まれる前~出生まで
A.1. 薬物・アルコール
連続殺人犯の父親:
30%が薬物依存。処方薬やコカインなど含むと33%母親:23%が薬物依存。16%がアルコール依存症。
これらの薬物は親から子供に移動していくので、脳発達に影響を及ぼすことが研究により明らかになっています。研究者たちは反社会性パーソナリティ障害を形成する原因のひとつだと考えています。
A.2 暴力
妊娠中のDVを親が連続殺人の受けていた確率
:26%
*全国平均が16~20%とされている為、連続殺人犯の親がDVを受けている確率は高い。
親がDVを受けると、ストレス反応システムという経路によりホルモンバランス異常が起こります。これにより、子供の脳の発達障害が起こり、子供のストレス対処プログラムに異常をきたすことが分かっています。妊娠時のストレス反応システムが子供に及ぼす影響は、一生であると言われています。連続殺人犯が稚拙な問題対処能力しか持たない最初の原因の一つと言えます。
父親のストレスも子供に影響を与えます。今回の調査では、連続殺人犯の父親の1/4が軍隊か警察などの法執行機関に勤務しており、大きなストレスにより父親にはアルコール依存症、うつ、睡眠障害、攻撃性が確認されました。
A.3 遺伝
連続殺人犯の
血縁者:9%が殺人犯
父親:11%が収監歴あり
(そのうち71%は暴力的な罪)
母親:9%が収監歴あり
産まれるまでのまとめ
産まれる前の要因ですから、親の薬物、暴力、遺伝といった原因は本人には全く責任はありません。最近は麻薬合法化の雰囲気なども若干感じますが、薬物依存の親を持つ子供が産まれ、それが子供にとっても、周りの人にとっても不幸をもたらすリスクもあるということは適切に情報提供されるべきです。
B.幼少期(3~8歳)
人間の脳は生まれた時にすべての哺乳類の中で最も未成熟ですが、生まれてから10代まで爆発的に成長し、体積は4倍にもなります。
なぜこんなことを書いたかというと、この時期の脳が外部環境の影響を受けて成長するため、その環境が悪いものではないことが、健康に成長していくためには非常に重要だからです。
温かい・責任感のある・配慮のある子育てを受けた子供たちは、大人との安全な関係の築き方、対処方法を学ぶことが出来ます。
しかし、虐待・トラウマ・剥奪といった環境で子供が育った時、脳の重要な回路が上手に形成されなかったり、誤配線される可能性が指摘されています。(Tierney,2009)
B.1 虐待
連続殺人犯の63%が虐待の被害者でした。
そのうち73%が心理的虐待を受けています。
例えば、虐待の例としてヘンリー氏いわく、
『私が一番最初に思い出せる思い出は、母親に女の子の服を着せられていて、
女の子のような髪型をして2~3年過ごしました。
そしてその後、家族の犬のように扱われました。』
このような行為は、彼らの支配されている感覚や、無力感を高めていきます。
B.2 ドメスティックバイオレンス(DV)
連続殺人犯の34%がDVを受けた経験がありました。
例えば、
『私の父親はたくさん飲んだ。
そしてたくさん飲んだ時は母親と私を虐待した』
『父親は半身不随だったが、
母親はそれを絶えず酷く侮辱していた。
母親は他の男性との性行為を
父親に見せつけていた。
父親はそれを見て酒を飲み、雪の中に横たわり、
肺炎と低体温症で死んだ。』
壮絶です。。。
一つ覚えてほしいことは、これらの虐待を受けたら正常な成人になれないというわけではありません。ただし、子供に消えない深刻な印を残し、健康的な成長を妨げることは間違いありません。
B.3 親の不在、育児放棄
連続殺人犯の56%が
少なくとも一人の親が不在でした。
彼らが親に見捨てられた平均年齢はわずか2歳でした。
親が不在でいることは、彼らをイラつかせ、ぐらつかせ、不十分なものに感じさせました。彼らの85%は、自分が生まれたことは望まれたことではない事を知っていました。
『私は父親の2番目の妻を怒らせたので、
父親はわたしを避けるようになり、
彼の2番目の家族に尽くすようになりました。』
