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小川 晃平(おがわ こうへい)
井原高校団体のかなめとして
男子新体操ファンになったばかりの頃、井原高校の動画を、異常な頻度で見ていた。何度見ても飽きることがなかった。
井原2013年の団体演技の1タン(最初のタンブリング )。すごいスピードで画面手前に跳んで来て、ふわぁ〜っとラインギリギリに着地を決める選手。それが小川晃平さんだった。見ていてあまりに気持ちよく、そしてあまりに美しかった。
小川晃平さんは個人選手としても高校時代から活躍していた。その動画を見たかったのだが、当時は男子新体操の動画がネットにたくさんある状態ではなく、私が見つけることができたのは、井原カップの観客席から撮影されたもののみだった。その二階席からの映像では、表情など細かいところはわからない。しかし、圧倒的な跳躍力と動きと造形の美しさ、振り付けの素晴らしさが、美しい音楽とともに胸を打った。
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小川晃平さんに実際に会ってみると、ごく普通の(でもとてもキラキラした瞳を持つ)お兄さん、という感じだ。その彼がマットの上で動くと、たとえそれが腕をスッと上げるだけの動きであったとしても、「比類なき」という形容詞を付けたくなる。なぜ彼だけが、そのように体を操ることができるのだろうか。素人の自分にはわかるべくもないが、小川さんが特別な選手であるということだけは、演技を見さえすればひと目でわかる。まさにそれが小川晃平という選手の、そして新体操という競技の魅力だと思っている。
2015年関西インカレ
私が初めて彼の演技を生で見たのは、小川さんが大学3年生時の関西インカレ(2015年)だった。この時の関西インカレの衝撃は、今でも忘れられない。当時、花園大学には細羽勇貴さんや平野泰新さん、宮前凌さん、前田優樹さんといったスター選手がおり、地方大会とはいえ、それはそれは華麗な光景が繰り広げられていた。
「美しい衣装を着た選手が次々に登場し、美しい音楽に合わせて跳び、舞い踊る」という、非日常がそこにはあった。「なんだろうこれは。なぜ、こんな素晴らしいものがごく少数の人にしか知られていないのか」と思った。
小川さんは調子が悪く、7位だったと思う。しかしその独特な美しい動きは、私が個人競技の面白さに目覚めるきっかけとなった。
伝説のクラブの演技
弟の小川恭平さんの記事を書いた時、「ファンの多い選手だった」と書いたが、兄である晃平さんもまた、際立ってファンの多い選手だった。試合で彼のクラブの演技になると、会場内にいる全ての人が彼に視線を注いだ。静かなピアノの旋律と、会場の人たちが息を殺しつつも見守る熱と、彼がマットを蹴る音、ふんわりと着地する音、呼吸の音だけが空間を支配した。
クラブには「名作」と言いたくなる演技がたくさんあるが、小川晃平さんのこの演技は、男子新体操界が永遠に語り継ぐであろう名作中の名作だと思っている。
名選手の影には
ある試合会場でのこと。小川兄弟のご両親にお会いしてお話しした後、帰途につくため会場を出た。しばらく歩いて何の気なしに振り返ると、会場の玄関口で、お父様が私たちの方に深く頭を下げ、見送ってくださっていた。小川晃平さんはジャパンチャンピオンになったが、そのような素晴らしい選手の影には、素晴らしい保護者がいる、と思い知った出来事だった。
ロシア遠征
井原高校の団体の振り付けには、世界中から絶賛の声が寄せられている。監督である長田京大(おさだきょうた)先生は、振付師としても天才だと私は信じているが、その振り付けを体現してきた歴代の選手たちの優れた資質と努力もまた、称賛に値する。
花園大学のロシア遠征時に、小川晃平さんはリーダーとしてチームを牽引した。この時、チームは井原高校の演技をしたのだが、長田先生が「晃平が行くなら安心して任せられる」と語っておられたのが印象的だった。彼がどのように優れたリーダーシップを発揮したか、下の短い動画を見ていただくとよくわかると思う。(白いTシャツが晃平さん)
「踊る」選手たち
新体操の選手たちは、演技することを「踊る」と表現する。個人の演技であれば、手具操作、タンブリング、基本徒手などの振り付けを連続させることで一つの演技が出来上がり点数が付けられるが、それを「踊る」と表現する、まさにその点に私はこの競技の魅力を見出している。
私が2015年に出会った小川晃平さんは、「美しく踊るとは何か」を体現していたのだと、今になって思う。それは私にとって、とてつもなく幸運な出会いだった。
そしてまた、私たちのような素人集団が、小川晃平さんの演技をネット上に残せたことは本当に幸運だったし、「間に合って良かった」と心から思う。そして、今後生まれてくるであろう名演技も同様に、世に残せたら…と願っている。
2023年3月。選抜大会を皮切りに、新しい試合シーズンが開幕する。今年こそ、客席が多くのファンで溢れますように。そして、幸運な出会いがたくさんありますように。
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