シンガポール FLASH COFFEEが台湾市場撤退! 進出2年で撤退となった3つの理由
シンガポールの人気コーヒーブランド「FLASH COFFEE」は、2023年3月31日をもって台湾市場から撤退した。(日本市場では2021年12月に1号店をオープンしたが、約半年後の2022年6月には全2店舗を閉鎖している)
2020年に設立されたFLASH COFFEEは、翌2021年には台湾に進出を果たした。マレーシア、ベトナム、フィリピン、韓国、日本、香港で急速に店舗数拡大を続けており、アジアの主要都市で500メートルおきにフラッシュコーヒーの店舗がある「アジア最大のコーヒーチェーン」を目指しているとのことだ。
鮮やかな黄色のブランドカラーからは若い世代をターゲットにしていることが窺え、「コーヒー界のナイキ」を目指すと自ら宣言していた。
FLASH COFFEEは、台湾進出当初、2021年に30店舗、2022年に50店舗を展開し、Grab&Goモデル(オンラインで注文して店舗では受け取りのみ)を採用することで、店舗規模を通常のコーヒーショップの1/3~1/5として、テイクアウトと配達に特化して家賃や運営コストを抑える形式を採用すると発表していた。
しかし、台湾の進出後の出店ペースは計画を大幅に下回っており、今回、ついに台湾進出から2年と経たずに撤退することとなった。FLASH COFFEEはなぜ台湾での展開に失敗したのだろうか。
台湾で多くの飲食店展開に携わる林剛羽氏によると、半年前から同店の出店ペースが減速している様子を観察し、FLASH COFFEEがまもなく台湾から撤退することを感じ取っていたという。台湾のコーヒー市場は競争が激しく、「価格(圧倒的な安さ)、メニュー、居心地のよい空間、この3つのうち少なくとも1つで優れていなければ、生き残ることはできない」と分析した。
以下に台湾進出2年と経たず撤退となった3つの理由を分析する。
理由1:メニューが台湾人の好みに合わず、売上の維持が難しかった
コーヒーの味は、FLASH COFFEEが台湾に進出当時のインタビューにおいて、シンガポールのブランドであることから、パームシュガーラテやタイミルクティーなどの東南アジア独自の商品をラインナップに加え、ブランドの個性をアピールすると述べられていた。
しかし、匿名を条件に語った某コーヒーチェーン店のシニアマネージャーは、台湾のコーヒー市場では、特殊なフレーバーにこだわって生き残ることは難しく、売上を維持するのは難しいとの見解を示した。また、フードに関しても、軽食がいくつか提供されていただけで、台湾人の需要を満たすことはできなかった。
理由2:テイクアウトや配達がメインで、「サードプレイス」需要を取り込めなかった
スターバックスや台湾ブランドの路易莎(LOUISA)、怡客(Ikari)などの他のチェーン店は、テイクアウトだけでなく、温かみのある快適な空間を提供している。FLASH COFFEEはテイクアウトや配達に注力しており、店舗をリラックスして話をする空間として使う台湾人のニーズを捉えることができなかった。
理由3:店舗数拡大のペースが遅く、来店者をリピーターに昇華できなかった
最後に、FLASH COFFEEはベンチャーキャピタルであるRocket internetの支援を受けており、当初から、中国で急速に店舗数拡大を続ける「ラッキンコーヒー」モデルに倣うことにしていた。つまり、初期段階で大量の資金を投入して幅広く店舗を展開することで、損失を出しても市場シェアと消費者の「リピート」を獲得した上で、利益構造の調整をすることを目指していた。しかし、FLASH COFFEEの出店スピードは目標に届かず、初めから市場シェアを獲得することができなかった。
林氏によると、「台湾で一気に50店舗を展開するのは非常に難しく、人手不足だけでも大きな困難であるが、この(ラッキンコーヒー)モデルは一度出店スピードを緩めたら、必ず失敗する」という。
台湾市場撤退後、FLASH COFFEEの次の一手は?
短期間での撤退という迅速な効果検証はスタートアップ企業の基本であり、台湾市場からの撤退は必ずしもブランド全体の失敗を意味するわけではない。ただ、台湾で十分な利益を得られないことを検証しただけだ。
台湾のコーヒー市場は、様々な価格帯に展開するブランドがひしめき合っており、店舗形態やブランド力、テクノロジー(配達、アプリ注文など)だけでは、そう簡単に成功を収めることはできない。
公開情報によると、FLASH COFFEEはこれまでに5回の資金調達を完了し、総額5,790万米ドル(約78億円)を調達している。
フードデリバリーのfoodpanda親会社のDelivery Heroベンチャーキャピタル部門は、昨年6月にFLASH COFFEEの調達規模最大のシリーズBラウンドで約3280万米ドルの資金調達にも参加している。直近の資金調達ラウンドは昨年10月に行われ、シリーズBラウンドの延長線上にある。
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