中国地方政府関係者「台湾企業の撤退により、急速な経済成長がなくなった」
米中の経済対立が激化する中で、サプライチェーンにも脱中国の波が押し寄せている。かつて「台商」(※中国大陸でビジネスを行う台湾人)が多く存在した中国・江蘇省昆山が最悪の被害を受けている。
英国メディアによると、かつての昆山の経済成長は台商の流入によるものであったが、現在は多くの工場が撤退を始め受注が減少していることによって、40歳以上の労働者は解雇され、残った労働者の賃金は1年前の時給25元(約110台湾元=約470円)から19元(約83台湾元=約360円)以下に切り下げられた。フォックスコンやペガトロン(※いずれも中国大陸に多くの生産拠点を有する台商の代表的な電子機器メーカー)と取引を行う物流業者ですら打撃を受けている。
2023年の第1四半期の出荷量は3分の1以上減少しており、地方政府の関係者は急速な経済成長の時代は終わったと嘆いている。
Financial Timesによると、上海からわずか50キロの距離にある江蘇省・昆山県の賃金は、かつては内陸に位置する省よりも30%高かった。これは主に、昆山に工場を構えて主要部品を組み立てる数千社のOEMのおかげであり、台湾企業だけで1529社があり、いずれも輸出が主体である。
台商により栄華を極めた昆山の経済は、世界経済の見通しが弱まり、米中間の緊張が高まる中で、製造業の中国からの撤退が進み、時給が3分の1に減少し、手厚い契約金まで取り消された事例もある。また、受注の減少により高齢の労働者を解雇する工場も多く、とあるアップルのOEMでは、すでに労働者の年齢を1年前より5歳低い40歳未満に限定している。
報道によれば、昆山にある台商の工場賃金は、1年前の時給25元から19元以下まで引き下げられており、多くの工場では最大1万元の契約金の支払いをやめ、むしろ応募者に手数料を求めるようになった。
フォックスコンやペガトロンと取引する昆山物流グループのオーナーのジェームズ・ガオ氏によると、2023年第1四半期の出荷量が前年同期比で3分の1以上減少しており、「当社のドライバーは、以前は上海の港で駐車スペースを見つけられないほどだったが、今は駐車場の半分が空になっている」とのことだ。
同氏はまた、地政学的な緊張を受けて、欧米の家電ブランドに部品を提供する台湾企業はすでにベトナムやインドの工場に発注の一部を移し始めるなど調達先の多元化を進めていると打ち明けた。昆明の工場がかつてアップルやデルから100億米ドルの注文を受けていたとすれば、現在は80億米ドル程度で、残りはベトナムに流れているとのことだ。
地方政府の関係者も、急速に変化する経済環境において、外資企業による投資や貿易の見込みについてはより現実的になる必要があり、「急成長の時代は終わった」と語っている。
ハンセン銀行の中国担当チーフエコノミスト、ダン・ワン氏は、江蘇省昆山の発展は台湾メーカーの流入に負うところが大きく、台商が去れば昆山の成長は弱くなると語った。
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