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住まいに「バリア」を ~障害児との暮らしに優しい住まい~
1.ドア1枚で「安心・安全」と「視覚支援」
我が家では娘が4歳の夏、まだ「発達遅れ」と言われていたころ。
対面でオープンなキッチンに、思い切ってわざわざ「ドア」を付けた。
また、この「ドア」1枚のおかげで、
安心・安全はもちろんのこと、
本人に対する「視覚支援」という観点でも非常に有益だった。
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今にして思えば、
住宅リフォームを通じた、おうち早期療育。壮大な視覚支援。
ドア1枚で済むものなら安いものだ、と私は思ってしまう。
・・・とはいえ、普通はなかなか、そこまで踏み切れないと思う。
私は前職、某組織にて、一級建築士や福祉住環境コーディネーターとして、住宅のバリアフリーに関わることが多かった。
そのため、住まいの方を工夫せずに、人間が苦労して合わせる、という事がどうしても許せなかった。
バリアフリーではなく、「バリア」を設けたのだ。
人が住まいに合わせるのではなく「住まいに工夫を加える」。
その発想の原点は、バリアフリーも、「バリア」も同じなのだ。
心豊かな暮らしをするためにも。家を住みこなしていく。
ちなみに、
ドアを設ける前は「お前がずっと見てればいいじゃないか」と夫。
ずっと見ていろだと???そんなことしてたら、何もできない。
3歳半を過ぎたころから、ベビーゲートを軽々と乗り越え、キッチンの引き出しを開けまくるようになった娘。
一時期は、キッチンとダイニングとの間にテーブルを置いて、キッチンに向かいたがる娘を都度「だ~め~よぉ~~~!」とギューっと抱っこでブロックしながら(笑)DTMでの音楽制作をしていた時期もあった。
障害児育児・家事・私の副業(音楽制作)をホント軽く見過ぎ。
いったいどんな業務量見積もりをしているんだ(ブツブツ)。
そこで色々探した結果、この本を見つけた。とても良い本。
2.(書籍紹介)知的障害・発達障害のある子どもの住まいの工夫ガイドブック
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この本の中には、
日用品を使ったすぐに出来る工夫から、住宅リフォームまで、
知的障害・発達障害のある子どもの状況に応じて、対処法が幅広く取り上げられている。
本書での事例を見ながら、
「本格的なリフォーム工事は、娘の発達に応じて考えよう。ただ、娘が在宅中にずっと見張っていることは出来ない。だから、ドアを1枚設置しよう。もし障害でなく、発達遅れであるならば、娘との間でも笑い話に出来る程度のことだ。」と思うことが出来た。
キッチンとの間にドアを設けたことで、
親が物理的に「制御」できるようになったし(親が見ている前提でキッチンに入れることもある)、
娘にとって「入ってはならぬ場所」という認識が生まれたのは非常に良かった。大掛かりな視覚支援になった。リフォームしたから気付けたこと。
YouTube動画を見ていると、「自閉症の息子にテレビを壊された!!」などのテーマに遭遇することもある。
そんな親御さんには、是非この本を読んでほしい。
障害児だから苦労する、でなく、住まいの工夫で解決できることもあるのだと。
3.さいごに
「バリアフリー」という言葉や考え方は、随分と普及したように思う。
住まいにおいては、
「段差をなくす」「落下や転倒しにくい階段の形状にする」など。
国の指針によらず、現在では各社の仕様に取り入れられることが多いであろうし、住まい手側も「そういうもの」として捉えているように思う。
しかし、これらは、健常者、(健常者として生まれた後の)高齢者や身体障害者を対象とした発想。
知的障害児との暮らしの場合は、どうだろうか。
障害児と言うと、何となく、大人になったら、
「いずれは施設か、グループホームか」と思われがちだ。
しかし、
障害者施設やグループホームへの待機者数の多さが表しているように、
ごく普通の住まいで、障害児と親と共に過ごす期間の方が
ずっと長いケースも多いはずだ。
例えば「住宅リフォーム」について。
自治体によっては、身体障害だけでなく、
知的障害を理由としたリフォームへの助成があるらしい。
こうした環境下においては、是非とも、
国の施策としても「知的障害・発達障害者向け住宅リフォーム」の創設や、
グループホームに関しても、国における「施設」と「住宅」の垣根を越えた取組を期待したいところだ。(いまはぼかして書いておく。)
娘は5歳半で重度知的障害の診断を受けた。
有難いことに、非常にゆっくりではあるが、確実に成長している。
この次の段階のリフォーム工事が必要になるときが来るのかもしれないけれど、当面は今のままで行けそうだ。
そして親の私は、老け込んでいる場合ではない。再来年50歳だけど!
娘と共に、元気に過ごしていかねば。一日でも長く、伴走できるように。
そんな思いも、娘がくれた大切なものなんだと思う。
来年度からは、無事、特別支援学校でお世話になれる。親も一緒に学びの日々。親子共々一歩一歩、歩んでいきたい。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!