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推しのイベントDAYが嫌い① 2022/08/07

〜2021年に解散した韓国アイドルグループの推しの思い出を綴るnote〜

私は人混みが嫌いだ。
お祭りも花火大会もフェスも好きじゃない。

だから、SHOWBOXの公演も特別なイベントデーはなるべく避けていた。
推しの誕生日ライブすら行かなかった。

夏になるとSHOWBOXで公演をするグループは、『浴衣デー』のイベントをすることが多い。

公演後の特典会で浴衣を着るのだ。ヲタクもまた浴衣で来る人が多かった。推しと一緒に浴衣でチェキを撮るのはきっと楽しいだろうな。

だけど私は人で溢れかえる特典会はめんどくさい、という気持ちの方が強かった。それに、、若い子に混じっておばさんが浴衣で行くなんて恥ずかしい、という気持ちもあったから。

その年の夏、浴衣デーは行かずにその翌日の公演を見に行った。知り合いのヲタクから、浴衣デーはものすごい人だったと教えてもらった。特典会が盛況で何よりだ。私が来なくてもどうってことないだろうと心の中で自分を正当化した。

この日の公演もたくさんのファンが来ていた。
これだけ盛況だとメンバー達のノリも良く、盛り上がった。
推しも、2番目の推しも、歌いながらたくさん目線をくれて私は幸せな気持ちになった。

2番目の推しは目線配りのプロだ。満遍なく目線を送る。そして、目が合うとニコっと笑う。

本命の推しは客席をあまり見ない。どこを見てるのかわからない、と言われていた。
だけど、わかりにくいだけできちんと目線をくれる。目線があうと真顔でじっと目を逸らさずに歌うから、少し照れ臭い。

公演後の特典会も賑わっていた。
ここのところ、接触アイドル界隈のファンが流れて来た影響か、接触禁止のはずのチェキでメンバーと手を繋いだり、腕を組んで撮るファンが多かった。
運営も見て見ぬふりだった。

この日、推しとチェキを撮るときに、推しはまるで腕を組もうとするかのように、腰に当てた腕を突き出すようにして待っていた。
腕を組んでいいよとでもいうように…

だけど私は、推しとそういうことをしたくなかった。だから気づかないフリをして、いつも通り横に立ち、ピースサインでチェキを撮った。

正直言えば、嫌なわけはない。恥ずかしいけど、推しと腕を組んだら楽しいだろうなと思う。そうしたくないのは、年上の大人のファンとしてのプライドが邪魔をしているのだ。
自分は他のファンとは違う、というプライド。

いつからか、推しがチェキを撮る時にぴたりと体を寄せるようになったことも気がついていたけれど、私は何も気づいていないフリをしていた。

同担のお姉さんは、チェキを撮る時に推しと距離が遠すぎると不満を口にしていた。
くっついて撮ろうと近づいても、推しは後退りして離れるのだと言っていた。

推しは、積極的にグイグイ迫るファンが苦手だった。

そんな推しが自分から近づいてくれるのは、私があまりにもよそよそしいから、見るに見兼ねてのことかもしれない。
手を繋いで』『壁ドンして』そんなリクエストが当たり前のチェキ会でいつまで経っても棒立ちでピースサインしかしない私に手を差し伸べてくれているような気がした。
推しは、相手の気持ちを汲み取る能力に優れていたから。

チェキの後のサイン会では、推しはコホコホと軽い咳をしていた。前回も薬を飲んでいると言っていたが、まだ治っていないようだ。

大丈夫?と訊くと、うん大丈夫!と元気に答えた。
そして

ハルさん、エアコンダメ!
薬飲んでる?
あったかくして、ココをぎゅーっとして寝てください!

私が先週、エアコンで風邪をひいたと言ったことを覚えていてくれた。推しはいつも優しかった。

それから私は、来れなかったけど推しのソロの日に歌った曲を質問した。どんな曲を歌ったの?と。

ユリサンジャの曲を歌ったと推しは答えた。
聞きたかったなぁ…。SHOWBOXには週末しか来ることが出来ないから、なかなか推しのソロを見ることが出来なかった。

ハルさん、聞きたい曲ある?

推しは、そう訊いてくれた。
以前の私は、推しがまた私が来る日に合わせて、リクエストした曲を歌ってくれるんじゃないかと期待して、聴きたい曲を答えただろう。

だけどもう、それはやめようと決めていた。
リクエストすることで推しに負担をかけたくなかったし、そのことで自分に無理を強いることが嫌だったから。推しのソロの日に行かなきゃ行けない、と義務のようになってしまうのが嫌だった。

私は、推しに執着したくなかった。

少し考えて、推しが以前ソロで歌ったことのある曲がまた聴きたいなと答えた。
それなら推しの負担にならないだろうと思った。

推しは少し不満そうな顔をしていた。
何かもっと他にないの?と言いたそうな感じだった。

翌週、推しは大阪へ行く。
長期公演ではなく、ほんの数日間の大阪公演。
そして大阪の後は名古屋公演をして、すぐにまた東京へ戻ってくることになっていた。

平日だったし、私は行くことが出来ない。
「大阪公演、頑張ってね」と推しに伝えた。

ハルさん、名古屋は来ますか?

推しは、少し言いにくそうにそう訊いた。
名古屋公演は行けないと、少し前に手紙に書いたけれど忘れてしまったのか、読んでいないのか…

名古屋公演の日は、推しの誕生日だった。
多くの同担さんたちは、名古屋に行くと言っていた。

「仕事があって…名古屋は行けないんだ」と推しに答えた。

記憶力の良い推しが、手紙の内容を忘れるなんて初めてのことだった。
もしかしたら、本当に来れないのか確認したかったのかもしれないなとも思った。
「残念」と言ってくれたけど、私が行かなくてもきっとたくさんファンが来るだろう。

推しのファンなら、無理をしてでも名古屋へ行くだろう。私が名古屋に行かないことを、周りのヲタクたちは驚いていた。ハルさんなら当然行くでしょ?と思われていたようだ。

平日だけど、どうにか頑張れば行けるのに、私はそうしなかった。

推しの誕生日だからこそ、余計に行きたくなかった。
同担たちが集合するであろう日に、名古屋だからという理由で行かずに済んだことに、私は内心ホッとしていた。

そうして私は、推しの2回目の誕生日ライブも行かなかった。
そんな薄情なヲタクだった。

続く。

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