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「自分がどうなりたいかを意外とみんな分かってないんだ」の話

「どんな人生が送りたいかと言われたら、ずっと創り続けられる人生がいいです。最期の瞬間まで、なんか創っていたい。創ることを考え続ける人生がいいです」
 どんな人生を送れたらやりきったって言えるかと老人に聞かれて、私はそう答える。
「それを叶えるのはそんなに難しくない。すごく安く暮らせる国に行って、そこでずっと創り続ければいい。でもたぶん、それは嫌なんだよね?」
 老人に言われて私は小さく、あ、と言葉を漏らす。昔、タンザニアで取材をしていた時、中級ホテルマンの年収が十万円と聞いたことがあった。噂だから本当かは分からない。でももしそうだとしたら、百万円あれば十年は暮らせることになる。地球上を探せば、百万円で二十年暮らせる場所だってあるはずだ。
 でも、タンザニアではインターネットがすごく遅かった。自分はインターネットがないと生きていけない。
「だとしたら、創り続けるだけの人生じゃ嫌だってことだ。最低でもインターネットがつながる状態じゃないといけないってこと。暮らしは? 毎日パンを数枚だけでもいい?」
「いやです」
 私は言い切って自分で笑う。そうだ。創り続ける暮らしがいいと言ったって、コーヒーも飲みたいし、おいしいお寿司だって食べたい。必要な画材はすぐ買いに行きたいし、Amazonプライムお急ぎ便が使える場所がいい。
「創り続ける人生がいいのは本当なんだろう。だけど、もっと求めていることがあるんじゃないかな。私はね、みんな、自分が本当に求めていることを分かっていないんじゃないかって思ってるんだ」
「本当に求めていることかぁ」
 私はそう言って、自分自身を思い返す。

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