【読書感想文】夏物語/川上未映子
545ページの長編小説にどハマりした。すごかった。ここんところ毎日少しの隙間時間、朝起きて準備するまで、昼休憩、煮物煮込んでる間、寝かしつけ終えてから眠くなるまで、時間を見つけては夢中になって読んだ。
さっき、お風呂上がってドライヤーで髪乾かしながら読み終えた。
なんで一つの命を産むのに、精子と卵子が必要なんだろう。
どこから命と呼ぶんだろう。
子どもを持つことは、一つの命を始めることは、どれだけ責任が重いんだろう。
ペットを飼う時はその責任が分かりやすいのに、なんで自分の子どもとなると愛情だけで育てられると人は勘違いするんだろう。
勘違いなのか、正しいのか。
なんで自分の子どもが欲しくなるんだろう、なぜ養子ではなく。
自分の遺伝子みたさ、なのか、じゃあそれで産むのはエゴなのか。
この本は、男と女がいて子どもが産まれる、という順序よりも、子どもが産まれるためには男と女が必要だ、という位置付けで男女が登場する。
というより、本作のテーマ的に言えば精子と卵子。
精子バンクの匿名性は必要なのか。
でも提供側のプライバシーは守られないといけないのか、とか。
精子ってあれオタマジャクシみたいな形だけど頭っぽいところに脳はないのか、意思はもってないのか、じゃあなんで卵子を探し求めるんだろう、なんか知らないけど卵子は細胞って感じするのに、精子は生き物って感じがするな、とか。
いろいろ考えて、それはもう、自分の生まれる前の歴史たちと、自分が死んだ後に流れていく時間は同じなのかな、とか、もうとりとめもなく考えてしまった。
生と死と、目を背けたくなるような辛い描写も出てきて、でも意外とすんなり読み進められたのは登場人物がしっかりと温かい人たちばかりだったからだと思う。
文章も柔らかい。女性の口語体がベースだからか。
川上未映子はすごい。これだけの長編を夢中になって読ませるんだから。
私は初めて川上未映子さんの作品を読んだけど、イメージがこんなにできるもんなんだ、と。
鶏ガラのように痩せ細ってるのにどこからそのエネルギーは出てくるんですか?っていうような関西弁のおばちゃん・巻子だったり、思慮深い姪・緑子、仙川さん、遊佐、逢沢さん、善百合子、一人一人の話し方や特徴がちゃんと際立ってて常に光景が目の前に広がっていた。
凄い。終わることのない書きっぷり。流れるような文章。そりゃ読むわ、読まれるわ、そらええわ。
あーーーなんか、一足先に私の夏が通り過ぎた気がします。
読後感は予想もしてなかったほど爽やか。一気に走り抜けた。
ああ、明日から何を読めばいいんや。