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悪魔の所業相談所👿第一章


半魔が人間の願いを対価と引き換え致します。
これは悪魔の所業相談所を訪れた者の記録。
悪魔視点でご覧下さい。

ほら…今日もちょっと変わった客人がきた…

「黒影紳士」season 3-6と連鎖🔗発動‼️
前後に挟んで読むと、より一層黒影紳士が楽しめる仕様になっています。
season3-6から頻繁に悪魔が登場するので、チェックして読んで下さいね。
尚、最後にseason3-6第一章と最終章と世界一覧へ戻る道も用意してありますので、安心して歩いて頂けます。

*この物語は不思議ファンタジー短編集になっております。

🔸↓連鎖発動先のseason3-6幕第一章からやっぱり読む、または後からにしたい場合は此方の連鎖リンク🔗道をご利用下さい↓



――第一章 歪んだ幸せ――

 この世界とあの世界の境界線を見た事はありますか?
…では、地獄と天国と生物の生きづく楽園EDENの境界線は?
ありとあらゆる世界の歪みの間にこの相談所は在った。あらゆる世界を繋ぐその狭間に…。
この相談所に用があれば、何時だって簡単に入る事もできます。ある一定の覚悟と…願い…そして、求める強さがあるのなら。悪魔の所業相談所の所長は悪魔。気まぐれで残忍で時々人間らしい。怖いと…思いますか?
しかし、実際はそうでもないのです。だって…もしも悪魔が本当に醜く恐ろしい姿ならば、誰も近づかず、その毒牙に侵す事はできないでしょう?所長と言っても、たった一人の悪魔がいるだけ。こんな歪みに住みつくのはこの異端なる悪魔一人。天使にも悪魔にもなれなかった、人間と悪魔の子だけ。

 案外、暇な家業だと思いまして、長い命に飽きてこの所業相談所におります。しかしながら、そんなに暇な家業でもないのです。人間の欲は尽きる事はない。時々、悪魔の方がよっぽど欲が薄いものではないかと思ったりもするのです。

