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<その3>田んぼのインコ③(捕獲編)

2021年10月20日から早朝に田んぼに来ることを始めて、約2週間が経とうとしていました。もともとインコさんの田んぼ滞在時間は短かったのですが(6時ごろやってきて、飛んでまた戻ってきてを3回ぐらい繰り返すものの、トータルでは15分も田んぼにいないぐらい)、日を追うごとに、インコさんが田んぼに来る回数自体が、だんだん減ってきてしまっていました。朝早くからホイホイを二つ、田んぼわきの水路にセットして待っているのに、まったく来ない日もありました。理由は多分、現場周辺に食べ物がたくさんあって、田んぼにこだわる必要がないということだと思いました。


私たちがこの田んぼに来るようになる1カ月ぐらい前から、インコさんは既に目撃されていましたが、現場の近隣に住む方々の間でも、インコさんのことがだんだん認知されていっていたのか、特に、インコさんがよくいる屋根の付近で、餌が撒いてあるのを見かけるようになりました。田んぼにあまり来なくなったのは、インコさんがそこでご飯を食べて満足しているからなのだと推測できました。

近隣に、インコさんのことをとても気にかけてくださっているご夫婦がいらして、そのお宅の前にご飯があるのは把握していましたが、そこだけではなく、駐車場の片隅や、アパートのゴミ置き場の屋根の上にも、餌を撒いた跡がありました。餌を与えてくださっているのは、そのご夫婦だけではなく、他にも何名か(少なくとも1人以上)いらっしゃるようでした。

ホイホイで捕まえる上では、撒き餌はかなり慎重にやらなければならず、やるにしても1か所にしないと、うまくホイホイに来てくれないという問題が生じます(撒き餌をするならホイホイ予定地のみにするのが好ましい)。ただ、これらの餌は、皆様がインコさんの身の上を心配して用意してくださっているものなので、ご厚意は最大限尊重したいと思いました。インコさんを捕まえたいというのはこちらの勝手な欲望であって、私たちは、与えられた状況の中でやるしかないし、私はそれで十分だと思っています。

とはいえ、一度も田んぼに来ないということが続いたので、私はある日、早朝現場に来るのをお休みすることにしました。暗いうちから罠をふたつ用意して、インコさんが来る前に、一度実際に紐を引いてテストするところまでやるということをずっと続けていたのですが、あまりにインコさんが来なくなったので、むなしさを感じるようになっていました。何より、もともと早起きが得意なわけでもないので、疲れがたまっていました。

MさんとKさんは、それでも朝来たり、朝以外にも時間があれば見に行くことを続けておられるようでした。おふたりから、インコさんが、夕方に田んぼに来ているという情報があったので、初めて朝の捕獲作戦をお休みをした次の日もその次の日も、早朝はやめて午後に行くことにしました(ちょうど土日だったし)。ちなみにその頃には田んぼ前の道路の通行止めは、終わっていました。

2021年11月7日(日)の夕方のことでした。この夕方は、珍しくMさんが来ておらず、私とKさんのふたりで、インコさんを見張っていました。15時頃だったか、インコさんが田んぼに現れて、罠の近くまで来ることもあったのですが、またいつもの屋根の方に戻ってしまって、その後またどこかに飛んで行ったところで、日が暮れてきてだいぶ暗くなってしまいました。インコさんがよくいる屋根のところにいた私とKさんは、もうこんなに暗かったら、再度インコさんが罠のところに来ることもないだろうと思って、罠の撤収のために田んぼの方角へ歩きだしました。

「あーあ、明日の月曜日は出勤だし、やっぱり朝来るかあ~。また早起きの日々が始まるなあ」などとKさんとお話ししながら、曲がり角を曲がったら、何やら水路の罠の紐の先のところでしゃがみこんでいる黒い人影が見えました。遅れて現場にやってきたらしいMさんです!

Mさんは、私たちふたりに気が付いて、(いるいる!きてる!)と、ジェスチャーしました。

もう暗いから、飛んで行ったにしろ、田んぼの方角には行かないだろう(おそらく飛んだ先はねぐらだろう)と思ったのに、インコさんが飛んで行った先は、まさしく田んぼ!まさしく罠のところだったのです!
(今思えば、ねぐらに戻る前にちょっくら腹ごしらえしようと思ったのかな?)

何が原因で鳥さんが飛び立ってしまうかは本当に予測不可能なので、私とKさんは動きを止めて息をひそめました。一応スマホは取り出しましたが、音をちょっと出しただけで飛び立ってしまう恐れもあったので、動画を撮ったりする余裕はありませんでした。

Mさんが、紐を引くタイミングを真剣に狙っているのが伝わってきました。私たちは少し離れたところで見守るのが精一杯でした。

インコさんが罠の近くにいることは、私たちでも分かりました。でも角度によってホイホイの下に入っているようにも、入っていないようにも見えます。こうなったらすべてをMさんに託すしかありませんでした。

実はその前日だったか前前日だったか、Mさんが紐を引いたタイミングが早くて、インコさんに寸前で逃げられたことがありました。その経験があってMさんはかなり慎重になっているようでした(※1)。

私はこの時、理由は自分でも言えないのですが、なぜかうまくいく予感がしていました。独特の高揚感のある、不思議な予感でした。

ガシャーン!!

ホイホイのかごが落ちる音がしました。

入ったーーーーーーーー! やったやった! 

え? マジ!? すごーーーーい! えーーー!? マジ――――!?

いい大人が3人で大興奮です。

しかしホイホイに入っただけで安心してはいけません。話によると、せっかくホイホイに入ったのに、ホイホイからキャリーに移すときに逃げられた方もおられるようでした(その後無事に捕まえたようですが)。

私は、なるべく精神を落ち着かせるようにして、ホイホイのカゴの下に差し込むダンボール(※2)を取りに行きました。そして、Mさんが、インコさんの入ったカゴを両手で抱きかかえるようにして押さえて固定したところを見計らって、私とKさんのふたりで、カゴと地面との間に、ダンボールをそーっと差し込みました。完全にダンボールを差し込み終わって、ネット(※3)を全体にすっぽりかぶせたところで、皆様へのご報告用にと、やっと写真を撮りました。

【捕まえました!】 
こう言える日が、今日だったなんて。

作戦開始から2週間以上、田んぼ周辺を見張り続けていた今までの大変さなんて、全部吹き飛んでいました。


※1 この時捕獲に成功したのは、一度インコさんがいる状態で紐を引く経験をしたMさんだったからこそだと思います。リハーサルと、実際インコさんが入って紐を引くのとでは全然緊張感が違います。いきなり完璧なタイミングを見極めるのはなかなか難しいのではないかと思います(作ったホイホイによってカゴが落ちるスピードも違ってきちゃいますし)。

※2 捕獲後にホイホイのカゴの下に差し込むのは、ダンボールがいいと個人的には思います。しなるので隙間ができにくいというのが最大の利点です。運ぶときに折り畳めるのも便利ですし、大きなサイズも手に入れやすいところもいいと思います。

※2 袋状になっているゴミ回収用のネットが便利です。Amazonで買えます。道具については、詳しくは別記事(鋭意執筆中の道具編)で再度ご説明しようかと思っています。

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