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男勝り教習所✴︎東場学園完✴︎
ギャップ最強説は当時も今も変わらないかもしれない。”普段弱気なタイプがここぞで強気に出るが良し”なんて初歩中の初歩、役牌同然だ。ベッドで彼女の瞳に映る自分の顔にピーンときた。親相手でも無筋を押すタイミングはココだ・・・今後の学生生活のために覚悟を決めた。
「それって、こういうこと?」彼女側にくるっと振り返りベッドの上で壁ドンしたのだ。少女漫画であるならばイメージ的にはこう。
絵の威力でステキに映るが男役側がツモのみなので実際はこう。
彼女の頬はマンズの混一色から清一色に進化していた。後に引けぬとはまさにこのことだと思った。唾を飲み込む音がした。ネグリジェに手をかける。ま、まずは牌効率通りに手組をしていこう。無理に手役を狙うことはないって平澤元気麻雀chでも言ってた。基本に忠実に。初手ドラから切ってみたり意味なく字牌を残したりバラバラから仕掛けて鈴木たろうの真似をしてはいけない。
ネグリジェを河へ捨て北斗七星の傷のごとく手牌を舐め進めた。
「ぁ・・うん・・・・」
・・・困った。このままいくと官能小説になる。とはいえ麻雀で吐息を表現できるのはツモったクセに安め…とタメ息つくおっちゃんくらいだしな。それじゃとてもこの続きを表現できないし空白期間で仕事なくした黄河がヤケを起こしたって映るのもな・・・夜の女流雀王を名乗る自信は全くない。
2段目の中盤10巡目に差し掛かる。ノリにノってきた混一色が
「やめっ・・・」
すごく小さな声だった。でも聞き逃さなかった。
「わかった」
背中がびっしょり濡れている事を忘れ、私は体ごと彼女から背けた。
「え?あの・・・」
彼女なりのサービス精神だったのかもしれない。声を出した方が盛り上がるとiモードに書かれていたのかもしれない。牌効率通りに摸打を続ければ続けるほど後に引けない感覚が押し寄せて恐怖が募り、思わず「助かった!」と安堵した。何度か呼びかけて反応がない事から悟った彼女は腑に落ちない様子でベッドに入り直し、就寝した。
次の日”やめてという彼女の意志を尊重した”大義名分を手に友人に聞かれてバツが悪い風を装うツモのみがいた。彼女も最初は不満そうだったが周りから「優しい彼じゃん」と言われて仕方なく呑み込んだようだった。だが本当は何かが違うという違和感で切り上げた事は今も誰も知らない。
こうして男勝り免許取得後も、色々あったが無事卒業を迎えた。学生時代は目の前の事象が全てだと思ってしまう節がある。だが体裁を保つために私がした行動は、今後の相手の人生を大きく左右する程の傷になりえた重大な過ちだった。伝えておくがその後混一色は殿方とご結婚され素敵な家庭を築いている。念のため。
稀有な高校生活で私は3つ取得した。男勝りの免許、恋愛対象が男性である自覚、そして子供が生まれた時ジェンダーで悩むことの無いよう性に囚われない名前を付ける意志。それから10年プロとしてボーイッシュを名乗るにあたり”無免許とはくぐった修羅場の数が違うんだよ”と思い続けているし、8話冒頭で書いたが恋愛対象を聞かれて男性との回答に迷いはなくなった。
15年後、タタタタッと最強戦やゲストが目の前を素通りしてくのを見守りながら隣で爆睡する性別のない我が子の布団を掛け直した。
---終---
明日からは麻雀。無名貧乳中堅録。
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