 ほら…そんな事を話しているうちにも、新しいお客がおみえのようだ。

「こちらへどうぞ。」
私は、相談所の扉を入ってきた一人の純粋そうな十代後半頃の女性にそう言いました。面倒だと思いますが、わざわざ私から声を掛けなければ、訪れた人間は自分で望んで来たのに、ここが何処かと不安になるものなのです。
だからほら…客人も、扉を空けたまま呆然としていらっしゃる。
「貴方が…悪魔?」
客人がそんな事を聞くものですから、私はそうだと言うかわりに、微笑んで被っていたシルクハットを手に持ち替え胸に当てると、会釈をしました。私がソファーに手で招くと、客人は安堵の笑みを浮かべそこに座りました。
「意外と庶民的なのね。」
客人は相談所内を一周目で見渡してそう呟くように言う。
「…お気に召しませんでしたか?この相談所は私が人間界に合わせたビジョンで作っているのですが…。ああ…良かったら、貴方の好きな部屋に変えましょうか?」
私は客人に気に入ってもらえるようにそう提案した。確かに、ありきたりな木造の机とソファーとテーブルがあるだけの質素な事務所だった。
「…いえ…お構いなく。けれど貴方が悪魔である証拠を見せてもらってもよろしいですか?」
客人は疑い深くそんな事を言う。
「…なかなか疑い深い方なのでしょうね。…まぁ、いいでしょう。天使のように美しいものではありませんが…」
そう答えるなり、私は黒い羽根だけを元の姿から出現させ、客人に見せた。しかし、小さいこの事務所では羽がどうも大き過ぎる。
仕方がなく、事務所の広さを少しばかり大きく変えて、内装も女性でも入りやすいように家具を新品に変え、テーブルの上に花を飾った。それを偶然にも居合わせた客人は目の当たりにして驚いたようだが、直ぐに新しい事務所が気に入ったのかこう言い出した。
「この花…もらってもいい?」
そう私に聞いて、テーブルの上の花を眺めていた。
「ええ…構いませんよ。オプションですから…」
そう私は言って、客人の手にもテーブルと同じ花を咲かせる。
「随分、気の効いた悪魔さんね。」
客人がそう言ってくすりと笑うものだから、私もにこやかに笑った。
「ところで…今日はどんなご相談で?」
私は仕事を早く終わらせようと、さり気なく本題に入った。
「何でも…願いを叶えてくれるのよね?」
客人は、不安そうに手元の花を見つめたままそう聞いてきたので私は、
「ええ…勿論ですよ。その代わり…代償として貴方の持っている何かをいただきますが…。
報酬は貴方のお好きなものを提示して下さい。
ただ…願いに見合った報酬でなければお受け出来ない事も御座います。」
私は何度となく何人もの人間に説明してきた、この事務所のシステムをこの客人にも説明した。客人はそれを聞くと、花にあった視線を私の方へと移動させた。
「この世界を…もっと幸せな世界にしてくれる?」
突然客人は、そんな願いを言ってきた。あまりに漠然とした依頼だったが為に、私はこう聞き返す。
「では…報酬は?」
そう聞くと客人はこう答える。
「今あるこの世界。この世界を全部あげるから新しい…皆、幸せな世界を作って。この世界で私も生きている。だから私はこの世界の一部。私のものと同じでしょう?」
…と。これはまた面倒な事になった。
私はこれからいちいち説明やら客人に聞かなくてはいけない事を思うと気が遠くなりそうだった。しかし…私にはいらない程の時間がある。これも一つの暇つぶしだと思えばいいのか。そんな事を考えながらも、仕事を遂行する事にした。私がそんな事を考え、少し沈黙していた所為か、客人は私にこう聞いた。
「悪魔でも…出来ないの?」
と。失礼な質問だとは思ったが、ここは客商売…私は笑顔でこう答えた。
「代償さえあれば出来ない事など一切ありません。…だって…私は悪魔ですから。」
人間として化けて生きる事も出来た私だったが、私は悪魔である事を選んだのです。そしてこの仕事をしながら人間と関わる程度が一番落ち着くのでありました。そして私は客人にこんな事を言った。
「残念ながら…きっと貴方が生きている世界は、貴方だけのものではありません。他にも生きているものがあるのならば、その生きているもの全ての所有物です。ですから、その世界に生きる全ての者がそう願うならば、その願いを叶えましょう。…しかしながら、貴方の一存だけでは…」
そう言って、言葉を濁らせた。私がこの商談を受けられない事を悟ると、客人の顔は暗くなった。客人は太ももに乗せられていた手をぎゅっと握った。
「どうしてそんな願いを?」
私は客人の緊迫した雰囲気に、そんな事を興味本位で聞いてみた。
「私の弟が死んだの。下らない理由から始まった戦争の所為で。弟は死ぬ直前にこう私に言ったわ…。…もっと幸せな世界で会いたかったって。けれど幸せな世界なんて何処にあるの?どんなに待っても…そんなの何処にもないわ。」
客人は目に薄い涙を浮かべそう言ったが、何かを呪うように強い眼差しをしていた。
私は思わずそれを聞いて失笑した。客人は私のその行為にご立腹のようでしたが、私はそれも気にも止めず、
「失敬…。あまりに貴方が身勝手な人だったから。けれどいいでしょう。その馬鹿げた願いを叶えて差し上げます。その代わり…報酬は此方で決めさせてもらいますよ。」
と、客人に言った。客人は戸惑うかとも思ったが、それは私の勘違いでした。客人は予想外にもこんな答えを出したのです。
「いいわ…。私にはもう、失うものもないの。何でも持っていきなさいよ。」
と。私は予想外の返答だったが為に、少しばかり考えました。そして私は切り出したのです。
「報酬は…貴方の弟君の魂。それと…貴方の命。どうですか…願いの割に破格だとは思いますが、それでよいでしょう。」
それを聞くと、客人は私にこう聞いた。
「もし貴方の手に魂が行ったらどうなるの?」
その問いに私は、
「それは私の自由ですが、ただの意識もなにもないガラクタのような飾りになります。
ほら…そこにある水晶のような丸いもの…それは魂です。時々、いい肉体があれば改造したりするんですよ。魂が欲しいと仰るお客様には売ったりもします。」
と答え、コレクションケースに入った魂を見せた。
一つたりと同じものがない魂。持っていた肉体に合わせて色とりどりに発光する…これ程美しいコレクションはない。
「これが…魂…」
客人は私の見せた魂が気に入ったようだ。
私も自慢のコレクションだったので、少しばかりの満足感に浸った。
「しかし幸せな世界ですか…。貴方の思う幸せを叶えても、誰かの思う幸せではないかも知れませんよ。」
私は忠告するつもりで客人に言った。
「いいわ…それでも。誰だって幸せになりたいって思うものでしょう?だから誰も、私のした事を間違いだとは言わないわ。それに、私はこんな世界許せない。弟を殺した…この世が憎いの。」
そう言った客人の顔は、まるで悪魔のようでした。自分だけではなく、死んだ弟にまで代償を払わせるなんて、なんて身勝手極まりない願いなのでしょう…。
「いいでしょう…。そこまで貴方が仰るのならば、願いを叶えましょう。ただし、幸せはそこに生きるものの感性で異なるものです。
ですから、私が思う幸せの形になると思いますが、それでも構いませんか?」
と、聞くと客人はこくりと黙って頷くと私の差し出した契約書にサインをした。
「死ぬ時の痛みはありません。眠るのと同じです。では…契約を執行します。」
私は契約を実行に移した。

