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6月の金曜日「備えあれば」

 昨夜は人事部が企画した若手社員を励ます会みたいなのに、先輩側として呼ばれて会社近くの居酒屋へ行った。直接の上司部下の関係ではない人たちで集まり、あまり肩肘張らずに雑談しながら、もし悩み事などあれば聞く、といった趣旨だ。正直、あまり乗り気ではなかったが、これも仕事と割り切って赴いた。

 蓋を開けてみれば、その若手が音楽に詳しいというか、僕と趣味がとても近くて大いに盛り上がった。僕はお酒は普通に飲めるが、その彼が飲めるのかわからなかったので、軽く〜といった感じだったが、最終的には彼は芋焼酎を頼み、それなら僕も、と白ワインを頼んだ。十歳以上年下だったけれど、若年寄り的というか彼からしてみたら上の年代の音楽をとても好んでおり、一番好きなバンドを強いて挙げるなら? と聞くと、フジファブリックだというので、嬉しくなってついつい話し過ぎてしまった。流れで自分のバンド時代の話も少しだけしてしまった。

 たかだか音楽の趣味だけれど、僕も若いときに上司に当たる人がレディオヘッドが好きでよく聴いていると話してくれたことがあって、なんとなく親近感が湧いたのを憶えている。他人の趣味をあれこれいうつもりはないけれど、誰も彼も野球やゴルフの話しかしていないような状況と比べて、ほんの僅かでも自分の知っている音楽を知っている人がいるというのは、大袈裟かもしれないが、ひとつの『救い』のように感じられた。恩着せがましいことをするつもりもないし、同じ会社とはいえ直接的になにかしてあげられることはあまりないのだけれど。

 ここ最近にしてはまぁまぁお酒を飲んだので、今朝は覚悟していたのだけれど、二日酔いにもならず、思いのほか体調も良い。窓の外を見ると、ここ最近にしては珍しく空が晴れていた。もう梅雨も明けるのだろうか。

 そんな今朝、娘はこのまえの『かいじゅう』が嘘だったかのように良い子で、朝の支度をすべて自分からこなしていた。僕は一応、太田胃酸を予防的に摂取し、娘と一緒にチーズトーストを食べた。支度を終えて、手を繋いで保育園へ歩いていく。日差しが強く、もう夏みたいだね、と僕がいうと、娘が「いまは、はれてるけど、またあめふるんじゃない? パパ、カバンにかさいれてる?」ときいてきたので、入ってるよ、と答えた。入れっぱなしだっただけで、晴れているのなら重いしいらなかったな、と思っていたけれど、備えあれば憂いなしだ。

 結局、雨は降らなかった。夕方の帰り道、残念ながら茜色の夕日ではなかったけれど、昨夜この曲を奥田民生が弾き語りしたときの音源がYouTubeにあるよね、という話をしたことを思い出していた。なんだか僕の方が励まされたような気もして、ちょっと申し訳なく思った。


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