研究者Rotherらによると、存在を否定された子供は自尊心と感覚に大きな障害を持ち、より攻撃的になります。Brookらは、非行や薬物乱用へ手を染める可能性が高くなるという研究を行いました。
B.4 母親との良好でない関係
連続殺人犯の35%は母親には権威があり、支配的だと説明していた。
母親が権力を行使し、子供を支配しようとする心理的虐待を行っているとき、子供は孤独、絶望、自尊心の低下を示すことが明らかになっています。
例えば、ヘンリー氏は
『家から離れる為だけに
非行に走っていたことに気付いた。
家から出る為に盗みや他のことをした。』
ハーバース氏は、
『彼女から逃げることはできない。
私はまだ彼女の呪縛から逃れられていない。
私は彼女のパペット人形で、私は彼女を楽しませる。
彼女はわたしのボタンをすべて知っていて、
私はその痛みで人形のように踊る。』
この関係を持つ母親と子供の間では、
”死”は子どもにとって、母親の支配と呪縛から逃れる唯一の方法であると認識されているのかもしれません。
子どもは親から逃げたくてしょうがないのにも関わらず、7~8歳では自分で生きることは不可能であり、どうしようもない現実により絶望感、無力感が形成されてしまいます。
一方、虐待を受けていたバンディ氏によると、
『私の母のイメージは、ええと、
病的で、怒りっぽく、とても悲しい女性でした。
私は母を憎んでいましたが、
それでも私は母を愛したいと思いました。』
連続殺人犯は虐待されたのにも関わらず、母親との感情的なつながりを持ちたいという願望を持っていたというのが、研究のなかでも最も重要なテーマの一つでした。
C.思春期前期(9~15歳)
もし親から虐待や拒絶を感じていたとしても、
9~15歳の時にクラスメイトに受け入れられていた子供たちは、そうでない子供よりも非行をすることが少ないことが分かっています。
C.1 孤独
連続殺人犯の71%は中学生の時に孤立していました。
90%が子供のころの社会的な孤立を感じていました。
アーサー氏はこう述べています。
『若いころの社会的な関係が全くなかったので、
架空の友達を作りました。
誰も私の事を好きだと思っていませんでした。』
アラン氏はこう述べています。
『家族の社会的な地位が低く、
友達を作ることが恥ずかしかった。
でも、私は年齢の近い人から話を聞くことが
本当に嬉しかった。』
9~15歳では、認知、言語、社会的スキルを司る神経細胞が大きく発達します。この間、適切なコミュニケーションがとれていない場合は、洞察力、共感能力、道徳などのスキルの成長が大幅に抑えられてしまうことが示されています。
C.2 不適応障害
自分自身を表現できる安全な場所がなかった彼らは、自分の殻に引きこもり孤立するようになりました。自分自身を守るために自分で殻に閉じこもるしかなかったと、研究対象のジョエル氏は述べています。
辛いことがあった時の対処方法は、連続殺人犯の90%が逃避=逃げることでした。それ以外の対処方法を持っていないことが多かったのです。
C.3. 逃避
逃避はストレスから逃れ、問題を回避するために内側に引きこもり、回避する方法です。積極的な問題解決を行うのではなく、あくまで受動的な対処法です。
連続殺人犯の多くは子どものころ、寒い場所や狭い部屋から抜け出して、長い時間森の中をさまよったりして逃げようとしましたが、年齢を重ねるごとに逃避スタイルは変化しました。
13歳までに連続殺人犯の30%は
慢性的な薬物使用に手を染めました。
2013年の研究によると、
アルコール(16%)、マリファナ(8%)、吸入ドラッグ(5%)、固形ドラッグ(3%)
同年代の一般的な使用率を明らかに上回る割合で使用していました。
目的は至ってシンプル。『苦痛から一時的にでも逃れる為』でした。薬物乱用の他に、連続殺人犯の64%が暴力的な遊びを好みました。
例えば、エドモンド氏は
12歳の時、姉とガス室で遊びました。
「姉がエドモンド氏を椅子に拘束し、
ゆっくりとガスを放出する偽の装置のボタンを押すという遊び」
デニス氏は少年期に「猫を溺死させて」遊びました。
