<その2>空き地のインコ②(孤軍奮闘編)
公園のインコさんを保護して2週間後にまた迷子インコに遭遇することがあるなんて、思ってもいませんでした。しかし、現実に、インコさんはそこにいました。
インコさんの姿が確認できたので、私は再度Mさんに電話をかけました。Mさんは電話に出てくださり、予定を調整して現場にきてくださるとおっしゃってくださいました。
一方で、このインコさんの目撃情報を、Twitterにもアップすることにしました。私が今日ここまで来られたのは、たまたま今日が日曜日だったからで、もし平日だったらここには来られなかったし、今日この子を捕まえることができなかったら当然明日以降は厳しいということなので、今後のことを考えると、どうしても他に協力してくださる方が必要だと思ったのです。
ツイートしてからMさんがいらっしゃるまでの間は、ひたすらインコさんを観察してどのように距離を詰めるかを考えていました。インコさんは人が近くにいても平然としている、ある意味「人懐っこい」子なのは確かなのですが、捕まえようとしてさらに接近を図ると、すすすーっと波が引くようにどんどん遠ざかってしまうのです。
雨はこの時にはもう止んでいました。インコさんは、空き地の境界を示す杭に止まったり、前の歩道に降りて、トコトコ歩きながら地面をつついたりしていました。途中、歩道を自転車が通っても、全然よける気配がなくて、轢かれてしまうのではないかとこっちがハラハラしました。
インコさんが杭と杭の間に張られたロープに止まったとき、公園の子を保護した時と同じ方法を使おうと思いました。まず左手に粟穂を小さくしたものを入れましたが、これだとキャッチするときにやりにくいと分かったので、シードに変えて、手のひらのシードをインコさんに見せました。インコさんは素早い蟹歩きでロープ上を横に移動して遠ざかることを繰り返しましたが、私の手の中に、なんだか食えるものがありそうだという認識はしたようでした。そして、何回か目の接近で、ちょうどインコさんがロープの端の杭のところに来て足止めを食らったこともあり、公園の子と同じように、両手でキャッチする形で捕まえることができました!!
が、
現場に到着してから30分ぐらいの時点だったでしょうか。これはスピード解決だ!よかったよかった!と思ったのもつかの間…。なんと、わたくし、この子をキャリーにしまうときに逃がしてしまいました…。
公園の時はベンチがあったので、左手にインコさんを抱いていても、右手だけでベンチの上にキャリーを出してインコさんを入れることができました。
しかし、この時はそういう台になるものがなかったので、地面の上でだったと思うのですが、ガバッとキャリー(※1)の扉を開けてインコさんを入れて閉めようとしたその一瞬の隙に、インコさんが外に飛び出してしまったのです!
インコさんはパタパタ飛んで、空き地の奥の木に止まった後、今度は運動場のネットの上へと行ってしまいました。とても人間の手が届くような場所ではありません。
あちゃー、こんな失態、誰にも報告できない。このまま捕まらなかったらどうしよう。下手に一度捕まえちゃっただけに、もう二度と捕まえられなかったら一生モノのトラウマになってしまう…。また私は罪を抱えて生きるのか…。
途方に暮れながらフェンスの上のインコさんを見つめる私の方に、運動場の敷地内で草刈りをしていた男性の一人が近づいてきました。実はこの空き地は、ちょうど今日、運動場とあわせて草刈りが行われていた(※2)ようなのです。昨日、最初に目撃者様がこのインコさんのことをツイートなさったときのお写真では、空き地にはたくさんの雑草(主にメヒシバ)が生えていました。今朝、再度目撃者様が現場を通ったところ、男性たち数名が空き地に入って草刈りをしていたということはDMで教えていただいていました。10時半ごろ、私が現場に到着した時には、空き地からはすっかり雑草がなくなっており、空き地にいた方々は運動場に移動して、そこで草刈りをしておられました。
私は、インコさんを追って少し空き地の敷地内に入ってしまったりもしていたので、てっきり怒られるのだと思い、謝罪しようと身構えました。しかし、そうではありませんでした。男性は、インコさんのことを気にしてくださっており、私のことを飼い主さんだと思って話しかけてくださったのです。男性は、この子のことを昨日から認識なさっていたようでした。そういえば目撃者様も、運動場のところにいる人たちはインコさんのことを認識しているようだったと私に伝えてくださっていました。
男性は、インコさんが降りてくるようにと、ご厚意でフェンスをゆすってくれました。こういうことがいい方向に向かうこともあれば、捕獲が遠のく結果となることもあるのですが、私は保護活動のスタンスとして、偶然現場に居合わせた方が迷子鳥さんのことを気にかけて行ってくださったことは、すべて肯定的に受け止めることにしています。見ず知らずの鳥さんのことを、鳥を飼ってもいない方が気にかけて何かしら行動を起こしてくださったというだけで、本当にありがたいことですし、最大限尊重するべきだと思っているからです。今回の場合、インコさんはフェンスから飛び立った後、車道の脇の街路樹に止まりました。インコさんと私の距離が、フェンスの上の時よりはずっと近くなりました。私は男性にお礼を言いました。男性はまた草刈り作業に戻っていかれました。
男性が「昨日もいました」と教えてくださいましたが、インコさんが、2021年8月22日に目撃された場所から移動してきて、昨日からここに現れるようになったのか、もっと前からここにいたのか、とても気になるところです。しかし、この辺のことはいまだに分かりません。いずれにしても、逃がしてしまったのは大失態でしたが、今日私がここに来られてよかったと心から思いました。なぜならば、インコさんが今まで食べていた雑草が今日刈られて無くなったということは、明日からはまたどこかへ移動してしまう可能性があるということなのです。そうしたらもうお手上げです。また次の目撃情報を待つしかありません。
今日ここに来られた幸運に感謝しつつ、つまりは今日保護ができなかったらもうこの子を見つけられないかもしれないということなので、何としてももう一度今日中に捕獲しなくちゃ、と私は決意を新たにしました。
☆
※1 私が愛用しているのは、今はもう廃業してしまったマルワさんのウイングキャリーというもので、キャリーの入り口ががぱっと大きく開く構造でした。さんざん使い込んだキャリーですが、こういう逃げられ方をするとは盲点でした。この教訓を生かし、今後は、水や餌を入れる小窓からインコさんを入れることにしました。セキセイさんサイズなら小窓からでも出し入れ可能です(病院の先生も、脱走しやすい子の場合、そうしているようでした)。
※2 てゆうかインコさんが草刈り機に巻き込まれて死ななくてよかったと思いました…。このインコさんは、捕獲して我が家に連れてきてからも実感したことですが、「人懐こい」というよりはめちゃくちゃ図太いという方が正確だと思います。
※3 私がこの空き地に来た時点では、刈られたメヒシバの実がまだまだ空き地一帯に落ちていて、インコさんはそれを一生懸命ついばんでいました。だからインコさんは移動しないでまだここにいたわけですが、そのせいで逆にいんこホイホイに誘導できなかったという面もあります。食べるものがたくさんあたりに落ちていると、ホイホイを使うのは難しいと分かりました。
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