ミケーレ・デ・ルッキ:革新と伝統を融合させた現代の生ける巨匠
目次
ミケーレ・デ・ルッキとは?
ミケーレ・デ・ルッキの代表作
ミケーレ・デ・ルッキのデザイン哲学
Produzione Privata
まとめ
ミケーレ・デ・ルッキは、20世紀後半から現在にかけて、国際的なデザインシーンで活躍し続ける巨匠デザイナーです。革新的なデザインと伝統的な職人技を融合させた彼の作品は、家具、照明、建築など幅広い分野で活躍し、世界中の美術館やコレクションに収蔵されています。
本記事では、ミケーレ・デ・ルッキの経歴、代表作、デザイン哲学、功績などを紹介し、彼から学ぶべきことを考察していきます。
1. ミケーレ・デ・ルッキとは?
ミケーレ・デ・ルッキは、1951年イタリアのフェラーラ生まれの建築家兼デザイナーです。フィレンツェ大学で建築を学んだ後、彼は急進的かつ実験的なデザイン運動であるスタジオ・アルキミア、メンフィスに参加し、その名を馳せました。
デ・ルッキは、アルテミデ、オリベッティ、エルメス、アレッシなど、欧州の著名な企業のために、照明器具や家具をデザインしてきました。1988年から2002年までオリベッティのデザインディレクターを務め、コンパック、フィリップス、シーメンス、ヴィトラ社との実験的なプロジェクトに携わり、職場の進化に関する独自の理論を展開しました。
2000年には、デザインと建築への貢献が認められ、イタリア共和国勲章を授与されました。その後もヴェネツィア大学やミラノ工科大学で教鞭を執るなど、教育活動にも力を入れています。
近年では、ミラノ万博のパビリオンや、ヴェネツィアの美術館改修など、意欲的なプロジェクトに携わっており、精力的に活動を続けています。
ミケーレ・デ・ルッキの経歴における主な功績
1976年:スタジオ・アルキミアに参加
1980年:メンフィスに参加
1988年~2002年:オリベッティ社デザインディレクター
1990年:Produzione Privata設立
2000年:イタリア共和国勲章授与
2001年:ヴェネツィア大学デザイン・芸術学部教授就任
2006年:キングストン大学より名誉博士号授与
2008年:ミラノ工科大学デザイン学部教授就任
2015年:ミラノ万博パビリオン パディリオーネ・ゼロ設計
2. ミケーレ・デ・ルッキの代表作
ミケーレ・デ・ルッキは、家具、照明、建築など幅広い分野で数々の名作を生み出してきました。その中でも特に有名な作品をいくつかご紹介します。
トロメオランプ
1986年に発表されたトロメオランプは、ミケーレ・デ・ルッキの代表作の一つです。アルミとスチール製のシンプルな構造ながら、機能性とデザイン性を兼ね備えた照明器具として高い評価を得ています。
ファーストチェア
1983年に発表されたファーストチェアは、メンフィスグループを代表する家具の一つです。幾何学的なフォルムと鮮やかな色彩が特徴で、ポストモダンデザインのアイコンとして知られています。
2015年に開催されたミラノ万博のメインパディリオン「パディリオーネ・ゼロ」は、ミケーレ・デ・ルッキが建築デザインを手掛けました。
ミラノのガリバルディ・ポルタ・ヌオーヴァ地区にある多機能パビリオン。2015年にオープンし、総面積約3500平方メートル、高さ22メートルで、会議、コンサート、展示会など多目的に利用されます。
ジョージアのトビリシにある弓形の歩行者用橋。2010年に開通しました。、クーラ川を跨いでリケ公園と旧市街を結んでいます。設計をミケーレ・デ・ルッキが手掛け、フランスの照明デザイナー、フィリップ・マルティノーが照明を担当しました。橋はガラスと鋼鉄でできており、夜には多数のLEDライトが点灯し、観光名所となっています。
3. ミケーレ・デ・ルッキのデザイン哲学
ミケーレ・デ・ルッキのデザイン哲学は、単なる技術的な側面にとどまらず、精神的な要素も重視しています。彼は建築を「時代の精神に応えるもの」と考え、未来に向けた持続可能なデザインを追求しています。特に環境問題や社会的責任に対する意識を高めることを重要視し、技術と人間性を融合させたアプローチを取っています。また、デ・ルッキは人々の想像力を変えることで、より良い未来を創造することを目指しています。
*AMDL CIRCLEより引用
4. Produzione Privata: 自由な創造の世界
Produzione Privataは、1990年にミケーレ・デ・ルッキによって設立されたブランドです。このブランドは、デ・ルッキがメンフィスグループで経験した自由な表現を継続し、商業的な制約を受けない実験的なオブジェクトをデザイン・制作することを目的としています。
アートに対する深い愛情に基づき、プロダクション・プリヴァータのオブジェクトは、市場や産業の論理から独立し、職人の手仕事から生まれることを重視しています。これらの作品は、文学、現代アート、自然観察からインスピレーションを得ており、それぞれのオブジェクトにストーリーが込められています。
職人技の尊重 プロダクション・プリヴァータは、職人の手仕事に高い価値を置いています。現代の技術を否定するのではなく、それを補完する形で、伝統的な手法と新しい技術を融合させる新しい職人技を目指しています。
実験と研究 さまざまな素材(ガラス、石、木など)を用いた実験的なアプローチが特徴です。素材の可能性を追求し、手作業と工業技術を組み合わせた独自の制作プロセスを確立しています。
空間とオブジェクトの関係 プロダクション・プリヴァータのオブジェクトは、空間を定義するだけでなく、空間の一部として存在します。人間中心のデザインに基づき、オブジェクトと空間が相互に影響し合うことを重視しています。
私が個人的に好きなのはこのBisonteと呼ばれる椅子。
このように重ねて収納が可能で、実際に座ったこともありますが、素材の温もりと美しい曲線の座り心地が抜群です。
5.まとめ
ミケーレ・デ・ルッキは、イタリアを代表する建築家・デザイナーであり、Memphisグループの創設メンバーとしてポストモダニズムデザインを牽引した人物です。遊び心のあるデザインと、素材の特性を生かした温かみのある作品は、世界中の人々を魅了し続けています。