暴力的な遊びは、彼らにとって自分の力を誇示し、無力感を減少させるチャンスでした。
C.4.死の概念化
暴力的な遊びから進化して、連続殺人犯はさらに具体的な『死』を好むようになります。彼らは、死の過程にとても強い興味を持ちます。死が最終的なものだと理解することが出来るようになりますが、感情的な動揺はありません。
死とは
・自分自身の否定感を取り除く行為
・知的好奇心を満たす行為
・個人的な目標を達成する行為
・自分の力を誇示する行為
・所有権を満たす行為
と認識されるようになっていきます。
C.5. 性的妄想
暴力的な空想に加えて、
連続殺人犯27%は
性的に逸脱した妄想を企てるようになりました。
18歳になるまでには57%になりました。
性的妄想とは、子どものポルノの写真の収集、近親相姦、性的暴力を含む日記の作成(獣姦、パートナーの拷問を含む)を言います。
性的妄想は喜びを感じる為でなく、自分が全知全能の神になったのかのように感じさせる自己陶酔感を高めます。それによって、自分自身の無力感や身体的虚弱、虚弱的現実を否定することが出来ます。
D.思春期後期(16~19歳)
この頃になると、連続殺人犯は犠牲者への共感能力を欠くことが顕著にみられてきます。彼らが引き起こす痛みを認知することはできるかもしれませんが、感情的に自分のものとして捉えることはできない為、他人事でしかありません。
社会的な出来事に対する対処法も、以前から取得している逃避スタイルしか持ちません。だいたいこの逃避のスキルは普通の人が持ち合わせる問題解決法と違い、問題を解決する能力を持たない為、自分をストレスから回復させるシステムとしては機能不全を起こしていると言える状態です。
しかし、生まれながらにこういった性質を持つわけではなく、いじめられ、孤立し、拒絶され、虐待され、内向的に自立を果たそうとした為形成された性質であるということを理解することが重要です。
彼らは事実として性と暴力の妄想を中心に展開し、自己を慰めます。それは、彼らが日常生活で感じる強いストレスには、普通の子供のような日々では逃れることが出来ないものであり、物足りないものだからです。彼らは性と暴力のような強い感情でしか自らの苦痛を和らげることが出来ないのです。薬物中毒者が薬物に慣れていくように、彼らは性と暴力に慣れていきます。
D.1. 反社会的行動
連続殺人犯は18歳に至るまでに
58%が反社会的行動を起こし、
21%は少年収容施設で過ごした経験がありました。
35%は精神科のカウンセリングを受けた経験を持ち、
薬物乱用、妄想的思考または精神病、うつ病、不安障害、愛着障害、強迫性神経障害などの診断を受けました。
多くの人は2重で病名を付けられていました。
これらの診断は、親や裁判所により強制的に病院に行くことになったものだけが受けた診断です。残りのほとんどは、そもそも親に放棄されていたので、わざわざ病院へ行くこともありませんでした。
反社会的行動の多くは、情報処理や共感、衝動制御、感情規制のような高度なスキルが欠如し、そもそも社会的に有効に対処する能力を持ちえない彼らが、未熟な対応をしてしまった結果と言えます。
E.青年期(20~30代)
これまでの辛く哀れなライフステージのなかで、連続殺人犯たちはストレスに過敏で、認知・道徳的に健康的な対処方法を持たず、脅威に敏感に反応する人格を形成します。したがって、青年期に非常に苦労しています。
人間関係や仕事はしばしば失われ、個人的な失敗の感覚が彼らの日常生活を埋め尽くします。彼らは、その失敗を取り除くために使える唯一のスキル、逃避スキルを発揮します。つまり、犯罪行為と、暴力や性行為を伴う妄想にどっぷりとつかっていきます。
E.1.他者との関係性
連続殺人犯の46%は独身でしたが、
33%は結婚しています。
21%は最低1回以上結婚経験がありますが、
離婚を経験しています。
離婚経験者の80%は複数回結婚しています。
彼らの多くが自ら目撃したように、10%が家族に慢性的なDVを行いました。最初に家族を虐待し始めた平均年齢は26歳でした。
