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億を売る妻 No.9 どんな状況でも人を巻き込む


妻のお腹もドンドンと大きくなっていき、
地元の病院で出産する為、
妻の実家へ帰っていきました。

私も何か副業が出来ないかと
模索していましたが、
それよりも本業のIT営業の仕事を専念し、
インセティブを増やす事で、
給料アップを目指しました。

妻は実家でも編み物などして、
稼ぐ為の試作に余念が無さそうでした。
さらに出産予定日が近づくにつれて、
頻繁に電話がかかってくるようになり、

「もう生まれるかもしれない!」
「なんか陣痛はじまったっぽいから来て!」

と言われるたび、
片道3時間の道のりを、
車を走らせ向かったのですが、

「何かまだっぽいんよ!」

と言われることが2〜3回あり、
私もおおいに振り回されており、
いよいよ オオカミ少年
みたいな状態になっていました。

そしてまた、

「今度はほんまやし、今すぐ来て!」

と言われたのですが、
私はその時仕事の為、
妻の実家から片道6時間かかる場所におり、
さすがに今からは無理な事を伝えたのですが、

「いかん!今すぐ来て!」
「今回はほんまなんやって!」

と叫んでいました。

仕方なく仕事の商談を早々に切り上げ、
大急ぎで新幹線と車を乗り継ぎ、
6時間かけて向かいました。

私が仕事だろうがなんだろうが、

優先度が高いことに対しては、
すぐに実行させようと、
躊躇なく私を巻き込もうとする


姿勢には関心させられていました。


真夜中妻のいる病室へ到着しました。

妻は私の顔を見ると、

片手を上げ

「おつかれ!」

と落ち着いた様子でいうので、思わず

「いや、おつかれちゃうし!」
「今日6時間かかったんやで!」

というと、

「まあまあ、今回はほんまや」

と陣痛計の方を指差しました。
確かに陣痛が始まっている様子でした。

夜中の12時くらいから陣痛が始まりだし、
痛むその頻度が上がってくると、
妻はベッドにいる事ができず、
床をのたうち回りながら、
私にテニスボールを持たすと、

「痛くなってきたっ 腰押してー‼︎」

と、
体を仰け反らしながら叫び、
私も
「ここでいいかあ!」
と言われるがままに
テニスボールで腰を力一杯押しました。

結局そのやりとりは夜通し続きました。

のけ反り、のたうち回る妻を追いかけ、
私はその背後に回り込み腰を押し続けました。

そしてようやく翌朝9時頃に、
女の子を出産しました。

生まれた子を抱きながら、
「頑張ったねぇぇ〜」
と号泣している妻を見ながら、
テニスボールで押すことしかできない、
男の無力さを感じました。

夜通し過酷な陣痛に苦しみながらも、
意識もうろうとしている私に対して、

徹底的に巻き込もうとする
妻の姿勢と底無しのパワー


にただただ驚かされていました。

---
つづく

※10年くらい前の記憶の為、
事実とのズレがある場合は、
妻の校正が入り内容が変わる事があります。
あしからず。

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