スリランカ財政破綻:原因と影響
はじめに
スリランカは2022年に深刻な財政危機に直面し、ついに債務不履行(デフォルト)を宣言しました。この出来事は、スリランカ国内の政治・経済の不安定さだけでなく、国際社会にとっても大きな衝撃を与えました。この記事では、スリランカが財政破綻に至った主要な原因と、その影響を解説します。
財政破綻の主要な原因
財政赤字の拡大 スリランカは長年にわたり財政赤字に苦しんできました。特に2019年の減税政策が歳入の減少をもたらし、財政赤字は悪化の一途をたどりました。2022年には、歳入の対GDP比が世界190位と極めて低く、財政赤字は対GDP比で10%にも達しました。
対外債務の増加 これに加えて、スリランカの対外債務が急増しました。2019年までは国際金融市場から資金を調達していましたが、債務格付けの引下げにより国際市場での調達が困難となり、国内からの借入れに頼らざるを得なくなりました。このような状況下で、債務の持続可能性が著しく低下しました。
観光業と外貨収入の減少 スリランカの観光業は、新型コロナウイルスのパンデミックによって壊滅的な打撃を受けました。観光はスリランカの主要な外貨収入源であり、その減少が外貨準備高の減少を加速させました。さらに、2021年には化学肥料の輸入禁止政策が農業生産に悪影響を及ぼし、主要輸出品である紅茶の生産量が低下しました。
インフレと債務返済の困難 スリランカの経済は、インフレと通貨ルピーの急激な下落に直面しました。輸入品の価格が高騰し、生活必需品が不足する中で、政府は対外債務の返済を継続できなくなり、2022年4月に債務返済の一時停止を発表しました。5月にはソブリン債のデフォルトが確定しました。
財政破綻の影響
スリランカの財政破綻は国内外に多大な影響を与えました。国内ではインフレ率が急上昇し、生活必需品の不足や失業率の増加が続いています。また、IMF(国際通貨基金)による経済調整プログラムの開始により、政府は財政健全化を目指していますが、厳しい歳出削減と増税に対する国民の不満が高まっています。
国際的には、スリランカの事例は、他の発展途上国が財政破綻に至るリスクを浮き彫りにしました。国際社会は、スリランカの復興を支援する一方で、同様の問題を抱える国々への支援強化の必要性を認識しています。
結論
スリランカの財政破綻は、単一の要因ではなく、長期的な財政赤字、対外債務の急増、観光業の低迷、政策の失敗など、複数の要因が重なった結果です。今後の経済復興に向けた課題は大きく、国際的な支援と国内の改革が不可欠です。スリランカの事例は、他国にとっても重要な教訓となるでしょう。
このような財政危機を未然に防ぐためには、安定した財政運営と、持続可能な経済成長戦略の構築が必要です。