E.2.精神的異常
連続殺人犯の精神医学的記録を調べると、
30%が18歳以上のとき精神科のケアを受けていました。大半は18-22歳の間に治療を受けました。
多くは薬物乱用、妄想志向、精神病、異常性愛、極端な劣等感などを複数診断受けていました。
例えば薬物乱用の比は健康な人達の5倍も多かったのです。
E.3 犯罪歴の更新
連続殺人犯の87%が
少なくとも1つの刑事有罪判決を受けました。
74%は複数回逮捕、51%は3回以上、48%が4回以上の有罪判決を受けました。
27%は性犯罪者として登録されていました。
最初の逮捕では犯した犯罪の割合は、
盗難または強盗>女性への暴力>売春>虐待>性的暴行、レイプ未遂
でしたが、複数回の逮捕を重ねるごとに犯罪のレベルがエスカレートしていきました。
①:盗み→武器による暴行+強盗、誘拐
②:破壊→放火
③:暴行→殺人未遂
F.犯罪者(~30歳+α)
連続殺人犯が最初に1つ目の殺人事件を起こした時の平均年齢は30歳でした。
長い”軽”犯罪歴を超え、『殺人』を起こすようになるまでには長い時間がかかります。
何十年にわたる虐待、孤立、対処されない心理的ストレス。これらを自らの力で処理することがもうできなくなり、自分の苦しみを和らげる唯一の方法として解決する手段。それが殺人です。
F.1. 衝動
連続殺人犯は、殺人は、自分の中の自分によって強制的に突き動かされた結果と考えていました。
ラムサンド氏いわく、
『・・・それは大胆でした。。。
この渇望、おぞましい怒り、食感。
この素晴らしい情熱はわたしの中から沸き上がり、
ええと、、、私を圧倒しました。
それは薬に似ていました。。。』
彼らの多くは興味深いことに自らの欲求を擬人化的に特徴付けしました。
例えば、「病気」「自分の中の他人」「自分の捕食者」「私の悪人」
それは自分の責任を放棄する手段であるようにも思えますが、研究者は罪悪感を拭う欲求以上のものを明らかにしています。
彼らの多くは二面性を持ちました。これは二重人格ということではありません。
『善人』とは目に見え、実践され、リハーサルされ、部外者に伝えられる顔。
『悪人』とは個人と犠牲者にのみ見せる顔です。
どちらも数十年の強度のストレスに渡り形成されたアイデンティティです。
別の人格として認識されるのではなく、あくまで自分の中の一部であることを彼らは認識しています。これが二重人格とは異なるところです。
それでも、完全な制御下にあるとはいえず、部分的に制御できないこともあるというのが特徴です。この『悪い人』が囁いたときに殺人を犯します。
ジェスパーソン氏いわく、
『私は悪人の助手席に乗ったような気分だ。
私と一緒に乗る男は邪悪な行いをするので、
私は彼を制御しようとしますが、
時々、彼はわたしを唯一の方法で守ってくれます。』
F2. 自分を修復するための心理的手段
連続殺人犯たちは殺人について、彼らの心理的ストレスや不快感を和らげる方法の一つと説明しました。
エドモンド氏いわく、
『私は、問題を上手くまとめる為に、
自分で物事(殺人)をやっているだけです。』
各殺人犯たちの背景は異なっていましたが、これは殺人犯たちにとって一般的なことでした。
殺人が彼らにとって自分を落ち着かせる為の行為であることは
リチャード氏の以下の発言によっても推測されます。
『(殺人の)直前、私は別のゾーンに入ります。
自己催眠術のようでした。または禅のような状態。
私はどんどん落ち着いていきました。』
緊張を伴う行動、緊張の破壊という言葉がよく当てはまると研究チームは述べています。まぎれもなく、殺人は彼らを落ち着かせるツールの一つでした。
F3. 修復の心理手段の必要性
連続殺人の動機を振り返ってみると、連続殺人犯たちは、子ども時代の不安、権力の欠如、支配力の欠如の経験と、不快な感情、思考を挙げていました。
エドモンド氏いわく、
『私が折り畳みナイフを抜こうとしたときに、
カチッと音がしてロックされました。
被害者の女性は、「それはなに?」と言いました。
ちょっとおかしいことがあったのかな?
