『彩香上京物語』 第九章 〜岐路〜

第九章 〜岐路〜

〜 数日後


彩香「…おはようございます。」


星野「彩香ちゃん!おはよう。身体の調子はどう?」


彩香「あ、そっちは全然大丈夫です。」


星野「そっか。でもどうかしたの?顔色が悪いけど。」


彩香「いや、実は…」


彩香は試合の疲労抜きのため、一週間の休みをもらっていた。


彩香「やっぱりモデルになりたくて一般枠で応募してみたんですけど……。」


星野「けど?」


彩香「……体重審査に引っ掛かってしまって。あと2週間で3キロ落とさないとダメなんです!」


星野「…そう。それは大変ね。」


星野は言葉こそ彩香に同情するも、目の奥は笑っていた。気を抜くと口から息が漏れそうなのを必死で堪えた。



星野「でもまあ仕方ないよね。焼肉だってあんなに食べればいくら運動しててもさすがに太るわよ。ご飯も何杯おかわりしたっけ?」



彩香「うっ…いや、これでも胃は昔より小さくなったんですよ!」


星野「まだ若いって言っても代謝はどんどん落ちるのよ。特に二十過ぎたあたりからね。」


星野は彩香に意地悪な目を向けた。


彩香「で、でも最近は運動も昔より増やしてプロテインだって飲み始めたんですよ。今日だって持ってきたんです!」


彩香はおもむろに担いでいた大きなリュックからこれまたお徳サイズのプロテインの袋を取り出した。


星野「どれどれ、ちょっと見せてみて(あんなもの普通まるごと持ち歩くかしら)。ん?あなたこれパンプアップ用のプロテインじゃない。」


彩香「えっ?」


星野「これも飲んであんなにたくさん食べてちゃ太らない方がおかしいわよ。」


彩香「えええっ。プロテイン飲んだら脂肪が燃焼して痩せると思ってたのに!」


星野「こりゃちゃんと教えてあげなきゃだめね。」


彩香「彩さん!私何としてでも痩せて審査に合格しないといけないんです!お願いします!私のトレーナーになってください!」


星野「ここはあなたのジムでもないし、わたしはトレーナーじゃない、と言いたいとこだけど、丁度よかった。実はあなたに試合の話が来てるのよ。」


彩香「えっ試合?またですか?」


星野「ええ。うちのプロモーターがあなたのことをいたく気に入ったみたいでね。ベビーフェイスとしてデビューさせたいらしいの。」


彩香「ベビーフェイス?何ですかそれ。」


星野「平たく言えばヒロインってとこ?彩香ちゃんってスタイルもいいし顔もかわいいじゃない?」


彩香「はあ…。」


星野「それで次の試合はシングルマッチ。あなた一人で出るのよ。」


彩香「えええっそんなの無理ですよ!負けちゃいますよ!」


星野「大丈夫よ。あなたが勝つ流れで組むつもりだから。どっちにしてもまずは身体を絞らないとダメね。」


彩香「はい……」


星野「じゃ、早速始めるから着替えてきなさい。」


彩香「はい、よろしくお願いします。」


第十章に続く













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