私の足元には先ほどまで共に話していた客人の亡骸が一体、横たわっていました。
世界は…何も変ってはいない。私の思う幸せは、遠き日に死んだ母のいた人間の住まう世界が、そのまま生き続ける事だから。母のいた…大事な世界だったから、私には壊せない。
「貴方に言い忘れていました。…私は貴方と違う。本当は、悪魔にだって出来ない事があるのです。嘘をついていたのです。でも…悪く思わないで下さいよ。…だって、私は悪魔なのですから。それと、この花は返してもらいます。悪魔は無償で人に何かを与えたりはしない。」
そう私は足元に転がる屍に言って、屍が手にしていた花を奪い取りました。今頃、客人の魂はこの事実を知ってどう思っているのでしょうね。私はコレクションケースの中から、一つの魂を取り出して眺めていました。
客人の弟君の魂です。この魂の願いを私は叶えたのです。客人でもある姉の命と引き換えに戻る場所を残しておいてくれと…魂は私に告げた。姉と共に過ごした幸せな日々に戻りたいとどんなにこの魂は願った事でしょう。
私はこの魂の声が客人に届かなかった事を少しだけ悔やみます。客人の屍から浮かんできた魂を私は捕まえて、弟の魂と一緒にコレクションケースにしまいました。二つの寄りそう魂の美しさに、私は何時までも見惚れていた。

 …貴方の願いも叶ったでしょう?

🔸次の↓第二章へ↓(此処からお急ぎ引っ越しの為、校正後日ゆっくりにつき、⚠️誤字脱字オンパレード注意報発令中ですが、この著者読み返さないで筆走らす癖が御座います。気の所為だと思って、面白い間違いなら笑って過ぎて下さい。皆んなそうします。そう言う微笑ましさで出来ている物語で御座います^ ^)

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泪澄  黒烏
お賽銭箱と言う名の実は骸骨の手が出てくるびっくり箱。 著者の執筆の酒代か当てになる。若しくは珈琲代。 なんてなぁ〜要らないよ。大事なお金なんだ。自分の為に投資しなね。 今を良くする為、未来を良くする為に…てな。 如何してもなら、薔薇買って写メって皆で癒されるかな。