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日産自動車に見るサラリーマン社長の責任感のなさ
最近話題のホンダ・日産の経営統合について投資家目線で意見を述べたいと思います。
報道された内容
報道ではホンダが日産へ子会社化を打診したことに腹を立て、日産側から統合を断ったとされています。
今現在(2025/02/11)は両社からの発表がないので真偽の程はわかりませんが、これだけ大々的に報道されているのでリークしたと考えるべきでしょう。
今回の喧嘩別れの発端になったと考えられる要因は大きく2点あります。
①日産がホンダと対等の関係でいようとしている
②日産にリストラをすすめる力がない
①は記者会見で日産の内田社長が言った「どちらが上、どちらが下ということではなく..」というセリフからもわかるように、ホンダに助けてもらう意識はなく、あくまでも協業で乗り切るためのプランという意識です。
合同会社の出資率はホンダが8割ほどで役員もそれに相当する割合になりますが、日産が復活した暁には割合も変えれるとの腹積もりもあるでしょう。
記者会見の場で聞いていたホンダの三部社長も内心穏やかではなかったでしょうが、「まあ言わせておくか」くらいの大人の対応だった気がします。
しかし、ホンダを怒らせた決定的な出来事がありました。
当初1月に日産からリストラを含めた再建計画を出す予定でしたが、それが2月にずれ込みました。その上、遅れて出てきた計画はリストラの人数も不明な上に経営責任も問わない人事でした。肝心の工場閉鎖や縮小などは全くの手つかずで、再建の目処が全く見られない計画だったのです。
そこでホンダは日産を子会社化して再建計画をスピーディに進めようと考えたみたいです。(公的な理由はですが)
ここまでが報道されている流れです。
私の意見
私の考えとしては、ホンダは日産に見切りをつけたんだと思います。
元々ホンダに救済の意思はなく、経産省から言われて渋々動いたに過ぎません。経産省に睨まれたら、色々な意味でやりにくくなるでしょう。
そうして重い腰を上げたにもかかわらず、記者会見では言いたい放題で、再建もこの様子では進みそうもない。
この先、日産のお尻を叩きながら進めるハメになるのは、わかりきっています。しかも相手は対等だと思っているから、ホンダの意見を素直に聞くとは思えません。
統合した場合は日産の負債を合同会社が返済する必要があります。もちろんそれはホンダがやることになります。つまり、このまま経営統合を続けても、日産というお荷物を抱えたままホンダも沈んで行く未来が待っています。
合同会社の目的は、ホンダ・日産が自動車産業で生き残るためのアライアンスですが、当面は日産の救済です。
日産の計画を見ていると、とても復活の芽はありません。
このような計画になるのは、内田社長に求心力がない、つまり社内での権力がないことを表しています。元々周りに認められて社長になった訳ではなく、社内紛争で西川氏が辞任した後に、誰もやりたがらない社長を引き受けただけなので、周りの役員は認めていないのでしょう。故に、リストラや工場閉鎖などを役員に飲ませることができなかったと推測します。
内田社長も就任時に社内がボロボロだったり、コロナ禍で売上が落ちたりと不運なことはありました。その中で一時的とは言え黒字化したことは称賛に値すると思います。しかし、サラリーマン社長の典型と言える責任感のなさが目立ちます。社長を部長や課長と同じ”役職”だと捉えている節があるのです。任期の間をやり過ごすことが”役割”と考えているのかも知れません。
部長や課長ならそれでいいかも知れませんが、社長は全社のトップで経営責任もあります。本来は役員を経営責任を取らせて解任したり、再建の為にリストラなど大鉈を振るう必要があります。
今回、内田社長はどちらも実行できていません。
このような状況ではホンダも道連れになると危機感を抱いたでしょう。
故に、子会社化は日産が断ることを前提にした策だったと思われます。
記者会見で言ったように、日産は「対等」だと考えています。つまり『子会社化など断じてありえない』スタンスです。
ホンダが子会社化を打診すれば、怒り心頭で交渉決裂の判断を下すのは、私でも予想できます。日産役員は自分たちの給料が減るから子会社化に反対したと思いますが..。
ホンダは経産省から頼まれて動いてるので、自分から統合を打ち切ることはできません。経産省が諦めるか、日産が断るかの2つしか統合を防ぐ手立てはないのです。
経産省の説得より日産に断ってもらう方が遥かに簡単です。
今回の結末はそういった経緯だったんではないでしょうか。
そもそも対等な統合はできるのか
今回は決裂という結果になりましたが、そもそも対等な関係で統合できるのでしょうか?
対等というからには、お互いの経営者や従業員の関係も対等ということです。
具体的には
・社長はホンダ・日産で交互になる(副社長は社長でない会社から)
・役員の人数がホンダ・日産で同じ割合(50:50)
・開発の仕方はホンダ・日産で同じ割合(50:50)で採用
・車両仕様などもホンダ・日産で同じ割合(50:50)で採用
こんな感じでしょう。
もっと細かいことを言えば、昇格者も同じ割合で出さないと”贔屓”と見られます。
役員含め、部長・課長なども同程度にする必要も出てきます。
開発面で言えば、各社のノウハウは出してこないでしょう。いずれ別れる可能性もあるだけに、一般的な技術だけを小出しにする関係性でしょうね。
私の経験上、対等な関係の開発統合は上手くいきません。
相手の意見(仕様)に従う義務がないので、面倒なことは理屈をこねて断ります。
効率や品質が上がるのなら受け入れるべきですが、プライドが許さないのです。”対等”な関係の2社が、お互いを尊重しつつ歩み寄る姿が想像できません。
私の考えでは、統合はせず、EVの技術提携だけ続けるという形になると思います。
投資家としてどう行動するか
我々投資家は決算書で経営を見ますが、書類だけではなく経営者を見る必要があります。それまで黒字でも日産のような経営者が居れば、簡単に赤字になります。
赤字になってから売ろうとしても、株価が暴落しているので大損になります。そうなってからでは遅いのです。
我々の投資資金は労働で得たものです。それをボンクラ経営者(失礼)のせいで減らすわけには行きませんよね。
私が積極的に日本企業へ投資しないのは、現場上がりのサラリーマン社長が経営をしているからです。彼らは技術や社内政治には長けているかも知れませんが、経営は別畑です。また前述の通り責任感も希薄なので、問題が起こっても対応できません。
我々が見るべきは、十数年後に会社がどうなるかです。
今現在が黒字かも大事ですが、将来にわたって利益が出せるのか、問題が起こっても対応できる会社なのかが、最も重要です。
日産はいい例を示してくれました。このような会社に投資しないように気をつけましょう!
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