という雰囲気でしたが、
私はその時、なぜ彼女がそう言ったのか
理解できませんでした。
冷静に考えれば、それが2人の関係に
大きな影響を及ぼすことでなかった事は
明らかでした。
それまで殺しをしようとは
思っていなかったのですが、
それをきっかけに、
私は彼女を縛り上げ、手錠をかけ、
背中と横腹と腹を刺しました。
私は彼女を傷つけようと思ったわけではなく、
ただ、黙らせようと思っただけなのです。』
研究チームはエドモンドが、過去受けた母親からの虐待に対する抵抗を、代わりに被害女性に行ったのだと結論付けています。つまり、子供のころなにも抵抗できなかった最悪の経験を、被害者に代理としてやり返すことで、苦しみから解放されようとしたということです。
本当に殺したがっていたのは、
彼の母親の事だったのに、人間関係を築くことのできない彼は、愛すべき者を殺しました。
後にエドモンド氏はこう述べています。
『生きているとき被害者たちは、
わたしとは何もシェアしていませんでした。
遠くにいたのです。
関係を確立しようとしましたが、
関係はありませんでした。
彼らを私のものにすることができる
たった一つの方法。
それが殺しでした。』
彼にとって殺人こそが究極の支配形態だったのです。殺人は、圧倒的な精神的ストレスから彼を開放するだけでなく、彼の母親を超え、彼の力を確認する為に大切な行動でした。
まとめ
連続殺人犯が作り上げられる環境は壮絶です。
70人の連続殺人犯たちを追跡調査した結果分かった結論は、殺人とは彼らが『深く孤立した孤独な人生の物語の最後の最後の行動』であるということです。
その原因は幼少期からさかのぼって複雑に絡み合ったメカニズムであり、苦痛としか表現できない経験の積み重ねによって説明できるかもしれません。
彼らは生まれた時から病的な連続殺人犯ではないのです。あまりにも劣悪な環境に触れ続けた結果、環境に全く適応できない出来事の連続により生み出された哀れな存在ともいえます。
川崎殺傷事件の容疑者、岩崎容疑者を含め、彼らが行ったことは絶対に肯定できません。
しかし、第2の岩崎容疑者を生み出さないようにするためには社会的なフォローが絶対的に必要です。産まれた時に劣悪な環境に置かれたとしても、自分の信頼できるコミュニティに身を置くことが出来た人は、彼らのようにはなりません。自分の居場所とはこれほどまでに重要であることを再認識する必要があります。
手を差し伸べる、勇気を。
そして、知識を広めてください!!
引用
Reid, Sasha, et al. "The Perfect Storm: Mapping the Life Course Trajectories of Serial Killers." International Journal of Offender Therapy and Comparative Criminology (2019)