デビューしてほしい気持ちと、このまま新大久保にいて欲しい気持ち② 2022/11/08
〜2021年に解散した韓国アイドルグループの推しの思い出を綴るnote〜
個人サインが終わり席に戻ると、地方から来た友人がこう尋ねてきた。
「さっき、推しくんのサインの時にハルさんの前に並んでいた人って、前から来てる人ですか?」
質問の意図がわからなかったが、私はそうだと答えた。前からいる常連さん。明るくて友達も多い人だ。
「推しくんの対応、ちょっと変じゃないですか??なんて言うか…冷たいような、突き放すような感じがしたんですけど…」
友人は人物観察が得意で、その観察力が優れていることは前々から知っていた。だけど他人の陰口を話すタイプではなかったから、見たままの感想を言ったのだと思う。
「え?そうでした??私はよく見てなかったけど…。
でもあの人すごく楽しそうに推し君と話してましたよ??」
私はそう答えながらも、何か胸に引っかかるものを感じていた。
「そうですか…。じゃあ私の勘違いかな。なんか、推しくんの対応が、面倒臭そうな突き放すような態度に見えたんですよね。」
推しは自分に執着したり、度を越した態度のファンが苦手だったから、そういうファンには傍目からも明らかなくらい冷たい対応をするのだ。
友人もそんな推しの態度を何度か目にしていたから、それと似た雰囲気を感じたようだった。
数分前のことを思い出してみると、私の前に並んでいた同担さんはキャッキャと楽しそうに話していた。
私は少し視線を外しながら、後ろに並んでいた。
その時の推しの対応は、椅子の背もたれに寄りかかりながら彼女の話を聞いていたような気がする。
確かに言われてみると、彼女の楽しそうな様子に比べて、推しは真顔で聞いていた。温度差というか、同担さんが一方的に話し、推しは黙って聞いていた。
その同担さんは明るくて元気な人だったから、推しに対して不快なことをするとは思えないけれど…
だけど一つ思い当たることがあった。
いつだったか推しが特典会の部屋へ移動する途中、その同担さんが階段のところでメンバーたちに手を振っていた事があった。
メンバーたちは笑顔で手を振って階段を登っていったけれど、推しは真顔でチラリとも彼女の顔を見ずに無反応で通り過ぎて行ったのだ。
彼女も顔を伏せて、振っていた手を引っ込めてしまった。
その様子を一緒に見ていたヲタ友が、「今の推しくん見た?!めっちゃ怖い…機嫌悪かったのかな…」と震えていた。
それはたまたま不機嫌だったのだろうと思っていたが、もしかするとその同担さんが何かやらかしていた可能性もあるのかな…と、そんな出来事を思い出した。
推しは、そうやって態度に出してしまうのだ。2年前も今もそれは変わらなかった。もっと上手く対応すれば良いのにと思う反面、それが推しなりの自己防衛なのかなとも思う。
そんなことがありつつ、私と友人は団体サインの列に並んだ。
友人が先で私が後。
どんな話をしようか考えてみたが、特にネタが無くて出たとこ勝負だなと諦めた。
友人と話し終わった推しは、サインを書きながら興奮気味にこう言った。
そう、友人Mは独学で韓国語を勉強して、簡単な会話なら韓国語で話せるのだ。今までは推しが日本語で話すから、それに合わせて日本語で会話をしていたが、この日は推しが思わず出てしまった韓国語に韓国語で返したら驚いていたそうだ。
凄い凄い!と興奮気味の推しが可愛かった。
ちょっと意地悪そうに推しがそうリクエストした。
「え?!えーと、、、アニョハセヨー」
突然だったからそんな言葉しか出てこなかった。
笑いながらダメ出しをする推し。
「うーんと、、、あ!ハル イムニダ!(ハルです)」
推しは、クスクスと笑いながら楽しそうだ。
そしてゆっくりと子供に言い聞かせるように、こう言った。
僕の言ったことを繰り返してみて、ということのようだ。
それは私にもわかる簡単な韓国語だった。
「私は、○○のファンです。でしょ?」
推しは笑いながら続けた。
と可愛く語尾を伸ばして言いながら、ハイタッチをしようと手を上げた。そしてハイタッチをすると私の手を握って、『これはわかる?』と言いたげな表情だった。
「『気をつけて帰ってください』でしょ??」
急に手を握るからドキっとしてしまったけど、私はその動揺を表に出さないように得意げに翻訳した。
推しは頷きながら「うん、そう」と笑った。
「そのくらいわかるよ〜」私も笑った。
楽しくて幸せな時間。
他愛のない会話が心地良かった。
つづく。
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