イッカクジュウと四十夜の逢瀬
うつくしい角をなでて怪我をしたかった、そうしてその舌で傷口をなめられて、ふたりおだやかに眠りたかった、そのうちにきみを裏切って、その角で腹をやぶられて、どろどろと濁るこの水を、タイナイのこの水を、いやしてもらって、ほほえんで、しんでしまいたかった。
海は澄んでいたのでしょうか、そればかりを思うのです、あらくれたその波がただ澄んだ嘆きでできていて、ひとの撒いた毒など、溶けていなかったのならいいなと、あなたのほねをおもうのです、よりそう、鳥の、鳴き声をまねて。
泳げない身体のなかには水がたくさんたくさんあって、息のしにくい場所ではすぐに溺れてしまいそうになる。
つよく、つよくあること、欲望を愛して飼い慣らす方法の載っていない教科書、ちいさく破ってかたちを整えて、たばこのかわりに火をつけて、吸って、燃やして、灰にする、イニシエーション、乙女は、乙女へと。
生活になるし、だからそのうち詩になります。ありがとうございます。