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少年よ、大志を抱け
2021年度の選抜の情報が出始めている。
まだ観客の有無は未定だと思われるし、今後の感染拡大の動向によって色々なことが変わるだろう。
トップ画像は、2020年11月に井原高校の練習場で撮影したものだ。彼らが目標としていたインターハイは、中止された。しかし「インターハイ優勝」という力強い文字は、11月になってもまだそこにあった。
2019年には、驚異的な演技構成をもってジャパン準優勝という快挙を成し遂げた井原高校。
2020年の演技は、その構成をさらに進化させたものだった。クラブ選手権でその演技が披露された時、彼らの目指すものがどれだけ高いところにあるのかを知って、気が遠くなるような感覚を覚えた。
基本的な構成は、こちらの井原ジュニアと同じだ。
しかし、これを高校生が演じると全く別物になる(曲のピッチも変わる)。ジュニアはジュニアで最高峰レベルにあって、称賛に値する。だが高校生の演技は恐ろしいことに、さらに別次元にある。
以前、ロシアのテレビ局に招待されて、井原高校2014年度の演技を、当時花園大学にいた小川兄弟や小寺選手らが演じてくれたことがあった。その時の演技も、「大学生が演じるというのはこういうことか」と感動する美しさ・力強さがあった。
今、「応援!男子新体操」のチャンネルで爆発的に見られているのがこちらの動画だ。
こちらもやはり、鹿児島実業高校出身メンバーを中心とする国士舘の選手達が、大学生ならではのハイレベルな演技を繰り広げている。
井原高校の話に戻る。
「応援!男子新体操」は、クラブ選手権、そして地元で行われたジャパン壮行会で2本の井原高校の演技を撮影した。そのいずれも、長田監督と部員達は「これはまだ多くの人に見てもらいたい演技ではない」という理由で、ネットでの公開を望まなかった。
実はクラ選であの演技を見た時、私の脳裏をこんな考えがよぎった。
「長田監督が目指す『美しい新体操』レベルでこの構成を演じるのは、いくら井原の選手でも無理なんじゃないか」と。
動画公開にNGをもらって、私は知った。彼ら自身はあの演技を美しく完成させることを、無理な目標とは微塵も考えていなかった。彼らは、あのあまりにも難度の高い構成で試合に臨み、実施を「誰が見ても美しい演技」にまで磨き上げ、そして優勝しようとしていた。
ハイリスク・ハイリターン。
一つ一つの技を針の穴を通すようにして積み上げていく井原高校の演技。一粒一粒が完璧な美しさを持つあこや真珠が糸で繋げられ、世界中の女性たちの垂涎の的となるのに似ている。井原高校の演技にも世界中から絶賛の声が寄せられたが、ひとたび糸が切れてしまえば、その瞬間に真珠はバラバラに散ってしまうだろう。
(写真上:練習の激しさを物語る靴下)
靴下をボロボロにしながら練習しているのは、井原高校だけではないと思う。
だから、全国の高校生達が必死に目指してきたものをどうか失くさないでほしい。どんな形でもいいから、まずは試合の開催を。そしてそれがより多くの人の目に触れる媒体で提供されることを、心から望みます。
少年よ、大志を抱け。
Boys, be ambitious.
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